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種類株式を活用した親子間の円満な事業承継スキーム:経営権と財産権を分離し、相続税を軽減する方法
投稿日:2024年08月28日
事業承継は、企業の将来にとって非常に重要なプロセスです。
特に、親子間での承継では、経営権と財産権のバランスをどう保つかが大きな課題となります。
親が企業の経営に引き続き関わりたいと考えている一方で、子供ができるだけ相続税の負担を軽減したいという希望がある場合、この二つの目標を同時に達成するためのスキームが求められます。
そこで、種類株式を活用することで、これらの課題を解決し、円満な事業承継を実現する方法を詳しくご紹介します。
目次
1.親の視点:経営権の保持と財産権の分離
まず、親の立場から見て、事業承継の際に重要な点を考えてみましょう。
親が企業を長年経営してきた場合、単に経済的な利益だけでなく、企業の方向性やビジョン、そして古参の社員たちへの責任感など、さまざまな要素が絡んできます。
このような場合、親は次のような意向を持つことが多いです。
- 経営権を保持したい:親は、企業が自身の考え方に沿って運営され続けることを望みます。
そのため、経営に関する意思決定に関わり続けたいという意欲が強いことが多いです。
特に、企業の将来の方向性や、長年一緒に働いてきた古参社員たちの雇用や待遇に対する責任感が大きな理由となります。 - 財産権を譲りたい:一方で、親が高齢になるにつれ、財産権を次世代に譲ることが避けられない現実となります。
財産権を早期に譲ることで、相続に伴う煩雑な手続きや税負担を軽減し、家族や企業にかかる負担を減らしたいと考えることが一般的です。
このような状況において、親が経営権と財産権を分離することは、親自身の意向を反映しつつ、事業承継を円滑に進めるための有効な方法となります。
特に、種類株式を利用することで、経営権と財産権を柔軟に分けることが可能です。
2.子供の視点:相続税負担の軽減
次に、子供の立場から見て、事業承継における重要な課題を考えてみましょう。
特に、子供が親から企業を引き継ぐ際には、相続税が大きな問題となります。
企業の株価が高騰している場合、そのままの形で相続すると非常に高額な相続税が課される可能性があります。
子供にとって、相続税の負担をできるだけ軽減し、スムーズに事業を引き継ぐことが望まれます。
- 相続税の負担を軽減したい:相続税は、相続財産の評価額に応じて課されるため、株価が高いほど税額が増加します。
特に、企業の株価が事業承継時に高騰している場合、その負担は非常に重くなる可能性があります。
したがって、相続税を軽減するための対策が必要です。 - 将来の企業経営を安定させたい:子供が企業を引き継いだ後、経営を安定させるためには、初期段階での資金負担をできるだけ軽減することが重要です。
相続税の支払いによって資金繰りが悪化すると、企業経営に悪影響を及ぼす可能性があります。
そのため、相続税の負担を抑えることが、事業の継続性を確保する上で重要です。
このような状況において、種類株式や株式分割を活用することで、相続税の負担を軽減しつつ、親子双方のニーズを満たすことが可能となります。
3.種類株式を活用したスキームの具体例
具体的に、種類株式を活用してどのように経営権と財産権を分離し、相続税を軽減できるかを見ていきましょう。
以下に、親子間での事業承継の一例を挙げます。
- 議決権と財産権の分離:会社の株式を、議決権を持つ株式と、議決権を持たないが財産権を持つ株式に分けます。
例えば、会社が50株を発行している場合、そのうち48株を議決権のない株式とし、残りの2株を議決権のある株式とします。
議決権のある2株を親と子供で1株ずつ保有し、親は経営権を50%保持し続ける形を取ります。 - 贈与による早期移転:財産権を持つ48株を、早期に子供に贈与します。
これにより、親は財産権を次世代に移行し、将来の相続税負担を軽減します。
この段階で贈与が完了しているため、相続時に財産権部分に対しては相続税がかかりません。
また、株価が比較的低い時期に贈与を行うことで、子供が負担する相続税を抑えることが可能です。 - 株式分割の活用:企業の株価が上昇している場合、株式分割を行うことで、1株あたりの評価額を下げることができます。
例えば、50株を5000株に分割することで、株価の高騰による相続税負担を軽減します。
この場合でも、親は必要な議決権(全体の50%)を保持し続けることができ、企業の経営に関与し続けることが可能です。
4.種類株式と株式分割のメリットとリスク
種類株式と株式分割を活用することで、親子間の事業承継が円滑に進むだけでなく、相続税負担を軽減することができます。
しかし、これらの方法にはいくつかのリスクや注意点も存在します。
- メリット:
- 経営権と財産権の柔軟な分離:種類株式を導入することで、親が経営権を保持しつつ、財産権を子供に譲ることが可能です。
これにより、親の意向を尊重しながら、次世代への財産移転がスムーズに進みます。 - 相続税の軽減:株価が上がる前に株式を分割したり贈与することで、相続税負担を大幅に軽減することができます。
特に、贈与税の非課税枠や、相続税の軽減措置を活用することで、税負担を最小限に抑えることができます。
- 経営権と財産権の柔軟な分離:種類株式を導入することで、親が経営権を保持しつつ、財産権を子供に譲ることが可能です。
- リスクと注意点:
- 税務上の複雑さ:種類株式や株式分割の導入には、税務上の専門知識が必要です。
適切に行わないと、意図しない税負担が発生するリスクがあります。
そのため、専門家の助言を受けることが重要です。 - 家族間の合意形成:親子間での合意形成が不十分な場合、後々トラブルに発展する可能性があります。
特に、経営権の取り扱いについては、明確な合意を得ておくことが必要です。 - 経営の安定性:種類株式を導入することで、経営権が分散するリスクがあります。
親が経営権を保持しつつも、後継者である子供が適切に経営を引き継げるよう、準備や教育が重要です。
- 税務上の複雑さ:種類株式や株式分割の導入には、税務上の専門知識が必要です。
5.ケーススタディ:実際の事業承継事例から学ぶ
ここで、実際に種類株式を活用して事業承継を行った事例を紹介します。
ある中小企業では、親が長年にわたり企業を経営してきました。
親は古参の社員との信頼関係を重視しており、経営に関して一定の影響力を持ち続けたいと考えていました。
一方で、親は財産権を子供に譲り、将来の相続税負担を軽減することを希望していました。
そこで、顧問税理士と相談し、親会社の株式を種類株式に分けることにしました。
親は議決権のある株式を50%保持し、残りの株式をすべて子供に贈与しました。
さらに、将来の株価上昇に備えて贈与前に株式分割を行い、50株を5000株に細分化しました。
このスキームにより、親は経営に関わり続けることができ、子供は相続税負担を大幅に軽減することができました。
この事例からもわかるように、種類株式と株式分割を適切に活用することで、親子間での円満な事業承継が可能となります。
6.まとめ:親子間での最適な事業承継のために
親が経営権を保持しつつ、子供の相続税負担を最小限に抑えるためには、種類株式の導入と株式分割の活用が非常に有効です。
これらの方法を組み合わせることで、親の意向を尊重しつつ、子供が安心して企業を引き継ぐことができる環境を整えることができます。
ただし、これらのスキームを実行する際には、税務や法務の専門家の助言を受けることが不可欠です。
事業承継は一度きりの大きなイベントであり、失敗すると企業や家族に多大な影響を与える可能性があります。
したがって、事前の準備と計画が何よりも重要です。
当税理士事務所では、事業承継に関する豊富な経験と専門知識を活かし、親子間での円満な事業承継をサポートしています。
具体的なご相談がございましたら、ぜひご連絡ください。
お客様の状況に応じた最適なスキームをご提案し、将来に向けた安心の事業承継をお手伝いいたします。
この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。
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