「買った後に簿外債務が…」を防ぐ──M&Aデューデリジェンスで会社を守る3つの視点
投稿日:2026年06月25日

朝4時起きの名古屋の税理士丸山です。
「後継者がいない」
「いい話が来たが、本当にこの価格で大丈夫か」
「買ったはいいが、後から知らない借金が出てこないか」
──M&Aを検討し始めた経営者から、こうした不安をよくお聞きします。
M&Aの成否を分けるのは、実は契約の調印そのものではなく、その前段階の「調べ方」です。
今日は買収監査=デューデリジェンス(DD)について、(1)DDとは何か、(2)財務DDで見抜くべき「見えない債務」、(3)発見した問題を契約にどう落とすか、という3つの視点で整理します。
目次
1. デューデリジェンス(DD)とは──「正当なる注意」で仮説を検証する
2. 財務DDで見抜く「見えない債務」──簿外債務・偶発債務・税務リスク
3. 見つけた問題をどう契約に落とすか──価格調整・表明保証・スキーム変更
4. 売り手こそ先手を──セルサイドDDという備え
1. デューデリジェンス(DD)とは──「正当なる注意」で仮説を検証する
DD(Due Diligence)は直訳すると「正当なる注意」。
M&Aで思い描いた「この会社を買えばこうなる」という仮説が本当に成り立つのか、対象会社の事業内容や経営実態を詳細に調べる工程です。
調査領域は財務・税務・法務・労務・ビジネスなど多岐にわたり、専門家がチームを組んで進めます。
進め方には段階があります。
秘密保持契約(NDA)を結んだ直後の「初期DD」で大枠をつかみ、基本合意(LOI)の後の「詳細DD」で踏み込み、取引直前の「クロージングDD」で最終確認をする、という三段構えが基本です。
ポイントは、限られた時間と開示資料の中で行うため、すべてを均一に調べるのではなく、買収価格に直結する項目(バリュードライバー)に調査を集中させること。
たとえばDCF法や類似会社比較法で評価する場合、計画年度の利益が1億円ずれれば、買収価格は5億円・10億円という単位で動くことがあります。
だからこそ「どこを重点的に見るか」という設計が肝心なのです。
2. 財務DDで見抜く「見えない債務」──簿外債務・偶発債務・税務リスク
経営者が最も恐れるのが、買った後に出てくる「見えない債務」です。
財務DDでは、貸借対照表(B/S)に載っている数字だけでなく、載っていないリスクを洗い出します。
代表例が偶発債務です。
これは今は確定していないものの、将来の負担になりかねない項目で、係争中の訴訟、他社の借入に対する債務保証、デリバティブ取引などが典型です。
B/Sに計上されていないため、契約書の閲覧や経営者へのヒアリングで地道に把握します。
あわせて、サービス残業(未払残業代)、退職給付引当金の不足、製品保証や損害賠償の引当不足なども要注意です。
借入金については、金利や返済条件だけでなく、財務制限条項(コベナンツ)の有無まで確認します。
条件次第では、M&Aを引き金に早期返済を迫られることもあるからです。
税務リスクも見落とせません。
税務調査で否認されれば、追徴税額に加算税・延滞税が乗り、多額の資金が一気に流出します。
とくに、税負担に過度に否定的なオーナー企業や、事業構造が複雑な会社で潜みやすい論点です。
3. 見つけた問題をどう契約に落とすか──価格調整・表明保証・スキーム変更
DDは「あら探し」が目的ではありません。
見つかった問題を、価格や契約条件にどう反映させるかが本番です。
金額に換算できる発見事項(滞留債権、設備投資の積み増し、追加で認識すべき簿外債務など)は、まず事業計画と評価額の修正に織り込み、買収価格の調整で対応します。
一方、発生確率は低いものの起きれば致命傷になるリスク(重大な環境問題など)は、価格調整だけでは収まりません。その場合は、
(1)表明保証と補償条項を契約に入れて万一の損害を売り手に負担してもらう、
(2)問題のある資産を譲渡対象から外し賃借に切り替える、
(3)株式取得ではなく事業譲渡や会社分割に組み替えて不要なリスクを引き継がない
──といったスキームの工夫で対処します。
さらに、財務情報の基準日からクロージングまでの価値変動に備え、純資産調整・運転資本調整・アーンアウトといった価格調整条項を最終契約に盛り込むのが通常です。
4. 売り手こそ先手を──セルサイドDDという備え
ここまでは買い手目線ですが、実はDDは売り手にとっても武器になります。
売り手自身が、交渉が本格化する前に第三者の視点で自社を調べておく「セルサイドDD」です。
中小企業の社内には、M&A経験者がほとんどいないのが普通です。
だからこそ、自社の弱み(未払残業、名ばかり管理職、税務リスクなど)を先に把握し、対策を打っておく。
これだけで、買い手の指摘で価格を叩かれる場面が大きく減り、想定売却額を守りやすくなります。
「買い手に先んじて自社を知る」ことが、結果的に手取りを最大化するのです。
当事務所にできること
当事務所では、税務申告にとどまらず、企業価値評価、事業承継、組織再編、そしてM&Aの一連のプロセスを、経営者の隣で伴走しながら支援しています。
「いい話が来た」その瞬間に立ち止まり、何を調べ、どう会社を守るかを一緒に設計する。
それが将来の後悔を防ぐ第一歩です。私たちは経営理念「ともに未来を描く」のもと、数字の先にある会社と家族の未来づくりをお手伝いします。
M&Aや事業承継をお考えの際は、ぜひ一度ご相談ください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別具体的な経営判断を行うものではありません。実際のご判断に際しては、税理士・会計士等の専門家へご相談ください。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


