事業承継に関するブログ
相続税・贈与税を大幅節約|保険を使用した事業承継対策について
投稿日:2023年01月18日
国税庁の保険を使用した法人税対策の規制強化の発表である「バレンタインショック」から、保険の損金算入が著しく困難になった今「保険を使っても税金対策にならない」と考えている人も多いのではないでしょうか?
確かに、法人税においては保険を使用しても以前よりも大きな節税効果を望むことはできません。
しかし、事業承継にかかる株式の株価の圧縮し、相続税、贈与税のにおいては、保険を使用することによって大きな税金対策をできます。
この記事では保険を使用して、どのような事業承継対策ができるのか、詳しく解説していきます。
目次
バレンタインショックとは
2019年2月14日、バレンタインデーの日に国税庁から「節税保険を規制する内容の発表」が行われました。
保険税制に関する非常に大きな変更だったため「バレンタインショック」と呼ばれています。
バレンタインショックで行われた主な変更点は次の2点です。
- 節税保険の販売停止
- 損金算入できる保険料の割合
これまで企業は、解約返戻率が高い保険商品に加入し、保険料を全額損金算入して税金の先送りにするというメリット享受しながら、満期前に保険を解約して支払った保険料の満額に近い解約返戻金を受け取るという方法で法人税の税金対策をしていました。
しかしバレンタインショックによってこのような保険を使った税金対策が不可能になります。
販売停止になった保険商品の内容や、損金参入できる保険料の割合がどのように変わったのか詳しく見ていきましょう。
節税保険の実質的な販売停止
バレンタインショックによって次のような、いわゆる「節税保険」と呼ばれる保険商品の損金算入できる保険料の割合が見直され、次の5つの保険商品は実質的に販売停止に追い込まれました。
- 逓増定期保険
- 長期平準定期保険
- 生活障害保険
- 災害保証期間付定期保険
- 終身がん保険
これらの商品は保証の内容よりも「解約返戻金率」が高いということで、企業の税金対策として使用されていましたが、損金算入できる割合が見直されることとなりました。
損金算入できる保険料の割合
国税庁は解約返戻金の割合に応じて、損金算入できる保険料の割合を次のように見直しました。
最高解約返戻率 | 損金算入できる保険料の割合 |
50%以下 | 全額 |
50%超~70%以下 | 6割 |
70%超~85%以下 | 4割 |
85%超 | 保険期間開始から10年は9割 それ以降は7割 |
バレンタインショックによって、解約返戻金が50%以下のものに関しては従来通り全額損金算入できますが、
50%超になると、保険料の6割以下しか損金参入できなくなりました。
※ただし保険料の金額が1契約あたり、30万円以下の場合には従来通り全額損金として認められます。
そのため、これまでのように掛けたお金の大部分を解約返戻金として受け取りながら、保険料を経費計上して税金対策をすることが不可能になりました。
保険を使った事業承継対策とは?
バレンタインショックによって、確かに保険を使った法人税に対する税金対策は効果が非常に薄くなりました。
しかし、事業承継において多くの経営者を悩ませている株価対策では、非常に高い節税効果を発揮しています。
保険を使った事業承継対策とはどのようなものか、詳しく解説していきます。
事業承継で株式を動かす時に使う株価は、解約返戻金で保険の資産額を評価する
事業承継においては、株式を非承継者の名義から承継人の名義に移す際に、「株価がどの程度の価値があるのか」を評価します。
上場企業であれば市場価格をもとに評価額を算定することができますが、非上場企業においては市場価格がないので
「会社の収益力」や「会社の資産がいくらか」に基づいて株価を評価します。
この際、保険に加入していれば、保険にも資産価値があるので資産として評価しなければなりません。
そして、保険契約に関する評価は解約返戻金の額に基づいて評価を行うのが一般的です。
加入している保険の解約返戻金が5,000万円であれば、保険の評価額は5,000万円として評価します。
契約当初は解約返戻金が少ない保険に加入する
保険を使用した株価対策とは、契約当初は解約返戻金が少ない保険に加入する方法で行います。
例えば1億円の保険に10年かけて毎年1,000万円ずつ払い込んだ場合、解約返戻金が次のようになる保険があります。
払い済み保険料 | 解約返戻率 | |
1年目 | 1,000万円 | 0% |
2年目 | 2,000万円 | 10% |
3年目 | 3,000万円 | 20% |
4年目 | 4,000万円 | 30% |
5年目 | 5,000万円 | 40% |
6年目 | 6,000万円 | 50% |
7年目 | 7,000万円 | 60% |
8年目 | 8,000万円 | 70% |
9年目 | 9,000万円 | 80% |
10年目 | 1億円 | 90% |
例えば、加入4年目で事業承継のために株式を贈与した場合、実際には4,000万円分の保険料を払い込んでいるのに、
贈与する株式の評価額は解約返戻金に基づくため1,200万円として評価されます。
現金・預金で4,000万円を保有していた場合には、4,000万円として資産額が評価されてしまうので保険を使用して相続税評価額を引き下げる効果があります。
株価の移転時期から逆算して、契約当初は解約返戻率が低い保険に意図的に加入することによって、
事業承継の際の株価の評価額を大幅に引き下げることが可能です。
バレンタインショックによって保険を使用した法人税対策は大幅に縮小されてしまいました。
しかし保険を使用して事業承継対策を行うことで相続税・贈与税の節税は可能になってしまいます。
このような保険については、以前のバレンタインショック同様に、国税局としては、
そのままそのままにしておくことは考えずらいため、いずれ改正が入ると思います。
まとめ
保険の本質は保障であり、節税のために利用するものではありませんが、実際に保険は事業承継の現場では非常に多く利用されます。
このような保険以外にも、保険を使用した税金対策には様々な方法があります。
相続や事業承継など、税務や会計でお困りの際は、丸山会計事務所までお気軽にご相談ください。
この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。
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