持株会社化で進める自社株対策と事業承継の実務
投稿日:2026年06月28日

朝4時起きの税理士、丸山です。
本日は「持株会社化(ホールディングス化)を使った自社株対策と事業承継」についてお話しします。
「自社株対策とは、とにかく株価を下げることだ」
——多くの経営者がそう思い込んでいます。
役員退職金を払う、不良在庫を処分する、生命保険に加入する。たしかにこれらは株価を一時的に押し下げます。
しかし、本当に怖いのは『今の株価』ではなく『これから上がり続ける株価』です。
黒字を出し続ける優良企業ほど、放置すれば自社株は雪だるま式に膨らみ、後継者の納税資金を直撃します。
攻める自社株対策とは、株価を一度下げて満足するのではなく、『株価が上がる器』そのものを設計し直すことなのです。
なぜ黒字優良企業ほど自社株が危ないのか
たとえば純資産5億円、毎年4,000万円の利益を内部留保している会社を考えてみましょう。
何の対策もしなければ、株価は利益の蓄積とともに毎年上昇していきます。
10年後には純資産が9億円近くに膨らみ、自社株の相続税評価額も比例して跳ね上がります。
仮に後継者が相続でこの株式を取得した場合、相続税の最高税率は55%。換金性のない自社株に対して、数千万円から億単位の現金納税を求められるケースも珍しくありません。
『会社は儲かっているのに、相続税が払えず株を手放す』
——これこそ事業承継で最も避けたい結末です。
だからこそ、株価がまだ低いうちに『手を打つ順番』を決めておくことが重要になります。
持株会社化が株価上昇を「遮断」する仕組み
ここで効果を発揮するのが持株会社(ホールディングス)化です。
具体的には、株式移転や株式交換によってオーナーの上に持株会社を設立し、事業会社の株式を持株会社へ集約します。
ポイントは2つあります。
第一に、事業会社の株価がその後いくら上昇しても、その上昇分は持株会社の中に閉じ込められ、オーナー個人が持つ持株会社株を純資産価額方式で評価する際には、持株会社設立「後」に生じた含み益に対して法人税相当額37%が控除されます。
つまり今後の株価上昇のインパクトが約4割圧縮されるのです。
第二に、将来の値上がりを持株会社が受け止める構造になるため、早く実行するほど『これから増える分』を後継者側に移しやすくなります。
対策は早ければ早いほど効く、というのはこのためです。
ただし注意が必要です。持株会社化は『将来の株価上昇を抑える』には強力ですが、株式移転の直後はこの37%控除が使えない上、新設から3年間は純資産価額方式での評価が強制されるため、一時的に株価が上昇するケースもあります。
だからこそ、株価が上がりきる前の早めの段階で『器』を作っておくことが重要なのです。
加えて、持株会社が受け取る配当は受取配当等の益金不算入により課税が抑えられ、グループ全体の資金を後継者育成や設備投資へ機動的に回せるという経営上のメリットも生まれます。
納税猶予・種類株式との合わせ技で「議決権」も守る
持株会社化は単独でも有効ですが、他の制度と組み合わせることで効果が一段と高まります。
事業承継税制(特例措置)を使えば、一定の要件のもとで自社株にかかる贈与税・相続税の納税が猶予・免除されます。
たとえば評価額3億円の自社株でも、要件を満たせば後継者の納税負担を実質ゼロに近づけることが可能です。
さらに、種類株式や属人的株式を活用すれば、財産権としての株式は後継者へ移しながら、議決権はしばらく現経営者が握り続けるといった『財産と経営権の分離』も実現できます。
『株は渡したいが、まだ経営は任せきれない』というオーナーの本音に、制度設計でしっかり応えられるわけです。
なお、これらの制度は適用要件や期限の管理がきわめて重要です。
特例事業承継税制については、前提となる「特例承継計画」の提出期限(2027年9月末)となっております。
そのため計画的な運用が必要になります。
適用後も、役員就任要件を一つでも外すと猶予が打ち切られるリスクや、持株会社が「株式等保有特定会社」に該当して株価が下がらないリスクなどへの対応が不可欠です。
『使える制度』を『確実に使い切る』ための段取りこそが、専門家の腕の見せどころです。
ともに未来を描く、攻める自社株対策を
こうしたスキームは、登記・税務・法務が複雑に絡み合い、実行の順番を一つ間違えるだけで思わぬ課税が生じる繊細な世界です。
だからこそ私たち丸山会計事務所は『攻める税理士』として、決算書を作るだけでなく、10年20年先の承継図を一緒に描くも関与します。
経営理念は『ともに未来を描く』。
株価が安いうちに動けば、打てる手は何倍にも広がります。
すべてはお客様より一歩先回りして提案してきた積み重ねです。
『知らなかったことで損をした』をなくす——それが私たちの使命です。
まとめ
自社株対策の本質は、目先の株価を下げることではなく、上がり続ける株価の『器』を設計し直すことにあります。
持株会社化で株価上昇を遮断し、納税猶予や種類株式を組み合わせれば、納税資金と経営権の両方を守ることができます。
優良企業ほど、動き出すのは早いほど有利。
次の世代へ会社を笑顔で引き継ぐために、今日から承継図を描き始めましょう。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務相談については専門家にご確認ください。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


