後継者が二人——会社を「円満に分ける」3つの視点
投稿日:2026年07月01日

朝4時起きの名古屋の税理士丸山です。
「兄弟そろって会社を継いでくれた。でも、二人の目指す方向が少しずつ違ってきた」
——そんなご相談が、事業承継の現場では年々増えています。
先代から受け継いだ一つの会社を、後継者である兄弟・親族で円満に分けたい。
けれど、分け方を一歩間違えると、思わぬ税負担が生じたり、分けたあとの会社経営が立ち行かなくなったりすることもあります。
今日は「会社を分ける」という選択肢について、
①どんな手法で分けるか、②税務上の「適格」をどう満たすか、③分けたあとをどう設計するか、
という3つの視点で整理します。
【目次】
1.なぜ今「会社を分ける」のか
2.「分け方」で税金は大きく変わる
3.「適格」になるかどうかが分かれ目
4.分けたあとまで見据えて設計する
1.なぜ今「会社を分ける」のか
事業承継というと「一人の後継者へバトンを渡す」イメージが強いかもしれません。
しかし実際には、兄弟や親族が複数で経営に関わっているケースは珍しくありません。
創業者から株式を相続し、兄が製造部門、弟が販売部門を担う、といった具合です。
協働がうまく回っているうちは問題ありませんが、世代が進み、それぞれが家庭や独自の事業観を持つようになると、「一つの会社に二人の社長」という状態が、かえって意思決定を鈍らせることがあります。
そんなとき、対立して株式を奪い合うのではなく、事業ごとに会社を分け、それぞれが独立したオーナーとして経営に専念する
——これが「会社を分ける」という前向きな選択肢です。
2.「分け方」で税金は大きく変わる
仮に、兄が60%、弟が40%の株式を持つ会社で、A事業を兄、B事業を弟が引き取りたいとします。
基本となるのは、「新設分割型分割」でB事業を新会社へ切り出し、その後、兄と弟が互いの株式を譲り合う(株式の相互譲渡)方法です。
この形であれば、分割そのものは会社段階で課税が生じず、株主に生じるのは株式の譲渡課税だけで済みます。
個人株主の株式譲渡益は、原則として約20.315%の申告分離課税です。
一方で、同じ「分ける」でも、会社が自己株式を買い取る形(自己株式の取得)を組み込むと、受け取る金額の一部が「みなし配当」として扱われます。
みなし配当は総合課税の対象で、所得が高い方ほど税率が上がるため、株式譲渡として処理した場合より負担が重くなりがちです。
さらに、分社型分割に株式譲渡と配当を組み合わせる手法では、会社段階で譲渡損益が実現することもあります。
つまり「誰に、何に、いつ課税されるか」は、手法ごとにまったく異なるということです。
3.「適格」になるかどうかが分かれ目
組織再編の税務でカギを握るのが「適格要件」です。要件を満たす適格分割であれば、資産は帳簿価額のまま引き継がれ、会社にも株主にも原則として課税が生じません(課税の繰延べ)。
逆に要件を一つでも外すと「非適格」となり、資産を時価で譲渡したものとして一気に課税が生じます。
分割の適格要件は、当事者の資本関係によって少しずつ異なります。
共通して必要なのは、対価を株式のみとすること(金銭等不交付要件)と、株式を持株比率に応じて交付すること(按分型要件)です。
これに加えて、支配関係の継続、主要な資産や従業者の引継ぎ、分割した事業を続けることなどが求められます。
家族で会社を分ける場面では、これらを満たして適格分割とし、株主の課税を株式譲渡だけに抑える設計が基本となります。
4.分けたあとまで見据えて設計する
再編は「分けて終わり」ではありません。
たとえば、繰越欠損金や含み損のある資産を引き継ぐ場合、支配関係が生じてから5年以内で「みなし共同事業要件」を満たさないと、その利用に制限がかかることがあります。
逆に、非適格分割では「資産調整勘定」(いわゆるのれん)が計上され、60か月(5年)にわたって取り崩し、損金に算入できるケースもあります。
状況によっては、非適格のほうが有利になることさえあるのです。
大切なのは、目的(誰がどの事業を担うか)から逆算して手法を選び、適格要件を確認し、分けたあとの資金繰りやガバナンスまで一気通貫で設計することです。
「節税」だけでも「実態」だけでもなく、その両者のバランスを取ることが、円満な承継への近道です。
おわりに
当事務所では、税務申告にとどまらず、組織再編・事業承継・M&Aを通じて、経営者の皆様が次の世代へ事業をつなぐお手伝いをしています。
「会社を分けるべきか」「どの手法が自社に合うか」
——漠然とした段階のご相談こそ大歓迎です。
私たちの理念は「ともに未来を描く」こと。
数字の先にある経営者の想いまで含めて、最適なかたちを一緒に考えてまいります。
どうぞお気軽にお声がけください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別具体的な経営判断を行うものではありません。実際のご判断に際しては、税理士・会計士等の専門家へご相談ください。
▼経営に役立つ情報をもっと知りたい方は
→ メルマガ登録はこちら
→ 丸山会計へのお問い合わせはこちら
この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


