ソフトバンクグループの申告漏れの詳細を徹底解説!
投稿日:2023年05月10日
ソフトバンクグループは、言わずと知れた情報通信業界の最大手企業です。
2021年3月期の連結純利益(国際会計基準)は、4兆9879億円となり、国内企業で過去最高を更新しました。
ソフトバンクと聞くと、携帯電話会社であると思われている方も多いかもしれませんが、ソフトバンクグループはもはや携帯電話会社ではなく、投資会社です。
ソフトバンク・ビジョン・ファンドなどの投資事業が、同社の利益の大部分を稼いでいる状況になります。
ソフトバンクグループは日経平均225の銘柄に採用されており、同社の株価は、小売業のユニクロやGUを展開するファーストリテイリングと並んで影響が大きい値がさ株としても有名です。
ソフトバンクグループだけで日経平均株価が100円以上動くことも決して珍しくありません。
このソフトバンクグループですが2021年3月期までの2年間にわたって、グループ内の複数の会社が税務申告書に不備があったことにより、約370億円が未納になったのを覚えているでしょうか。
具体的には2020年に実施されたグループ傘下の米大手携帯会社スプリントとTモバイルUSの合併に伴う費用が課題に計上されたということです。
M&Aのために行われたデューディリジェンスにかかった費用を「経費」か「資産」かにすることで、国税局との見解の相違がありました。
デューディリジェンスにかかる費用については、明確に経費もしくは資産のどちらかにするかの法的根拠はありません。
税法では、「その他その有価証券の購入のために要した費用」としか規定がなく無く、そのデューデリジェンス費用が取得のために要した費用なのかどうかが問題となりました。第2款 有価証券の取得価額|国税庁 (nta.go.jp)
今回ソフトバンクが受けた指摘によってある意味方向性が明文化されたといえます。
ソフトバンクのような大きな企業の税務調査の結果によって見解が変わることがよくあります。
デューデリジェンスとは、主にM&Aや投資において、投資家や買収する企業側が行うことが一般的です。
具体的には、以下のような項目を調査します。
- 法的な側面:企業が法的に妥当な状態にあるかどうか、過去の紛争や訴訟があるかどうかなどを調査します。
- 財務・会計:企業の財務状況、収益性、リスク、負債、税金、契約などを評価します。
- 事業・業界の側面:企業の事業内容や市場動向、競合他社との関係などを調査します。
- リスク評価:企業が今後直面する可能性を調査します。
これだけを見ると、明らかに費用であると感じる方も多いですが、企業を買収した時点で「資産」であると見ることもできなくはありません。
税務上はあくまでも、「その有価証券を取得のために要した費用」としてしか記載がないため、どう判断するかは分かれるところがあります。
国税庁はこの点を指摘したのです。しかし今まで明確な取り決めはありませんでした。結局大きな金額が動くケースの多いソフトバンクグループのような大企業に税務調査が入ると、税制改正のきっかけになる良い例でしょう。
過去にもソフトバンクの税務処理から税制改正が行われたケースもあります。
それが法人税法施行令119条の3の第7項~第13項となります。
こちらでは買収後に、子会社が親会社に配当金をして、子会社の株価を下げ、その後その子会社株式を売却することにより、譲渡損を出すというスキームを防止するものとなります。
ソフトバンクグループは誰しもが知っている大きな企業ではありますが、具体的にどれぐらいの規模の企業かについて簡単に紹介します。
ソフトバンクグループの事業セグメントは、5つに分かれます。
- 持株会社投資事業
- SVF 1等SBIA の運営するファンド事業
- ソフトバンク事業
- アーム事業
- その他事業
各セグメントの2021年の収益は以下のようになります。
- 持株会社投資事業…7609億2700万円
- SVF1等 SBIA の運営するファンド事業…4兆268億円
- ソフトバンク事業…8479億3300万円
- アーム事業…2098億4800万円
- その他事業…926億2500万円
このようにすべてのセグメントで大きな利益を上げているソフトバンクグループですが、ダントツでの稼ぎ頭はファンド事業です。
ソフトバンクグループ自身が宣言している通り、携帯電話会社から投資会社へ名実ともに変わっているといってよいでしょう。
いずれにしてもソフトバンクなど大きな企業に税務調査が入った場合、その後税制改正が行われる可能性があり、今回のケースもその一つとも言えるのではないかと思います。しっかり注視するようにしましょう。
まとめ
今回はソフトバンクグループの申告漏れの詳細について説明をしました。
今回のケースに関しては、明らかに悪意があるものではなく、国税局との見解の相違が大きな理由になります。
このように、税制については、明確な取り決めがないものが多く、グレーゾーンの部分が多いのが実態です。
しかし、ソフトバンクグループのような日本を代表する企業に申告漏れを指摘すると、得てして税制改正のきっかけになります。
また、税法が制定後かなりの年数が経過しており、取引も多様化しています。M&Aなどの取引は税法が経済に追い付いていないため、そこについて法整備が遅れている実態もあると個人的には思います。
ぜひ今回の記事を参考にしていただき、税制改正が決まる1つのプロセスを覚えていただければ幸いです。
税制改正にいち早く対応する税理士のおすすめお勧め致します。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。
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