賃上げ促進税制で法人税を最大35%圧縮 中小企業の実務

投稿日:2026年07月27日

賃上げ促進税制で法人税を最大35%圧縮 中小企業の実務

朝4時起きの税理士、丸山です。
本日は、中小企業の法人税を大きく圧縮できる「賃上げ促進税制」について、令和8年度(2026年度)改正を踏まえた最新の実務をお話しします。

 

「令和8年度の改正で賃上げ税制は縮小されたから、もう中小企業にうまみはない」——そんな声を最近よく耳にします。
あるいは逆に、少し前のセミナー資料を握りしめて「教育訓練費を増やせば最大45%まで引ける」と信じ込んでいる経営者もいます。
どちらも危険な誤解です。
中小企業向けの制度は改正後もしっかり維持されており、基本の30%控除は健在です。
一方で、上限はすでに35%へと下がっています。
まずは「今どうなっているか」を正確に押さえましょう。

 

令和8年度改正の最重要ポイント——上限は「35%」、教育訓練費の上乗せは廃止

最初に押さえるべきは、2026年4月1日以後に開始する事業年度から、中小企業向けの最大控除率が従来の45%から35%へ引き下げられた点です。
3月決算(4月始まり)の会社をはじめ、多くの企業がすでにこの新ルールの事業年度に入っています。
引き下げの主因は、これまで最大10%の上乗せが認められていた「教育訓練費の増加」要件の廃止です。
会計検査院から「控除額が実際の教育訓練費の増加を上回るケースが多い」と指摘されたことが背景にあり、令和8年3月31日までに開始した事業年度を最後に、この上乗せは使えなくなりました。

 

「教育訓練費を増やせば45%まで引ける」という従来の説明は、もう通用しません。
なお、令和8年3月31日以前に開始した事業年度には旧制度(最大45%)が残るため、自社の事業年度開始日で線引きが変わる点にも注意が必要です。

それでも中小企業向けは健在——基本30%+認定で最大35%、赤字は5年繰越

とはいえ、悲観する必要はありません。
中小企業向けの根幹は改正後もしっかり維持されています。
従業員へ支払う給与の総額(雇用者給与等支給額)が前年比で1.5%以上増えれば増加額の15%、2.5%以上なら30%を法人税額から直接控除できる——この基本の枠組みは健在です。

 

さらに「くるみん」「えるぼし」などの認定を受けている企業には5%の上乗せが残っており、合計で最大35%まで引き上げられます。

加えて、令和6年度改正で新設された「5年間の繰越控除」も引き続き使えます。
賃上げした年が赤字で控除を使い切れなくても、控除しきれなかった額を翌年以降5年間繰り越し、黒字化したタイミングで取り戻せる仕組みです。
ただし、繰り越した控除を実際に使う年も給与総額が前年を上回っていることが条件となります。

数字で見る——賃上げ原資の3割強が税で戻る

具体例で見てみましょう。
従業員10名、前年の給与総額が4,000万円の中小企業が、ベースアップで給与総額を4,120万円(+3%)に増やしたとします。

 

増加額は120万円で、増加率3%は2.5%以上ですから控除率は30%。
120万円×30%=36万円が法人税から直接差し引かれます。
くるみん認定などを取得していれば上乗せ5%が加わり、35%で42万円まで伸ばせます。
所得を減らす経費ではなく、税額そのものを削る「税額控除」ですから、インパクトは絶大です。
なお、控除の対象となるのは一般従業員の給与であり、役員やその親族への報酬は含まれません。
同じ人件費増でも「役員報酬を増やす」のと「従業員の基本給・賞与に回す」のとでは税制上の扱いが正反対になる点は、決算対策で必ず押さえておきたいところです。

ともに未来を描く——最新の制度で「使い切る」設計まで踏み込む

上限が下がり教育訓練費の上乗せも消えた今こそ、「どの要件をどう積み上げるか」の設計力が差を生みます。
私たち丸山会計事務所は、単に申告書を作るだけの税理士ではありません。
決算を迎える前の段階から、賃上げ計画や認定取得のスケジュールを社長と一緒に組み立て、使える控除を最後の一円まで取り切る「攻める税理士」でありたいと考えています。
制度は毎年のように変わります。
古い情報のまま「45%引けるはず」と誤ったプランを立ててしまえば、資金繰りの見込みが狂いかねません。
経営理念に掲げる「ともに未来を描く」とは、最新の制度を踏まえて社長の賃上げの決断を税の面から力強く後押しすることに他なりません。

まとめ

賃上げ促進税制は、令和8年度改正で中小企業向けの上限が45%から35%へ引き下げられ、教育訓練費の上乗せも廃止されました。
それでも基本30%控除と5年繰越は健在で、依然として強力な節税策です。
古い「最大45%」の情報で試算せず、自社の事業年度開始日を確認のうえ、必ず現行制度に基づいて決算前にご相談ください。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務相談については専門家にご確認ください。

 

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この記事の監修

丸山会計事務所 税理士 代表 丸山和秀

税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)

税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。

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