即時償却は手続きの順番が9割?経営強化税制を取り逃さない実務
投稿日:2026年07月03日

朝4時起きの名古屋の税理士丸山です。
「経営強化税制を使えば、設備を取得して決算で計上するだけで即時償却ができる」
——そう思っていらっしゃる経営者の方は少なくありません。
ですが、これは大きな誤解です。
この制度は、手続きの順番をひとつ間違えるだけで、丸ごと適用を受けられなくなることがあります。
本日は、即時償却を取り逃さないための「認定のタイミング」「類型ごとの準備」「即時償却と税額控除の選び方」という3つの視点を整理してまいります。
目次
1. 「買えば自動で使える」は危険な誤解
2. 類型ごとに違う、事前準備と所要日数
3. 即時償却か税額控除か——キャッシュフローで選ぶ
4. 年度末の駆け込み投資が招く落とし穴
1. 「買えば自動で使える」は危険な誤解
中小企業経営強化税制は、令和7年度の税制改正で適用期限が2年延長され、令和9年(2027年)3月31日までに取得した設備が対象となりました。
即時償却(取得価額の全額をその年の経費にできる仕組み)か、取得価額の10%(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%)の税額控除かを選べる、極めて強力な制度です。
ところが、最大の関門は「順番」です。
原則として、設備を取得する(契約・購入する)から計画を出しても、即時償却は認められないのが原則です。
たとえば3月に1,000万円の機械を発注し、4月に計画を申請しても、その機械は対象外。
これだけで数百万円規模の損金算入のタイミングを丸ごと失いかねません。
実務上の注意:例外的に、A類型・B類型に限っては、設備の取得後でも60日以内に計画の申請まで進め、かつ同一事業年度内に認定されれば認められる取扱いもありますが、年度(事業年度)をまたぐと使えません(※D類型・E類型にはこの例外措置はありません)。
「買う前に動く」を徹底することが第一歩です。
2. 類型ごとに違う、事前準備と所要日数
準備すべき書類は、類型によって大きく異なります。
A類型(生産性向上設備)は、設備メーカーを通じて工業会等の証明書を取得します。
これが意外と時間がかかり、発行まで1〜2か月を見込んでおくのが安全です。
B類型(収益力強化設備)やD類型(経営資源集約化設備)は、投資計画について公認会計士・税理士の事前確認を受けたうえで、経済産業局の確認書が必要になります。
こちらも申請から確認まで30日前後かかることがあります。
令和7年度改正では、売上高100億円超を目指す中小企業(売上高10億円超90億円未満の法人)向けにE類型が新設され、これまで対象外だった建物まで優遇税制の対象に加わりました(※ただし、建物の場合は即時償却等ではなく、「取得価額の15%(または25%)の特別償却」または「1%(または2%)の税額控除」となります)。
ただしE類型は法人限定で、投資計画の要件もより厳格に定められています。
実務上の注意:いずれの類型も、証明書・確認書の取得 → 経営力向上計画の認定 → 設備の取得・供用、という流れに数か月単位の時間がかかります。
決算の3か月前には、逆算して動き始めたいところです。
3. 即時償却か税額控除か——キャッシュフローで選ぶ
即時償却と税額控除、どちらを選ぶべきか。
ここで「とりあえず即時償却」と即決するのは、攻めの判断とは言えません。
即時償却は初年度の課税所得を一気に圧縮できますが、翌年以降の減価償却費はその分だけ減ります。
つまり節税の「先取り」であり、トータルの損金額そのものは変わりません。
一方、税額控除(10%または7%)は税額そのものを直接減らすため、長い目で見れば手残りが多くなるケースがあります。
たとえば1,000万円の設備なら、税額控除は最大100万円。
目先の資金繰りが厳しく今期の納税を抑えたいなら即時償却、安定して利益が出ており通算の手取りを最大化したいなら税額控除、と使い分けるのが定石です。
実務上の注意:控除しきれなかった税額控除額は、1年間繰り越すことができます。
自社の利益計画と資金繰りを並べて、どちらが効くかをシミュレーションすることが欠かせません。
4. 年度末の駆け込み投資が招く落とし穴
最も多い失敗が、年度末の駆け込み投資です。
「今期は利益が出たから、決算前に設備を買って即時償却で節税しよう」
——お気持ちは分かりますが、前述のとおり計画の認定が間に合わなければ一円も償却できません。
証明書や確認書の取得には数週間から数か月。
3月決算の法人が2月に思い立っても、間に合わないことは珍しくないのです。
さらに、節税のためだけに不要な設備を買うのは本末転倒です。
設備投資は本来、生産性や収益力を高めるための前向きな一手であり、税制はその背中を押す道具にすぎません。
投資の目的と効果を見据えたうえで、制度を上手に重ねていく発想が大切です。
実務上の注意:設備投資の計画が持ち上がった「その時点」で、税理士に相談することが何より重要です。
投資の意思決定と税制の手続きを同時に走らせてはじめて、制度を最大限に活かすことができます。
当事務所からのメッセージ
当事務所は、確定申告や記帳代行にとどまらず、お金が大きく動く設備投資のタイミングでこそ踏み込んだ提案を行う「攻める税理士」でありたいと考えています。
経営力向上計画の策定から類型の選択、即時償却と税額控除のシミュレーションまで、一気通貫でご支援いたします。
「知らなかったために損をした」をなくし、経営者の皆様と“ともに未来を描く”——それが私たちの願いです。
設備投資をお考えなら、買う前にぜひ一度ご相談ください。
まとめ
経営強化税制の即時償却は、設備を買えば自動で使える制度ではありません。
鍵は「順番」です。
原則として設備取得前に経営力向上計画の認定を受け、類型ごとの証明書・確認書を逆算して準備すること。
そして即時償却と税額控除を、資金繰りと利益計画の両面から選ぶこと。
年度末の駆け込みではなく、計画段階での早めの相談が、節税効果を最大化します。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別具体的な税務判断を行うものではありません。実際のご判断に際しては、税理士等の専門家へご相談ください。また、税制は改正される場合があります。本記事は令和7年度時点の税制を参考にしています。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


