経営強化税制の落とし穴 E類型の併用制限と60日の壁
投稿日:2026年07月23日

朝4時起きの税理士、丸山です。
本日は中小企業経営強化税制の「即時償却」を使うときに、見落とすと数百万円を失いかねない二つの落とし穴についてお話しします。
「経営強化税制は即時償却できるから、とにかく計画を出せば得だ」——設備投資のご相談でいちばんよく聞く言葉です。
しかし実務では、この思い込みのまま突き進んだ結果、使えるはずだった別の特例まで失い、かえって税負担が増えたケースを何度も見てきました。
攻めの税制ほど、順番と設計を間違えると牙をむきます。
1.認定は「取得前」が原則、遅れても60日が限界
中小企業経営強化税制は、経営力向上計画の認定を受けたうえで対象設備を取得する制度です。
ここが中小企業投資促進税制(事前手続不要、30%特別償却または7%税額控除)との決定的な違いです。
認定は原則として設備の取得前に受ける必要があります。
ただしA類型・B類型に限っては救済措置があり、設備の取得日から60日以内に認定申請が受理され、かつ事業供用日を含む事業年度と同一年度内に認定を受ければ適用できます(※D類型・E類型にはこの救済措置はありません)。
問題は、この60日が「認定日」ではなく「申請の受理日」を起点に走り、しかも決算日をまたげば一発でアウトになる点です。
3月決算の会社が2月に3,000万円の機械を取得し、3月20日に申請、認定が5月——これで即時償却3,000万円が消えます。
設備の見積書が出た段階で計画づくりを始める。
これが唯一の防衛策です。
2.E類型を選ぶと、投資促進税制も30万円特例も使えない
令和7年度改正で新設されたE類型(経営規模拡大設備等)は、売上高100億円超を目指す成長企業(売上高10億円超90億円未満の法人)向けに、これまで対象外だった建物およびその附属設備(1,000万円以上)まで取り込んだ拡充措置です。
建物は15%または25%の特別償却、税額控除は1%または2%。
工場や店舗を建てる企業には強力なカードです。
ところが、E類型の設備等が記載された経営力向上計画の認定(特定認定)を受けた企業は、その期間中、中小企業投資促進税制と、40万円未満の少額減価償却資産の損金算入特例が使えなくなります。
たとえば新工場でE類型を使いつつ、同じ年度に180万円の機械を投資促進税制で30%特別償却しようと考えても、それは通りません。
パソコンを25万円で10台買っても、一括損金にできず通常の減価償却です。
年間300万円の即時損金枠を毎年当てにしてきた会社ほど、この影響は大きい。
E類型は「取るか、捨てるか」の選択なのです。
3.即時償却と税額控除、どちらが本当に得か
経営強化税制のA〜D類型は、即時償却か取得価額の10%(資本金3,000万円超1億円以下は7%)の税額控除を選べます。
1,000万円の機械なら、即時償却は初年度に1,000万円を損金算入、税額控除は100万円を法人税から直接差し引く形です。
即時償却は課税の繰延べにすぎず、生涯の税額は変わりません。
一方、税額控除は正真正銘の減税です。
実効税率を約34%とすれば、即時償却の初年度効果は約340万円。
ただし翌年以降の減価償却費はゼロになります。
目先のキャッシュを厚くしたいのか、長い目で納税総額を減らしたいのか。
赤字見込みの年度なら即時償却は無駄撃ちですし、控除上限(2税制合計で調整前法人税額の20%)に当たれば控除しきれません。
数字を並べて初めて答えが出ます。
4.丸山会計は「設備を買う前」に呼ばれる税理士でありたい
私たちは、決算が終わってから節税策を探す事務所ではありません。
設備投資という、お金が大きく動くタイミングでこそ税額に差がつくと考えています。
E類型を選ぶなら少額特例を捨てる覚悟がいるうえに、事前の認定取得が絶対条件となる。
A・B類型であっても60日ルールに間に合わせるには稟議の前から動く必要がある。
こうした判断は、契約書に印を押した後では手遅れです。
経営理念に掲げた「ともに未来を描く」とは、税務のためだけの設備投資ではなく、事業計画と税制を同じ紙の上で設計するということ。
名古屋・栄から、提案型の“攻める税理士”として、投資の意思決定そのものに伴走します。
節税効果以上の報酬がかかるご提案はいたしません。
まとめ
経営強化税制の即時償却は強力ですが、認定は取得前が原則であり、A・B類型で遅れても取得から60日以内の申請受理と同一事業年度内の認定が必須です(※E類型等では事前の認定取得が絶対条件です)。
またE類型を選ぶと投資促進税制と40万円未満の少額特例が封じられます。
即時償却は繰延べ、税額控除は純減税という性質の違いも押さえたうえで、設備を選ぶ前に税務設計を終えておくことが、最大の節税策です。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務相談については専門家にご確認ください。
▼経営に役立つ情報をもっと知りたい方は
→ メルマガ登録はこちら
→ 丸山会計へのお問い合わせはこちら
この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


