「うちは5億円未満だから関係ない」は大間違い。他税制との”併用禁止”がもたらす有利選択の落とし穴
投稿日:2026年08月04日

おはようございます。
朝4時起きの名古屋の税理士の丸山です。
「新しい大胆な投資促進税制って、中小企業でも5億円以上の投資が要件ですよね? うちは今回の機械導入、1億5,000万円くらいだから関係ないですよね?」
このようなご質問を非常によくいただきます。
答えは、「大いに関係があります」。
むしろ、今すぐ中期的な有利不利シミュレーションを始めないと、数年後に大きな損をする可能性すらあります。
その理由が、本税制の「併用禁止規定」です。
■ 計画期間中は他の設備投資税制がストップする
本税制の確認を受けた法人は、その投資計画の期間中、中小企業経営強化税制(繰越税額控除制度を除く)をはじめとする主要な設備投資税制の適用を受けられなくなるとされています。
ここで押さえておきたいのが、この制限が「いつ」発動するかです。
制限がかかるのは、確認を受けた後、かつ投資計画の期間内に含まれる各事業年度です。
確認を受ける前の事業年度に遡って制限がかかったり、すでに適用した税制が取り消されたりすることはありません。
あくまで、確認以降の将来に対する縛りです。
つまり、「この機械は経営強化税制で即時償却しよう」「こちらの設備は別の税制を使おう」といった、減税制度の”つまみ食い”が、計画期間中は許されなくなるのです。
ひとつの大きな税制メリットを取りに行くことが、他の税制メリットを一定期間手放すことと引き換えになる。
この構造を理解しているかどうかが、勝敗を分けます。
■ 5億円未満の投資でも影響を受ける具体例
なぜ、5億円未満の投資を考えている企業にも影響するのか。
具体例で考えてみましょう。
貴社は精密金属加工の中小企業で、次のような3カ年投資構想を持っているとします。
1年目(今期)に新型のNC旋盤(コンピューター制御の金属加工機)を1.5億円で導入。通常なら中小企業経営強化税制で即時償却したい案件です。
そして3年目に、老朽化した工場を建て替えて自動倉庫と生産ラインを新設する6億円の大型投資。
こちらは投資額もROIも要件を満たせる見込みで、新税制の即時償却をフルに使いたい大本命プロジェクトです。
ここで誤解されがちなのですが、1年目に経営強化税制で即時償却したことが、3年目の新税制の確認申請を妨げるわけではありません。
1年目はまだ確認を受けていない年度ですから、制限は発動しませんし、1年目の即時償却が後から取り消されることもありません。
効いてくるのは、その後です。
3年目に新税制の確認を受けた時点から、投資計画の期間中(たとえば3年目から7年目まで)は、経営強化税制が使えなくなります。
つまり、4年目にマシニングセンタを5,000万円で追加したい、5年目に検査装置を3,000万円で入れたい——といった「5億円に遠く及ばない」規模の投資についても、本来使えたはずの即時償却や税額控除が封じられるのです。
中期の投資構想全体を俯瞰していなければ、この落とし穴には気づけません。
【ここだけは誤解しないでください】
・1年目に経営強化税制を使ったこと自体は、3年目の新税制の確認申請を妨げません。
・1年目の即時償却が、後から遡って取り消されることもありません。
・問題は「3年目の確認以降、計画期間が終わるまで経営強化税制が使えない」という、将来に向けた縛りです。
■ バッティングするケース・しないケース
では、どういうときに本当の意味で「バッティング」が起きるのか。
分かれ目は、確認申請書(様式第一)に記入する「特定生産性向上設備等投資計画の実施期間」をどう設定するか、ただ一点です。
【ケース①:バッティングしない(通常のシナリオ)】
1年目:旋盤1.5億円→経営強化税制で即時償却。この時点では確認書がなく、何も問題はありません。
3年目:工場6億円で大胆な投資促進税制の確認申請。実施期間を「3年目~7年目」と設定します。
→ 1年目は計画期間の外なので、1年目の経営強化税制は一切無関係。
→ ただし、3年目以降の計画期間中は経営強化税制が使えなくなります。
【ケース②:バッティングする(特殊なシナリオ)】
3年目の確認申請の際に、実施期間を1年目に遡って設定しようとした場合です。
→ 1年目が「投資計画の期間内」に含まれてしまう。
→ 1年目に適用した経営強化税制と重複し、問題となります。
→ もっとも、これは通常行いませんし、行う必要もない設定です。
つまり、実務で恐れるべきは「過去との衝突」ではなく、実施期間をどこまで伸ばすかによって決まる「将来の封じ込み」の方です。
■ 実務で勝つための3つのアプローチ
どの税制を選び、どのタイムラインで申請するのが、トータルで最も手元にキャッシュを残せるか。
実務では次の3つを掛け合わせてシミュレーションします。
第一に、今後3〜5年に予定しているすべての設備投資の洗い出し。
機械、建物、ソフトウェア、構築物まで、金額と時期を1枚の表にまとめます。
そのうえで、確認申請書に記入する「投資計画の実施期間」を何年目から何年目に設定するかを検討します。
この期間の取り方が、経営強化税制を使える年度と使えない年度をそのまま決めてしまうからです。
第二に、当期および来期以降の法人税の納税予測。
どんなに有利な控除があっても、利益が少なければ引ききれません。
税額控除の上限(法人税額の20%)に引っかからないかを試算します。
第三に、「即時償却」の早期資金回収メリットと「税額控除」の絶対的な減税メリットの比較。
課税の繰延べと税額の減額という性質の違いを、金利や再投資利回りまで考慮して現在価値ベースで比較します。
■ 未来のビジョンを、今の税務判断につなげる
「うちは5億円いかないから関係ないね」と片付けてしまうのは、経営者が持っている「数年後に工場を建てたい」という未来のビジョンを、今この瞬間の税務判断につなげられていないということです。
会社の中期的な成長投資計画の全体を見据えて、最も賢い税制の組み合わせと申請のタイミングをデザインする。
それこそが、提案型の「攻める税理士」である当事務所の真骨頂です。
頭の中に少しでも投資のアイデアが浮かんだら、具体的な契約を結ぶ前に、まずは当事務所の「トータルキャッシュフローシミュレーション」をご活用ください。
あなたの会社の未来のキャッシュを、全力でお守りします。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


