発注を1日急いだだけで数千万円の損?大胆な投資促進税制「日付の罠」とWEB申請の実務リスクヘッジ

投稿日:2026年08月05日

発注を1日急いだだけで数千万円の損?大胆な投資促進税制「日付の罠」とWEB申請の実務リスクヘッジ

おはようございます。

朝4時起きの名古屋の税理士の丸山です。

 

「素晴らしい設備投資計画ができました。すぐに役員会議を通して、明日にもメーカーに発注します!」

ちょっと待ってください。

その発注や契約のタイミングを間違えると、本来受けられるはずだった数千万円単位の減税が消えてしまう「日付の罠」があります。

2026年7月31日、経済産業省で「特定生産性向上設備等投資計画」の確認申請の受付が正式に始まりました。

実務の現場から、絶対に間違えてはならないスケジュールと申請システム運用の鉄則をお伝えします。

「確認を受けてから取得する」という絶対の順序

本税制で最も重要なルールは「順序」です。

 

税制の即時償却や税額控除を適用できるのは、投資計画について経済産業大臣の確認を受け、その確認を受けた日から5年以内に取得等をして事業の用に供した設備に限られます。

つまり、確認前に取得等に着手してしまった設備は、適用対象から外れるリスクが極めて高いのです。

「申請はしたから、確認書を待たずに先にメーカーへ発注してしまおう」——このフライング行為が命取りになります。

 

建築工事のように引き渡しが数年先になる場合であっても、契約や着工のタイミングと確認日の前後関係が問われます。

必ず、投資計画の策定、取締役会等での正式な意思決定、WEB申請、国の審査・確認書(様式第二)の交付、発注・契約・着工、という順序を守ってください。

意思決定の「日付」にも要注意

本税制の適合基準のひとつに、「投資計画が取締役会等の適切な機関の意思決定に基づくものであること」があります。

 

ここで実務上注意すべきなのが「決議の日付」です。

結論から申し上げると、取締役会等の決議は令和7年(2025年)12月26日以後でなければなりません。

これは解釈論ではなく、公開されている経済産業省関係産業競争力強化法施行規則改正案に明記された要件です。

同改正案の確認基準には、次の二つが並んでいます。

 

「D) 特定生産性向上設備等投資計画の策定の決議又は決定が取締役会その他これに準ずる機関により行われたものであること。」

「E) 特定生産性向上設備等投資計画の策定の決議又は決定が、経済産業大臣が定める日以後にされたものであること。」

そして同じ資料の「(3)経済産業大臣が定める日等を定める告示(案)」において、この「経済産業大臣が定める日」は「令和7年12月26日」と定められています。

 

基準DとEを合わせれば、要件は「取締役会その他これに準ずる機関が、令和7年12月26日以後に決議・決定した投資計画であること」ということになります。

裏を返せば、令和7年(2025年)12月25日以前に取締役会で正式決定済みの投資計画は、原則として確認基準Eを満たさず、本税制の対象外となります。

 

制度趣旨から考えても、税制の創設が公表される前に既に決定済みだった投資計画を、後から本税制に乗せることは想定されていません。

この日付は偶然ではありません。令和8年度税制改正大綱は令和7年12月19日に与党から公表され、同年12月26日に閣議決定されています。

つまり「大綱の閣議決定日」が、この税制を念頭に置いた新たな投資計画の出発点として指定されたと解釈できます。

 

制度公表前から既に決まっていた投資計画を、後から「制度適用目的」に書き換えることを防ぐ趣旨でしょう。

なお、省令案には既存計画を変更した場合の規定も置かれています(申請様式第一の「8」にも変更計画に関する記載欄があります)。

令和7年12月26日より前に策定の決議・決定がされた投資計画であっても、

当初計画から投資額が50%以上増加すること、

投資利益率が当初計画を超えること、

・質的・構造的な向上が見込まれること、

といった追加要件を満たせば、変更後の計画として申請できる余地があります。

 

ただし追加要件は厳しく、「以前の計画を少し変えただけ」では認められません。

取締役会議事録等に記載される正式な決議・決定日がいつであるかは、適用可否を直接左右します

実務上、非常に見落とされやすいポイントです。

水面下での準備や検討は早く進めるべきですが、「正式決議の日付」の取り扱いについては、申請前に必ず確認・設計しておく必要があります。

■ WEB申請システム(Gビズフォーム)の落とし穴

本税制の申請は、原則として経済産業省の「Gビズフォーム」によるオンライン申請です。

利用にはデジタル庁の共通認証システム「GビズID(プライムまたはメンバー)」が必要になります。

そして、経済産業省の操作マニュアルを読み込むと、見落とせない仕様が書かれています。

それは「手続担当者が退職等で不在となった場合、Gビズフォーム上で担当者の変更ができない」というシステム上の制約です。

 

主担当者が突然退職したり長期不在になったりすると、申請の進捗確認や、国からの差戻し(不備修正の指示)に対応できなくなります。

審査が止まって確認書の交付が遅れれば、設備の契約や着工もすべて止めざるを得ません。

このリスクを防ぐため、マニュアルでは「副担当者(最大2名)」の事前登録が案内されています。

副担当者を登録しておけば、主担当者が不在になっても同じ組織内の別のメンバーがシステムを引き継げます。

地味な話に見えますが、数億円の投資スケジュールを守るための重要なリスクヘッジです。

■ 20293月末のタイムリミットから逆算する

投資計画の国の確認は、令和11年(2029年)331日までに受ける必要があります。

「まだ時間がある」と思うのは早計です。

本税制は「確認を受けた日から5年以内に設備を取得し、事業の用に供する」という建て付けなので、建設自体が数年先であっても、最初の契約や着工の前に確認書を取っておかなければなりません。

 

5億円規模の工場や倉庫の建設は、設計、見積もり、投資利益率の計算、国の審査など、準備段階だけで数ヶ月かかります。

投資のアイデアが現在進行形である経営者様は、発注スケジュールから逆算して、今から準備を始める必要があります。

当事務所では、GビズID取得のサポートから、フライングを防ぐプロジェクトスケジュールの立案、取締役会議事録の整備まで、実務のスケジュール管理を一貫してサポートいたします。

手遅れになる前に、ぜひお早めにご相談ください。

 

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この記事の監修

丸山会計事務所 税理士 代表 丸山和秀

税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)

税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。

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