省エネ設備投資 即時償却と税額控除の選び方
投稿日:2026年06月19日

朝4時起きの税理士、丸山です。
本日は、省エネ設備への投資を後押しする優遇税制、なかでも「即時償却」と「税額控除」の選び方についてお話しします。
省エネ設備の優遇税制と聞くと、
「大きな工場を持つ製造業の話だろう」
「太陽光パネルでも載せないと使えないのでは」
と思っていませんか。
実はこれは誤解です。
高効率の空調、LED照明、断熱性能の高い生産設備、エネルギー管理システム(EMS)など、多くの中小企業が日常的に入れ替える設備が、中小企業経営強化税制をはじめとする優遇制度の対象になり得ます。
そして同じ設備を買っても、税制の「選び方」ひとつで、手元に残るお金が数百万円単位で変わってきます。
まず押さえる「即時償却」と「税額控除」の違い
中小企業経営強化税制では、対象設備を取得した際に、
(1)取得価額の全額をその年に経費にできる「即時償却」か、
(2)取得価額の10%(資本金3,000万円超は7%)を法人税額から直接差し引く「税額控除」
のいずれかを選べます。
たとえば1,000万円の高効率空調を導入した場合、即時償却なら初年度に1,000万円を一気に損金算入でき、利益を圧縮して納税を先送りできます。
一方、税額控除なら100万円を税額からまるごと差し引けます。
即時償却は「早く・大きく」、税額控除は「トータルで確実に」税負担を減らすイメージです。
ここで見落とされがちなのが、即時償却は「資金が早く戻る」だけで税金の総額そのものは原則変わらないのに対し、税額控除は文字どおり払う税金が100万円減るという点です。
手元資金を優先するか、納税総額の圧縮を優先するか
——この違いが選択の出発点になります。
令和7年度改正で「建物」まで対象に拡大
令和7年度の税制改正は見逃せません。
中小企業経営強化税制は適用期限が2年延長されたうえ、新たに「E類型」が創設され、これまで対象外だった建物が優遇の対象に加わりました。
省エネ性能の高い建物への建替えや、大規模な設備更新を伴う投資を検討している経営者にとって、これは大きな追い風です。
なお、建物の場合は即時償却や10%の税額控除ではなく、「取得価額の15%(特定建物等については25%)の特別償却」または「1%(特定建物等については2%)の税額控除」となる点に注意が必要です。
売上高100億円を目指すような成長意欲のある中小企業(売上高10億円超90億円未満の法人)を後押しする狙いがあり、適用には経営力向上計画の認定など一定の手続きが必要ですが、対象が建物まで広がった意味は非常に大きいといえます。
どちらを選ぶかは「利益」と「キャッシュ」で決まる
では即時償却と税額控除、どちらが得なのか。
判断軸はシンプルで、「今期に大きな利益が出ているか」「手元資金を厚くしたいか」です。
今期にたまたま大きな利益が出ていて納税負担が重いなら、即時償却で一気に圧縮し、資金繰りを楽にするのが有効です。
一方、毎年安定して黒字が続く会社なら、税額控除で確実に100万円分の税金を取り戻すほうが、長い目で見て有利になるケースが多くあります。
注意したいのは、即時償却はあくまで「先送り」であり、減価償却費を先に使い切る分、翌年以降の経費は減るという点。
目先の節税額だけで飛びつくと、数年単位ではかえって損をすることもあります。
たとえば実効税率を約34%とすると、1,000万円の即時償却で先送りできる税は約340万円。
これは「無利息で340万円を数年間借りる」効果に近く、資金繰りが厳しい時期ほど価値が高まります。
逆に毎期しっかり利益が出る会社なら、税額控除の100万円は確実な手残りとして毎年の投資原資に回せます。
「攻める税理士」として、買う前の一手を
私たち丸山会計事務所が大切にしているのは、設備を「買ったあと」ではなく「買う前」に動くことです。
即時償却か税額控除かは、購入後では選び直せません。
経営強化税制の適用には原則として設備取得前に「経営力向上計画」の認定を受ける必要があり(※A・B類型には取得日から60日以内の申請等の例外あり)、特にE類型では事前の認定取得が絶対条件となります。
だからこそ、投資の意思決定の段階から、向こう3〜5年の利益計画とキャッシュフローを一緒に見渡し、最も手残りが多くなる選択をご提案します。
守りの記帳代行にとどまらず、お金が大きく動くこのタイミングでこそ差をつける
——これが提案型の「攻める税理士」の役割だと考えています。
経営理念に掲げる「ともに未来を描く」とは、まさにこうした投資判断を経営者と並走して描いていくことにほかなりません。
まとめ
省エネ設備投資は、即時償却で資金繰りを楽にするか、税額控除で確実に税金を取り戻すか、会社の状況で最適解が変わります。
令和7年度改正で建物まで対象が広がった今(※建物の場合は特別償却または税額控除)、選び方ひとつで手残りは大きく変わります。
設備を買う前のご相談こそ、最大の節税の第一歩です。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務相談については専門家にご確認ください。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


