クラウドは対象外?デジタル投資で使う税制優遇の実務

投稿日:2026年08月08日

クラウドは対象外?デジタル投資で使う税制優遇の実務

朝4時起きの税理士、丸山です。
本日は「デジタル化投資と税制優遇」についてお話しします。

 

「デジタル化への投資なら、何かしら税制優遇でお得になるはず」――そう思っていませんか。
かつて話題になった『DX投資促進税制』を当てにしている方も少なくありません。
ですが、ここに二つの大きな誤解があります。
ひとつ、DX投資促進税制はすでに終了しています。
ふたつ、いま使える優遇税制の対象になるのは、あくまで『資産に計上されるデジタル投資』だけ。
毎月払うクラウド利用料のような費用は、原則として一円も対象になりません。
この線引きを知らずに投資してしまうと、数十万円単位の節税チャンスをまるごと取り逃します。

① DX投資促進税制はもう終わった。今の主役は経営強化税制

DX投資促進税制(デジタルトランスフォーメーション投資促進税制)は期限付きの制度で、すでに適用期限を終えています。
過去の制度を前提に設備を選んでも、優遇は受けられません。
では今デジタル投資で使えるのは何か。
中心となるのは『中小企業経営強化税制』と『中小企業投資促進税制』です。
令和7年度改正でこの2税制は適用期限が2年延長され、経営強化税制には建物を対象に含むE類型も新設されました。
ただしE類型は『売上高100億円超を目指す中小企業』向けの措置で、建物のみを取得しても対象になりません。
さらにE類型を使う法人は、その投資計画の期間中、別資産であっても中小企業投資促進税制の適用対象から外れ、両制度を併用できなくなる点に強い注意が必要です。

 

あわせて押さえておきたいのが、令和7年度改正でPCやサーバー等を対象としてきた『デジタル化設備(C類型)』が廃止された点です。
従来はデジタル機器を入れやすい類型でしたが、今後デジタル投資で優遇を狙うなら、生産性向上設備のA類型や収益力強化のB類型などに当てはめる工夫が求められます。
名称の華やかさに引きずられず、いま生きている制度と使える類型は何かをまず確認する。
ここが第一歩です。

② 対象は「資産計上されるもの」だけ――SaaSの落とし穴

最大の盲点がここです。
優遇の対象になるのは、貸借対照表に資産として計上される投資に限られます。
自社で使うために導入したソフトウェアは無形固定資産に計上されるため対象になり得ますが、月額課金のクラウドサービス(SaaS)の利用料は、多くの場合その期の費用として処理されるため対象外です。
たとえば300万円のソフトウェアを一括導入すれば、経営強化税制で即時償却(全額をその年の損金)や、税額控除(資本金3,000万円以下の法人等は10%、3,000万円超1億円以下の法人は7%)が狙えます。

 
一方、同じ機能を月10万円のSaaSで賄うと、税制優遇はゼロ
『買う』か『借りる』かで、税金の扱いはまったく違うのです。
もちろんSaaSにも初期費用を抑えられる、常に最新機能を使えるといった利点があり、税だけで優劣は決まりません。
ただ、大きな金額のデジタル投資を検討するなら、契約形態を決める前に必ず一度試算しておくべきです。

③ 即時償却と税額控除、どちらを選ぶか

経営強化税制では『即時償却』と『税額控除』を選べます。
即時償却は初年度に全額を経費化でき、利益が出ている年の圧縮とキャッシュ確保に効きます。
ただし償却の先取りであり、生涯で落とせる総額自体は変わりません。
対して税額控除は納税額そのものを直接減らすため、長い目で見た手取りは有利になりやすい。
先に資金を残したいなら即時償却、トータルの税負担を軽くしたいなら税額控除、と利益水準と資金繰りで判断します。

 

なお経営強化税制の適用には、原則として『経営力向上計画』の認定など取得前の手続きが必要です。
ただしソフトウェア等が対象となるA類型・B類型に限っては、設備の取得日から60日以内に認定申請が受理される等の要件を満たせば、取得後の申請でも認められる例外措置があります。
一方でD類型やE類型では事前の認定取得が絶対条件で、例外は使えません。
頼れる救済が限られる以上、やはり契約前の段取りが肝心です。
たとえば黒字が大きく出た年に一気に利益を圧縮したいなら即時償却、毎期安定して利益が出る会社が長期で負担を抑えたいなら税額控除、といった具合に、自社の決算の姿から逆算して選ぶのが実務のコツです。

④ 攻める税理士は「買う前」から一緒に動く

デジタル投資の優遇は、設備を選ぶ段階・契約する前の段取りで勝負が決まります。
工業会等の証明書や計画認定といった書類は、取得後には原則さかのぼれないからです。
丸山会計事務所は、確定申告の代行にとどまらず、投資の意思決定そのものに踏み込む『攻める税理士』でありたいと考えています。

 
『買うか借りるか』『どの制度・どの類型でどう落とすか』を、お金が動く前にご一緒に設計する。
経営理念に掲げた『ともに未来を描く』とは、まさにこの一歩前からの伴走です。
知らなかったことで損をする――それを一件でも減らすことが私たちの仕事です。

まとめ

DX投資促進税制はすでに終了し、今は経営強化税制・投資促進税制が主役です。
ただしデジタル化設備のC類型は廃止され、優遇の対象は資産計上されるソフトウェア等に限られ、月額のクラウド利用料は対象外
『買う』と『借りる』で税の扱いは大きく変わります。
即時償却と税額控除の選択、そして原則として取得前の計画認定(A・B類型の60日例外、E類型の併用制限にも注意)が節税の分かれ道。
投資を決める前にご相談ください。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務相談については専門家にご確認ください。

 

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この記事の監修

丸山会計事務所 税理士 代表 丸山和秀

税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)

税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。

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