あなたの会社でも使えるかもしれない!試験研究費の税額控除とは何か?
投稿日:2026年04月22日

おはようございます。
朝4時から今回のブログを書いております。
名古屋税理士の丸山です。
今回は試験研究費の税額控除についてです。
「試験研究費の税額控除?うちみたいな小さな会社には関係ない…」
そう思っていませんか?
実は、製造業はもちろん、IT・ソフトウェア会社、食品メーカー、建設業、農業など、さまざまな業種の中小企業が活用できる制度なのです。
しかも、「法人税を直接減らせる」という非常に強力な効果があります。
この記事では、難しい税の仕組みをできるだけやさしい言葉で解説します。
まずは制度の全体像を把握して、「自分の会社でも使えるかもしれない!」という感覚をつかんでください。
STEP 0:まず押さえておきたい3つのポイント
| ℹ️ この章のキーポイント ① 試験研究費の税額控除は「法人税を直接減らせる」非常に強力な節税制度です ② 資本金1億円以下の中小企業は、より有利な「中小企業技術基盤強化税制」を利用できます ③ 「当初申告要件」があるため、確定申告前に必ず顧問税理士と準備することが重要です |
STEP 1:「税額控除」ってどういう意味?
1-1. 「節税」とはどこが違うのか?
税金を減らす方法には、大きく分けて2つあります。「経費を増やして利益(所得)を下げる方法」と「法人税の計算後に税額から直接引く方法」です。
経費を増やす節税の場合(よくある方法)
- 利益1,000万円から経費100万円を引く → 課税対象は900万円
- 900万円 × 税率25% = 税額225万円
- 節税額:税率分(100万円 × 25% = 25万円)
税額控除(今回の制度)の場合
- 利益1,000万円 × 税率25% = 法人税250万円
- 試験研究費100万円 × 12% = 12万円を法人税から直接引く
- 実際に払う税金:250万円 − 12万円 = 238万円
- 節税額:12万円(経費の12%が丸ごと節税に!)
このように、税額控除は「かけた費用の一定割合が、そのまま税金から引かれる」という仕組みです。経費を増やす節税(税率分しか得しない)よりも、効果が大きいのが特徴です。
STEP 2:制度の基本的な仕組みをつかもう
2-1. 中小企業が使える「中小企業技術基盤強化税制」
試験研究費の税額控除にはいくつか種類がありますが、中小企業にとって最もメインとなるのが「中小企業技術基盤強化税制」です。
やさしい言葉でいうと、「中小企業向けの研究開発応援制度」です。
控除率(どれだけ引けるか)
- 基本控除率:試験研究費の12%を法人税から引ける
- 増加控除:前年より試験研究費が増えた場合、最大17%まで引けることも
- 控除上限:基本はその年の法人税額の25%まで
(※研究費が増加している場合などは、最大で35%〜40%程度まで上限が引き上げられる特例もあります)
| 【計算例】 <例:試験研究費が年間500万円の場合> 試験研究費500万円 × 控除率12% = 控除額60万円 法人税(仮に400万円)の25% = 100万円(控除上限) 60万円 < 100万円なので → 60万円が全額控除できる! <法人税が少ない場合の例> 試験研究費500万円 × 12% = 60万円 法人税(仮に100万円)の25% = 25万円(控除上限) 60万円 > 25万円なので → この年は25万円しか控除できない ※使い切れなかった分(35万円)は翌年に繰り越せません(注意!) |
STEP 3:どんな会社が対象になるのか?
3-1. 対象になる会社の条件
- 資本金(会社を作るときに出したお金)が1億円以下であること
- 青色申告(あおいろしんこく)をしていること
- 法人税を納めていること(赤字の会社は使えません)
| ⚠️ 注意 資本金が1億円以下でも、以下に該当する場合は「中小企業技術基盤強化税制」が使えません ・大規模法人(資本金が1億円を超える法人など)が発行済株式の1/2以上を持っている会社(大企業の子会社など) ・複数の大規模法人が合計して発行済株式の2/3以上を持っている会社 「うちは中小企業だから大丈夫」と思わずに、株主構成を顧問税理士に確認してもらいましょう。 |
STEP 4:どんな費用が「試験研究費」になるのか?
4-1. 大前提:「自然科学」に基づく研究・開発であること
試験研究費は、どんな研究開発でもOKというわけではありません。「自然科学(りがく・こうがく・のうがく・じょうほうかがく)に基づく研究・開発」に限定されています。
やさしい言葉でいうと、「理科や情報系の知識を使って、新しいものを作ったり、技術を改善したりする活動」です。
4-2. 対象になる・ならないの比較表
以下の表で、どんな費用が対象になるか確認してください。
| ✅ 対象になる例 | ❌ 対象にならない例 |
| 新製品の材料費・試作品の製造費用 | 新しい料理メニューの考案・レシピ作り |
| 工場の生産技術・製造工程の改善研究費 | 接客マナーの向上・従業員サービス研修費 |
| 新しいソフトウェア・システムの技術開発費 | マーケティング調査・広告戦略の立案費 |
| 農業・食品の新品種・新技術の開発費 | 店舗レイアウト改善・デザイン変更費 |
| 専任研究者の給与・人件費(※条件あり) | 一般事務スタッフ・営業社員の人件費 |
| ℹ️ 覚えておきたいポイント 「新しいことをやっているから試験研究費になる」ではありません。 「自然科学の知識を使い、技術的な課題を解決しようとしている」かどうかが判断の基準です。 たとえば、新しい料理メニューを考えることは「人の感性・味覚」に基づくものであり、自然科学の研究ではないため、対象外となります。 |
STEP 5:人件費はどこまで認められるのか?
5-1. 人件費の条件は厳しい
試験研究費として認められる人件費には、厳しい条件があります。「専門知識を持ち、ほぼ全ての時間を試験研究に専念する者(専ら試験研究に従事する者)」の給与だけが対象です。
認められる人件費の例
- 研究開発専門部門に所属し、試験研究だけを行っている研究者の給与
- 専門的な知識や実務経験(資格の有無は問いません)を持ち、開発業務のみに従事するエンジニアの給与」
- 試験研究プロジェクト専任で、他の業務を一切行っていない社員の給与
認められない人件費の例
- 研究開発の合間に、営業活動・接客・一般事務も行っている社員の給与
- 社長・役員の給与(特別な場合を除き、ほぼ対象外)
- パートタイムで研究開発を手伝っているだけの社員の給与
| ⚠️ 注意 「うちの社員は開発もやっているから人件費を全部入れよう」は危険です! 時間按分(じかんあんぶん:時間の割合で分ける方法)という方法もありますが、 「専ら(もっぱら)試験研究に従事する」という条件が厳しく適用されます。 顧問税理士と相談のうえ、慎重に判断してください。 『1日のうち〇%だけ研究をした』というような割合での計算は認められません。 ただし、『この1ヶ月間はプロジェクトの開発に専念した』といった形で、期間を明確に区切って証明できる場合は対象になります。 |
STEP 6:申告のときに絶対に気をつける「当初申告要件」
6-1. 「当初申告要件」とは何か?
試験研究費の税額控除を使うためには、確定申告書に「この制度を使います」と記載して、必要な書類(明細書など)を一緒に添付しなければなりません。
これを「当初申告要件(とうしょしんこくようけん)」といいます。
| ⚠️ 注意 「当初申告要件」の重要ルール: 申告した後で「やっぱり試験研究費の税額控除も使いたかった」と思っても、 修正申告では追加できません! 確定申告のタイミングを逃したら、その年は使えなくなります。 決算前・申告前に必ず顧問税理士に相談してください。 |
6-2. 必要な書類・手続きの流れ
- 試験研究費の明細書(どんな研究に、いくら使ったかの一覧)を作成する
- 税額控除の計算書(控除額を計算した書類)を作成する
- 確定申告書に控除額を記載する
- 上記書類を確定申告書に添付して税務署に提出する
| ℹ️ 試験研究費の「認定」は不要 試験研究費の税額控除は、事前に国や税務署から「認定(にんてい)」をもらう必要はありません。 自社で「これは試験研究費だ」と判断して、申告書に記載するだけでOKです。 ただし、税務調査で否認されるリスクもあるため、 記録(日報・費用明細・研究報告書など)をしっかり残しておくことが大切です。 |
まとめ+今日からできるアクションプラン
この章の重要ポイント
- 試験研究費の税額控除は「法人税を直接減らせる」強力な制度
- 中小企業は「中小企業技術基盤強化税制」で試験研究費の12%(最大17%)を控除可能
- 対象は「自然科学に基づく研究開発」に限定(料理・接客・マーケティングは対象外)
- 人件費は「専ら試験研究に従事する者」のみが対象(兼業社員・役員は原則対象外)
- 当初申告要件があり、修正申告での後追い追加はできない
今日からできる3つのアクション
アクション 1:自社の「研究・開発」活動をリストアップする
自社で「新しい製品・技術・システムを作ろうとしている活動」がないか、社内で確認してみてください。「大げさな研究でなくても、既存製品の技術改良・新素材の検討でも対象になることがあります。
アクション 2:顧問税理士に「試験研究費の税額控除」について相談する
「自社で使えますか?」と一言聞くだけでOKです。顧問税理士は詳しい状況をもとに、使えるかどうかを判断してくれます。決算が近い場合は特に、早めに相談することをお勧めします。
アクション 3:研究開発に使った費用の記録を今日から始める
税務調査に備えて、研究開発活動の記録を残しておきましょう。「誰が・いつ・何のために・いくら使ったか」を日報・費用明細・研究ノートなどに記録するだけで、後の申告がスムーズになります。
免責事項
本記事は、一般的な情報提供を目的として作成しており、個別の税務アドバイスを提供するものではありません。税法は改正されることがあり、また個々の状況により適用が異なります。実際の税額控除の適用については、必ず顧問税理士または税務の専門家にご相談ください。本記事の内容に基づいて行動した結果について、筆者・発行元は一切の責任を負いません。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


