不動産投資のリスクと中古物件の優位性について(賃貸不動産)
投稿日:2026年01月21日
「賃貸経営=堅い」は、もはや前提にならない
賃貸不動産は、長く「安定した家賃収入」「相続対策の定番」と語られてきました。
確かに、インフレ・株価変動・事業環境の変化があっても、一定の賃料が入る資産は魅力的に見えます。
しかし、今の賃貸市場は、10年前・20年前と同じ感覚で語れる環境ではありません。
建築費は高騰し、賃貸供給は増え、入居者の選別は厳しくなり、金融機関のスタンスも局面によって変わります。
さらに、近年は「相続税対策」という文脈で不動産に注目が集まった結果、節税効果が価格に織り込まれ、投資判断がゆがむケースも増えています。
本記事では、賃貸不動産投資に潜む“今のリスク”を整理しつつ、なぜ中古物件が再評価されるのか、どんな視点で判断すべきかを解説します。
リスク①:建築費が上がり続ける一方、家賃は上がりにくい
最も本質的な問題は、「コスト」と「売上(家賃)」が同じ方向に動かない点です。
- 新築の建築費は上がる(材料費・人件費・設備仕様の高度化)
- しかし、家賃は構造的に上がりにくい(需給・周辺競合・築年数による値下げ圧力)
賃貸経営をしたことがある方なら実感されると思いますが、家賃は「最初が一番高い」ことが多い。
新築プレミアムが剥がれ、次の入居者は新築より安い条件を求める。周辺に新しい物件が建てば、さらに相対的価値は下がる。
つまり、当初の計画が成立するための“前提条件”は、時間とともに厳しくなる傾向があります。
リスク②:「高級志向・少戸数・高単価」提案の落とし穴
最近、ハウスメーカー等から「少戸数でも高級仕様にして単価を上げれば勝てる」という提案を受けるケースがあります。
見栄えが良く、収支シミュレーションも魅力的に見えるため、意思決定が進みやすい。
しかし、ここに“静かな罠”があります。
少戸数物件は、空室が出た瞬間のダメージが大きい。20〜30戸ある建物なら、1戸空いても他で吸収できる。
しかし、4戸・6戸・8戸などの物件では、1戸空いた時点で収支が一気に悪化します。
さらに、高級仕様は「次も同じ家賃で埋まる」ことを前提にしがちですが、賃貸市場では“同じ家賃で再募集できる保証”はありません。
加えて、高級仕様は修繕・設備更新の費用も上がりやすい。
「見た目が良い」ことと「事業として強い」ことは別です。
賃貸経営は、派手なスタートより、長期で耐える体力が重要です。
リスク③:相続税対策が目的化すると、投資が“逆転”する
相続税対策として不動産を活用すると、評価圧縮の効果は確かに生じ得ます。ただし、ここで重大な勘違いが起こりやすい。
相続税が下がる=得 ではありません。
節税はあくまで手段で、目的は「資産を残すこと」「キャッシュフローを毀損しないこと」です。
にもかかわらず、「相続税が下がる」という理由だけで高値掴みをしてしまうと、事業収支は弱くなり、将来の売却も難しくなる可能性がある。
税金が下がったのに、資産が減る。
この逆転現象は、不動産が絡むと本当に起こります。
なぜ中古物件が優位になるのか:最大の価値は「現実データ」

中古物件の強みは、単に「安い」ことではありません。最大の価値は、現実の数字が見えることです。
- 実際の家賃(募集家賃ではなく、成約家賃)
- 実際の稼働率(満室想定ではなく、現実の空室期間)
- 修繕履歴と今後の修繕計画
- 入居者属性・退去理由
- 周辺の競合状況(新築供給・築浅中古・家賃相場)
これらは、新築計画では“想定”でしか置けません。しかし中古なら、一定程度の事実が揃うため、投資判断の精度が上がります。
もちろん中古にも注意点はあります。
修繕費が想定以上にかかる、管理が荒れている、立地が劣化している、金融機関の評価が低いなど。
しかし、それらは「確認して織り込む」ことが可能です。
織り込めるリスクは、投資において管理できます。
「中古が正解」ではない。正解は“出口まで含めた耐久力”
結論として、賃貸不動産投資において大切なのは、次の問いです。
- 返済が終わるまで、事業として耐えられるか(空室・家賃下落・金利上昇に耐える)
- 出口はどこか(売却・建替・相続後の方針)
- 次世代が持ち続けたい資産か(負動産化しないか)
不動産は、買った瞬間ではなく、「10年後・20年後に何が残るか」で評価されます。
判断のための実務チェックリスト(会計事務所視点)

最後に、検討時に最低限押さえたいチェック項目をまとめます。
- 家賃は「募集」ではなく「成約実績」ベースか
- 空室期間を織り込んでいるか(年間0〜1ヶ月で置いていないか)
- 修繕費・設備更新費を入れているか(10年・15年・20年の波)
- 金利が上がった場合の耐性(+1%でも回るか)
- 税効果だけで成立させていないか(税効果が消えても成り立つか)
- 売却時の想定価格を“根拠ある形”で置けているか
- 相続後の管理・意思決定者が明確か(争続リスク)
不動産は、良い物件なら強い資産になります。
しかし、環境が変わった今は「堅いはず」が堅くない。
だからこそ、感覚ではなく数字で判断することが、資産家にとっての防衛策になります。
この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。



