相続税対策としての不動産活用の落とし穴
投稿日:2026年01月22日
「相続税が下がる不動産」は、資産家の願いを叶えないことがある

相続税対策として不動産を活用することは、一定の合理性があります。
賃貸不動産は評価が下がりやすく、借入を組み合わせることで課税価格を圧縮できる場合もある。これは否定しません。
しかし、ここで多くの資産家が陥る落とし穴があります。
「相続税を下げること」が目的化すること。
本来の目的は、家族に資産を残し、生活や事業が安定するように設計することのはずです。
にもかかわらず、税金を下げるために資産の質を落としてしまう。これが実務上、非常に多い。
不動産賃貸は「節税」ではなく「事業」だ
アパート・マンション経営は、事業です。収益が出なければ続きません。
- 家賃が下がる
- 空室が出る
- 修繕が必要になる
- 金利が上がる
- 管理コストが増える
これらは、税金とは無関係に起きます。
相続税が下がったとしても、事業として赤字なら、資産は減ります。
借入の“魔力”:税金が下がるほど、財務が弱くなる

不動産による相続対策は、借入を伴うケースが多い。
借入があると、課税価格が下がる。
その瞬間は勝った気になりやすい。
しかし、借入は「将来のキャッシュフローを先食い」します。
返済原資が家賃収入に依存しているなら、家賃が下がった瞬間、戦略は崩れます。
さらに、相続後に不動産を引き継ぐ側が「返済と管理」を背負うことになる。
これが次世代の不満・争いを生む原因にもなります。
出口戦略がない不動産は、負動産になりやすい
相続対策の不動産活用で最も致命的なのは、出口を考えないことです。
- 売れるのか
- いくらで売れるのか
- 誰が引き継ぐのか
- 引き継いだ人は維持できるのか
これが曖昧なまま、節税効果だけで進めると、相続のタイミングで「売れない」「揉める」「資金が足りない」が一気に表面化します。
よくある失敗パターン(実務上の典型)
会計事務所の視点でよく見る失敗は、次のようなものです。
- 収支計画が“満室想定”前提で甘い
- 家賃下落・空室期間・修繕を軽視
- 「評価が下がる」メリットだけを見て高値で購入
- 引き継ぐ子どもが不動産に興味がない
- 相続後に共有になり、意思決定が止まる
- 結局売却して現金化するが、売却損・税負担・手残り悪化
相続対策のつもりが、相続後に資産が減る。
これが最大の悲劇です。
成功する不動産活用は「税金の前に、キャッシュフロー」を見る

本当に優れた相続対策は、税金を下げた後に、
- 手残りが増える
- 家族が安定する
- 次世代が引き継ぎやすい
という状態を作ります。
そのためには、最低でも次の確認が必要です。
- 家賃を10%下げても返済できるか
- 空室が連続しても持ちこたえるか
- 修繕費を積み立てられるか
- 相続後、誰が管理し意思決定するのか
- 売却するなら、出口価格の根拠はあるか
不動産は、使い方次第で非常に強い武器になります。
しかし、税金だけを見て武器を振ると、自分に跳ね返る。
それが落とし穴です。
この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


