不動産投資の落とし穴:税務リスクと空室リスクへの備え方
投稿日:2026年04月18日

朝4時起きの名古屋の税理士丸山です。
本日は不動産税務に関するお話です。
不動産投資は安定した収益が期待できる一方、税務リスクや空室リスク、金利リスクなど多くの落とし穴が潜んでいます。本記事では、不動産オーナーが必ず知っておくべき主要なリスクと、その具体的な対策を税務の観点からわかりやすく解説します。
1. 不動産投資における主要リスクの全体像
不動産投資において「リスク」というと、物件価格の下落だけをイメージしがちですが、実際にはそれ以外にも多くのリスクが存在します。
大きく分けると、
①空室リスク
②金利上昇リスク
③税務リスク
④流動性リスク
⑤修繕リスク
の5つが代表的です。
このうち、税務リスクは特に見落とされやすく、後になって大きな損失につながるケースが少なくありません。
たとえば、消費税の還付スキームを利用した節税が税務調査で否認されるケースや、減価償却の計算誤りによる追徴課税などは、実際に多くの不動産オーナーが直面している問題です。
リスクを正しく認識し、あらかじめ対策を立てておくことが、不動産投資を長期的に成功させるための第一歩となります。
2. 空室リスクと税務上の損失計上の関係
空室リスクは、賃貸経営における最も身近なリスクです。空室が続くと家賃収入が減少するだけでなく、ローンの返済や固定費の支払いが収入を上回る「赤字経営」の状態に陥ります。
税務上、この赤字(不動産所得の損失)は、給与所得など他の所得と損益通算することができます(一定の条件あり)。
たとえば、年収800万円のサラリーマンが不動産所得で年間100万円の赤字となった場合、課税所得が700万円に圧縮され、所得税・住民税を合わせて30〜40万円程度の節税効果が期待できます。
ただし、土地の取得に要した借入金の利息部分は損益通算の対象外となるため注意が必要です(土地・建物を一括購入したローンの場合は按分計算が必要)。
また、別荘など「生活の用に供されない資産」についての損失は通算できません。空室期間中の損失計上を適切に行うためにも、正確な帳簿管理と税理士への相談が重要です。
3. 税務リスクのトップ3と具体的な対策
【リスク①】減価償却の計算誤り
建物は毎年一定額を経費として計上できる「減価償却」の対象です。
しかし、建物の耐用年数の適用誤りや、土地と建物の按分割合の誤りは税務調査で頻繁に指摘される事項です。
たとえば、鉄筋コンクリート造(RC造)の居住用建物の耐用年数は47年ですが、中古物件の場合は「簡便法」による計算が認められており、築年数によって短い耐用年数が設定されます。
この計算を誤ると、過大・過少どちらの減価償却も問題となります。
【対策】物件取得時に購入契約書・固定資産評価証明書をもとに、土地と建物の按分を適切に行い、耐用年数を正確に設定してください。中古物件は特に計算が複雑なため、税理士に確認することをお勧めします。
【リスク②】消費税の還付をめぐるリスク
住宅の家賃収入は消費税が非課税です。
そのため、物件取得時に支払った消費税(仕入税額)を還付することは原則できません。
過去には、物件取得前に課税売上を作ることで消費税還付を受ける「消費税還付スキーム」が横行しましたが、平成22年・平成28年・令和2年と段階的に規制が強化され、現在ではほとんどのケースで還付を受けることが困難な状況です。
スキームを安易に採用した場合、過去に遡って還付額の返還を求められることもあります。
【対策】消費税に関する節税プランは必ず最新の税制を確認し、信頼できる税理士と相談した上で判断してください。
【リスク③】青色申告の要件を満たさないことによる特典消失
不動産所得が事業的規模(おおむね5棟10室以上など)で営まれている場合、青色申告を選択することで最大65万円の青色申告特別控除が適用されます。※
しかし、青色申告の適用には「正規の簿記の原則」(複式簿記)による帳簿の作成と、e-Taxによる申告が条件です。
年収に応じて異なりますが、税率が30%程度の方なら16万円以上の税額増加となります。
※なお、事業的規模に満たない場合は、記帳方法等に関わらず控除額は10万円となります。
【対策】会計ソフト(freee、マネーフォワードなど)を活用して帳簿を適切に管理し、毎年3月15日までに確定申告を行いましょう。
4. 金利上昇リスクと出口戦略
2024年〜2025年にかけて日本銀行が利上げに転じ、不動産投資ローンの金利が上昇しています。変動金利型のローンを利用している場合、返済額が増加するリスクに備える必要があります。
たとえば、3,000万円を変動金利1.0%・35年返済で借り入れた場合、月々の返済額は約8.5万円ですが、金利が2.0%に上昇すると約9.9万円に増加し、年間で約17万円の負担増となります。さらに金利が3.0%になると月々11.4万円、年間で約35万円の増加となり、収支が一気に悪化します。
税務の観点では、借入金の利息は不動産所得の経費として計上できます。
ただし、前述のとおり土地分に対応する利息は損益通算の対象外となる点に注意が必要です。
金利上昇に備えるためには、キャッシュフローに余裕を持たせた物件選びと、繰上返済などの資金計画が重要です。
また、売却(出口戦略)を検討する際は、譲渡所得税(短期約39.63%、長期約20.315%)も含めた手残り計算を事前に行うことが不可欠です。
まとめ
不動産投資は、正しい知識とリスク管理によって安定した資産形成が可能な投資手法です。
空室リスク・税務リスク・金利リスクのいずれも、事前の準備と専門家への相談で大幅に軽減することができます。
特に税務上の落とし穴は、知らないままでいると後々大きな損失につながることがあります。
不動産投資を始める前、あるいは経営を続けるなかで定期的に税理士とコミュニケーションを取り、最新の税制に対応した適切な対策を講じるようにしましょう。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務相談については専門家にご確認ください。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


