不動産の「組替え」で気をつけたい税務のポイント:取得・相続・譲渡を徹底解説
投稿日:2026年04月20日

名古屋の税理士丸山です。
不動産オーナーや相続を控えたご家族にとって、不動産の「組替え」
──つまり購入・売却・相続・贈与・保有形態の変更──
は資産を守り、次世代へつなぐための重要な手段です。
しかし、不動産に関する税制は非常に複雑で、一歩間違えると多額の税負担が生じることもあります。
本記事では、不動産の組替えに係る税務の主要なポイントを、わかりやすく解説します。
【目次】
1. 不動産を「取得」するときの税務ポイント
2. 相続・贈与で不動産を受け取るときの注意点
3. 不動産を「保有」しているときの税務ポイント
4. 不動産を「売却」するときに知っておきたい制度
5. 相続税の財産評価と「通達評価額」の考え方
1. 不動産を「取得」するときの税務ポイント
不動産を購入する場面では、「土地と建物の取得価額の区分」が重要な論点となります。
たとえば、土地と建物をまとめて購入した場合、売買契約書に土地・建物それぞれの価額が明記されていないケースも少なくありません。
この場合、その後の減価償却費(建物は年々費用として計上できる)や、将来の売却時の取得原価の計算に影響が出るため、適切に按分(あんぶん=比率で割り振ること)する必要があります。
よく使われる按分方法として、
①固定資産税評価額の比率による按分
②不動産鑑定士による鑑定評価額の比率による按分
の二つがあります。
固定資産税評価額は市区町村が算定したもので入手しやすい一方、3年ごとにしか見直しがないという欠点があります。
商業ビルなど収益性の高い物件では、鑑定評価額を用いた方が実態に即した区分が可能です。
なお、令和2年の東京地裁判決では、鑑定評価額による按分の合理性が認められており、実務でも活用が進んでいます。
また、建物の中でも「建物本体」と「建物附属設備(エレベーター・空調設備など)」は法定耐用年数が異なるため、原則として取得価額を区分して計上します。
区分方法が不明な場合は、工事費の割合や固定資産税評価基準の再建築費評点数を活用する方法があります。
2. 相続・贈与で不動産を受け取るときの注意点
不動産の相続・贈与には、節税に活用できる制度がある一方で、要件を満たさないと思わぬ課税が生じることがあります。
■ 小規模宅地等の特例(最大80%評価減)
相続税の計算において、被相続人(亡くなった方)が居住していた自宅の土地(宅地)は、一定の要件を満たせば評価額が最大80%減額される「小規模宅地等の特例」が適用できます。
330㎡までが対象で、相続人が同居していること、または引き続き居住・保有し続けることなどが条件です。
注意が必要なのは、「二世帯住宅」の場合です。
区分所有登記(各フロアを個別に登記する方式)がされている場合、被相続人が居住していた部屋と相続人が居住していた部屋は別々に扱われ、相続人が別フロアに居住していても「同居」とみなされません。
その結果、特例が適用できないケースが生じます。二世帯住宅を検討されている方は、区分所有登記とするか、非区分所有(登記を一本化)とするかで相続税の負担が大きく変わる点に注意が必要です。
■ 老人ホーム入居後の自宅敷地
被相続人が介護のため老人ホームへ入居し、自宅が空き家になっていた場合でも、要介護認定を受けており、空き家となった自宅を他に貸し出したり別の用途に使っていなければ、小規模宅地等の特例を受けられる場合があります。
■ 代償分割と税務
相続人が複数いる場合、1人が不動産を相続し、その代わりに他の相続人へ現金などを支払う「代償分割」という方法があります。
この場合の相続税計算では、代償財産の金額を単純にそのまま使うのではなく、相続税評価額と時価の差を調整する計算式が用いられます。
また、不動産を代償財産として渡した場合には、その時点での譲渡所得税が発生することもあるため、代償分割を行う際は十分な事前シミュレーションが必要です。
3. 不動産を「保有」しているときの税務ポイント
不動産を所有・賃貸している期間にも、さまざまな税務上の論点があります。
■ 土地に建物を建てる場合の借地権問題
法人が土地を他人に貸し、建物を建てさせるケースでは、通常「権利金(借地権料)」を収受するのが慣行とされています。
権利金を受け取らずに貸すと、税務上は「贈与があった」とみなされ、法人に「認定課税」がなされるリスクがあります。ただし、「定期借地権」については権利金収受の慣行がないため、認定課税の対象とはなりません。
また、権利金を収受しない場合でも、「無償返還の届出書」を税務署に提出することで、認定課税を回避できる仕組みがあります。
この届出書が提出され、かつ適正な地代の支払いがある(賃貸借と認められる)土地の相続税評価額は、自用地評価額の80%で評価されます(20%減額)。※
※地代が無償の場合は100%評価のままとなります。
■ 賃貸不動産の損益通算
不動産所得(家賃収入から経費を引いた金額)に損失が生じた場合、給与所得などの他の所得と合算(損益通算)して税金を軽減できる場合があります。
ただし、海外の中古建物を活用した節税スキームについては、特例により損益通算が制限されているケースもあります。
4. 不動産を「売却」するときに知っておきたい制度
不動産を売却するときは、「いくらで取得したか」が重要です。取得価額が不明な場合、売却価額の5%を取得費とする概算取得費で計算することになり、税負担が重くなりがちです。
■ 相続した不動産の取得費加算特例
相続によって取得した不動産を、相続開始後3年10か月以内に売却した場合、その相続において支払った相続税の一部を「取得費」に加算できる特例があります。
これにより、譲渡所得(売却益)を圧縮し、所得税の負担を軽減できます。
■ 居住用財産(自宅)の3,000万円控除
自宅を売却した場合には、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例(居住用財産の3,000万円特別控除)があります。
ただし、以前に居住していた家屋でも、居住しなくなった日から3年を経過する年の12月31日までに売却しないと適用外となるなど、細かい要件があります。
また、自宅と敷地の所有者が異なる場合(例:夫が土地、妻が建物を所有)でも、一定の条件下で控除を受けられます。
■ 買換え特例の活用
事業用資産や居住用財産を売却して、新たに不動産を購入する「買換え」を行う場合、売却益への課税を将来に繰り延べる「買換え特例」が利用できる場合があります。
対象となる物件や条件が細かく定められているため、適用前に専門家への相談が不可欠です。
5. 相続税の財産評価と「通達評価額」の考え方
相続税の計算において、不動産は「財産評価基本通達」という国税庁が定めたルールに基づいて評価されます。
一般的に、通達による評価額(路線価方式など)は実際の時価より低くなることが多く、節税効果があります。
一方で、令和4年4月の最高裁判決では、相続直前に多額の借入金で不動産を購入し、通達評価額と時価の乖離が著しいケースでは、通達評価ではなく鑑定評価額で課税することが認められました。
これにより、節税目的での不動産購入を「行き過ぎた節税」として否認されるリスクが注目されています。
ただし、この最高裁判決はあくまで特別な事情がある場合の話です。
通常の相続で不動産を取得し、相続税の支払いのために売却した場合など、合理的な理由があれば通達評価額での申告が認められます。通達評価額と時価に差があるだけでは、直ちに問題にはなりません。
また、道路より低い位置にある土地や、高低差がある土地など、利用価値が著しく低下している宅地については、評価額から10%を控除できる特例もあります。
自分の土地が特別な事情を抱えている場合は、見落とさずに専門家へ相談しましょう。
令和8年度の税制改正により改正内容(5年ルール)が追加されました。
対象となる不動産:
被相続人等が相続開始前(または贈与前)5年以内に対価を伴う取引(売買・代物弁済・負担付贈与等)により取得または新築した一定の貸付用不動産(賃貸マンション・アパート等)
新しい評価方法:
原則:課税時期における通常の取引価額(時価)で評価
簡便法(課税上の弊害がない限り):取得価額を基に地価の変動等を考慮して計算した価額の100分の80(80%)で評価
被相続人等が取得等をした貸付用不動産に係る取得価額を基に地価の変動等を考慮して計算した価額の80%に相当する金額となります。
まとめ:不動産税務は「事前の相談」が鍵
不動産の組替えに関する税務は、取得・相続・贈与・保有・売却のそれぞれの段階で多くの論点があります。
特に、
①土地と建物の按分方法
②小規模宅地等の特例の要件(二世帯住宅の区分所有登記の有無など)
③代償分割の際の税務処理
④相続した不動産の売却時の取得費加算特例
⑤居住用財産の3,000万円控除の適用要件
──これらは実務上の頻出テーマです。「知らなかった」では済まない高額な税負担を避けるため、不動産取引を行う際は事前に専門家へ相談することを強くお勧めします。
【免責事項】
本記事は、一般的な情報提供を目的として作成したものであり、個別の税務相談の代替となるものではありません。税務上の取扱いは個々の事情により異なる場合があります。実際の不動産取引や相続に際しては、必ず税理士・弁護士などの専門家にご相談ください。なお、本記事の内容は令和7年10月1日現在施行の法令・通達に基づいています。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


