不動産購入時の土地建物按分方法|原則と4つの算出方法を徹底解説
投稿日:2026年03月02日
4時起き税理士の丸山です。今回は、不動産購入時の土地建物按分方法についてです。

不動産を購入した際の土地と建物の価格按分は、減価償却費と消費税額を左右する極めて重要な論点です。
結論として、原則は売買契約書の記載に従うことです。
契約書に内訳がない場合のみ、合理的な基準による按分が必要となります。
本記事では、原則と4つの算出方法を実務目線で整理します。
1. 事実関係の整理
不動産の売買価格は「土地」と「建物」を一体で表示されることが一般的です。
しかし税務上は明確に区分されます。
- 土地:減価償却不可、消費税非課税
- 建物:減価償却可、消費税課税対象
したがって、按分結果によって毎年の減価償却費と消費税額が確定します。
【原則】売買契約書の記載に従う
① 金額が明記されている場合
契約書に
- 土地:○○万円
- 建物:○○万円
と明記されていれば、その金額をそのまま採用します。
税務上は、当事者間で合理的に合意された価格が尊重されます。
この段階で、著しく不合理でない限り、契約書に記載がある金額が大前提として認めれられます。
② 消費税額のみ記載されている場合
土地は非課税であるため、消費税額は建物価格にのみ課税されています。
計算式
消費税額 × 110 ÷ 10 = 建物の税込価格
例:
- 消費税額:200万円
200万円 × 110 ÷ 10 = 2,200万円
→ 建物(税込)2,200万円
→ 残額が土地価格
この逆算方式は実務で頻繁に使われます。
2. 税務上の論点
契約書に土地建物の内訳も消費税額の記載もない場合、総額のみの契約となります。
その場合は、客観的かつ合理的な基準で按分する必要があります。
恣意的な按分は税務調査で否認されるリスクがあります。
按分方法は主に次の4つです。
① 固定資産税評価額による按分(最も一般的)
最も実務で採用される方法です。
方法
- 市区町村発行の固定資産評価証明書を取得
- 「評価額」(※課税標準額ではない)を確認
- 土地・建物の評価額割合で総額を按分
例
- 土地評価額:1,500万円
- 建物評価額:500万円
- 合計:2,000万円
割合
- 土地75%
- 建物25%
売買価格4,000万円の場合
- 土地:3,000万円
- 建物:1,000万円
メリット
- 公的数値で客観性が高い
- 税務否認リスクが低い
- 計算が簡便
基本戦略として最優先で検討すべき方法です。
② 公示価格(路線価)から算出する方法
土地価格を先に算出し、残額を建物価格とします。
計算式
(相続税路線価 ÷ 0.8)× 土地面積 = 土地価格
※相続税路線価は公示価格の約80%水準。
特徴
- 都心部では土地価格が高く出やすい
- 建物価格が低くなりやすい
- 減価償却費は小さくなる可能性
キャッシュフロー重視型の投資には不利になる場合があります。
③ 再調達原価による算出
「今同じ建物を建てたらいくらかかるか」を基準とします。
方法
- 国税庁公表の「建物の標準的な建築価額表」を使用
- 構造別単価 × 延床面積
- 経過年数分の減価を反映
特徴
- 築古物件では建物価格が極端に低くなる場合あり
- 場合によってはゼロ評価に近づく
築30年超の木造物件では、実務上かなり低い評価になるケースがあります。
築古高利回り物件では注意が必要です。
④ 不動産鑑定評価による按分
不動産鑑定士に評価を依頼する方法です。
- 費用:10万〜20万円程度
- 最も精緻な算定方法
適しているケース
- 1億円超の高額物件
- 特殊用途物件
- 税務調査リスクが高い案件
費用対効果を慎重に検討する必要があります。
3. 不動産経営への影響
按分は購入後の収益構造を決定します。
① 減価償却費への影響
建物価格が高いほど、
- 毎年の減価償却費が増加
- 課税所得が圧縮
- 手元キャッシュが増加
例:
建物価格1,000万円と2,000万円では、
法定耐用年数20年なら
- 年50万円差
10年間で500万円の差になります。
② 消費税への影響
売主が課税事業者の場合、
- 建物価格が高いほど消費税額増加
- 買主が課税事業者なら還付対象
- 免税事業者なら負担増
法人化※しているか否かで戦略が変わります。
※売主の消費税の納税義務により変わります。
4. 想定されるリスク
① 恣意的按分による否認
合理的根拠なく建物価格を過大計上すると、
- 減価償却費否認
- 過少申告加算税
- 延滞税
が発生する可能性があります。
② 売主との利益相反
売主が課税事業者の場合、
- 建物価格が高い
→ 売主の納税額増加
そのため建物価格を低く設定したがる傾向があります。
契約段階での交渉が極めて重要です。
5. 戦略的判断のポイント
① 契約前に按分を設計する
契約後の変更は困難です。
価格交渉段階で土地建物内訳を確定させることが最重要です。
② 投資目的別に戦略を変える
- 短期CF重視 → 建物価格を高めに
- 長期保有型 → 安全性重視で固定資産税評価額基準
③ 法人化との接続
法人で購入する場合:
- 消費税還付戦略
- 役員報酬との所得分散
- 相続対策としての資産圧縮
按分は単独論点ではなく、法人化・承継設計と連動させる必要があります。
まとめ
不動産購入時の土地建物按分は、
- 原則は契約書記載を採用
- 記載がなければ合理的基準で按分
- 固定資産税評価額(最有力)
- 路線価方式
- 再調達原価方式
- 不動産鑑定
そして最も重要なのは、
「購入前に戦略を決めること」
按分は単なる計算ではなく、
減価償却・消費税・法人化・相続設計まで波及する経営判断です。
価格の1%の差が、10年後に数百万円の差を生みます。
不動産オーナーにとって、
按分は“税務処理”ではなく投資設計そのものです。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


