その値上げ交渉、数字の裏付けはありますか?──中小企業の値決めを成功に導く4つの視点

投稿日:2026年05月01日

その値上げ交渉、数字の裏付けはありますか?──中小企業の値決めを成功に導く4つの視点

朝4時起きの名古屋の税理士丸山です。

原材料費、人件費、エネルギーコスト

──上昇圧力は一向に止まりません。

「値上げしないと利益が残らない。でも、取引先を失うのも怖い」。

多くの中小企業の経営者の方から、そんなお声をよくお聞きします。

 

本日は、値上げ交渉で“押し負け”しないために、

①値上げ幅を裏付ける原価の考え方、

②赤字顧客・赤字製品を可視化する仕組み、

③顧客離反を防ぐ依頼文書の書き方、

④実行力を生むロードマップ、

この4つの視点を整理してお伝えします。

本日の目次

1. 粗利ではなく「全社利益」で値上げ幅を算定する

2. 「利益一覧表」で赤字顧客・赤字製品を炙り出す

3. 顧客離反を防ぐ「価格改定レター」の書き方

4. ロードマップで値上げ活動に推進力を生む

1. 粗利ではなく「全社利益」で値上げ幅を算定する

「粗利が出ているから大丈夫」

──この言葉ほど値上げ交渉を弱らせるものはありません。

 

粗利は「売価-材料費」あるいは「売価-材料費-加工費」で計算されることが多く、間接費・販管費・減価償却などの“見えないコスト”がすっぽり抜け落ちています。

管理会計ではP(売価)=V(変動費)+F(固定費配賦)+G(利益)で捉え、製品1個あたりの“全社原価”を土台に値決めを組み立てるのが基本です。

 

具体例でみましょう。

売価100円/個、材料費30円、加工費20円、間接費配賦30円の製品Aの場合、粗利は70円(売価-材料費)でも、全社利益はわずか20円です。

ここを押さえずに「10%値引きしてもOK」と判断してしまえば、即赤字に転落します。

値上げ幅を決める際は、必ず“死守ライン=全社原価”を明確にしておくこと。

これが交渉の場で粘り腰を発揮する最大の武器になります。

2. 「利益一覧表」で赤字顧客・赤字製品を炙り出す

次に威力を発揮するのが「顧客別・製品別 利益一覧表」です。

縦に顧客・製品、横に売価・全社原価・1個あたり利益・販売数量・年間利益額を並べるだけで、驚くほど多くの発見があります。

 

たとえば、A社は年間+650万円の黒字、B社は+25万円の薄利、C社は▲400万円の赤字──と会社全体の損益を色分けすれば、「まずC社のどの製品が悪玉か」が一目で分かります。

赤字の元凶製品を特定できれば、打ち手は4つに整理できます。

①営業戦略(取引の濃淡調整)、②製品戦略(ディスコンと新製品開発)、③価格戦略(値上げ・据え置き・お断り価格)、④コストダウン戦略。

値上げはこのうちの一手段に過ぎず、戦略全体の中で位置づけてこそ本当の効果を発揮します。

3. 顧客離反を防ぐ「価格改定レター」の書き方

「値上げの話をしたら、取引先が離れてしまうのでは」──この不安に応える鍵は、“正式文書”の使い方にあります。

代表取締役社長名で発行し、社印を押印した「価格改定のお願い」を、事前の口頭打診とセットで届けましょう。

これだけで交渉の格が一段上がります。

 

文書には、①10年以上価格据え置きで企業努力を続けてきた経緯、②仕入価格・人件費・燃料代の上昇率(例:2005年を100とした場合、2022年の燃料代は250と2.5倍)、③新価格の適用日(例:4月1日納品分より)、この3点を必ず盛り込みます。

数字で窮状を示し、期限を切ることで、交渉がダラダラと長引くのを防げます。

顧客離反を防ぐのは“情緒”ではなく“説明責任を果たす姿勢”。

淡々と、しかし筋道立てて伝えることが、結果的に取引先の納得感につながります。

4. ロードマップで値上げ活動に推進力を生む

最後は実行力です。

頭の中で描いているだけの値上げ計画は、9割実現しません。

必ず紙に書き出し、新価格の適用日から逆算したロードマップを作成しましょう。

 

推進力を生むコツは2つです。

コツ①収益改善見込み金額を明記する。

たとえば「値上げ成功時+3,000万円/年」と書くことで、交渉の全体像が見え、担当者のモチベーションにも直結します。

 

コツ②担当欄は“個人名”で書く。

「営業部」ではなく「鈴木」と書く。

責任の所在を明確にすることで、先延ばしの温床を断ちます。

 

①利益一覧表の分析、②泣き寝入りリストの整理、③価格交渉カード作成、④口頭での事前打診、⑤正式文書発送、⑥本格交渉、⑦客先承認、⑧注文書単価確認──月次でこの手順を回せば、半年〜1年でゴールに辿り着けます。

◆ おわりに ─ ともに未来を描く

当事務所では、税務申告はもちろん、値決め・管理会計の視点から「会社に残る利益を最大化する」ご支援を強みとしております。

粗利ではなく全社利益で判断するための原価体系の構築、顧客別・製品別 利益一覧表の作成、価格改定文書のレビューまで、顧問契約の中で伴走いたします。

経営理念「ともに未来を描く」のとおり、数字と経営者の決断を橋渡しし、値上げの一歩をともに踏み出しましょう。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別具体的な経営判断を行うものではありません。実際のご判断に際しては、税理士・会計士等の専門家へご相談ください。

 

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この記事の監修

丸山会計事務所 税理士 代表 丸山和秀

税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)

税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。

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