月次決算とは?読み方やメリットを分かりやすく徹底解説
投稿日:2024年07月30日
企業経営をしていると、「売上は伸びているのに、資金繰りが厳しい」、「従業員も増えて順調だと思っていたら、実は赤字だった」ということが多々あります。
こうした課題を解決するために、月次決算の実施が不可欠です。月次決算とは、毎月おこなう決算のことで、短期間で経営状況を把握できるため、迅速な意思決定が可能になります。
この記事では、月次決算の読み方、年次決算との違い、メリットなどを分かりやすく解説します。
今後の経営に活かすポイントも解説しますので、ぜひ最後までお読みください。
目次
1.月次決算の読み方とは?
月次決算は「げつじけっさん」と読みます。月次とは、「毎月」や「月ごと」という意味です。
また、月次決算を読む際には、「利益は出ているか」「資金繰りは問題はないか」という2つの観点が重要です。
「利益は出ているか」は損益計算書で、「資金繰りは問題はないか」は簡易的に貸借対照表で確認しましょう。
▶「前月」「前年同月」「予算」と比べる
月次決算の基本は、当月の数字と「前月」「前年同月」「予算」とを比べることです。
当月分だけでなく、過去の数字や予算と比べることで「異常値」を発見しやすくなります。
たとえば、今月の売上高が1,000万円という事実だけでは、多いのか少ないのか分かりません。
【比較例】
当月の売上高 | 1,000万円 |
前月の売上高 | 800万円 |
前年同月の売上高 | 1,200万円 |
売上高予算 | 1,500万円 |
このように比較すると、「前月よりは増えているが、昨年に比べると200万円少ない。」「予算の3分の2しか達成できなかった」とわかりやすくなります。
さらに、「先月よりも売り上げが好調なのは、季節的な要因」や「予算に達していない原因は、予定していた売上が来月にずれたから」など、その原因と対策まで検討しましょう。
なお、1年間の推移がわかる推移表を作成すると、より問題点や改善点を見つけやすくなるため、おすすめです。
最初は難しいかもしれませんが、慣れれば自社でチェックすべきポイントは自然と分かります。そこで、月次決算で最低限チェックすべきポイントを解説します。
▶貸借対照表で見るべきポイント
貸借対照表とは、会社に「お金がいくらあるのか」「借入がいくらあるのか」など、資産や負債の状況を確認できる資料です。
資金繰りに問題がないか確認するため、貸借対照表ではつぎのポイントを必ず確認しましょう。
①現預金
企業経営において、最も重要なものが「現預金」です。利益が出ていても、現預金がなければ会社は倒産します。
前月よりも増えているのか減っているのか、その原因は何か。資金繰りは問題ないか。必ず確認しましょう。
②売掛金
売上に対して、売掛金が多すぎないか確認しましょう。
売掛金は入金予定の金額であるため悪いものではありませんが、多すぎる場合には入金が遅れていることが考えられます。
資金繰りに影響がでますので、早期に回収できるよう取り組みましょう。
③買掛金、未払金
買掛金、未払金の金額は通常、数ヶ月以内に出ていくお金です。支払いに問題はないか、しっかりと把握しておきましょう。
資金繰りが厳しい場合には、支払い期日の見直しも必要です。
▶損益計算書で見るべきポイント
損益計算書とは、「いくら売り上げたか」「どのくらい利益があったか」など、収入や経費、利益の状況を確認できる資料です。
損益計算書で必ず確認するポイントはつぎの通りです。
①売上高、売上原価、粗利益(売上高-売上原価)
粗利管理がしっかりとできている会社は、利益が出ている場合が多いため、月次決算を見る際も「粗利益」は必ず確認しましょう。
粗利を管理すると、仕入れ価格や販売価格を適切に設定し、無駄なコストを抑え、利益を最大化するために役立ちます。
②経費
粗利が高くても、販売費や一般管理費がかかりすぎていて、最終的には赤字である可能性もあります。
このため、経費の確認も欠かせません。無駄なものや予想以上に多い経費がないか確認しましょう。
③営業利益(粗利益-経費)
粗利益から経費を差し引いたものが営業利益です。
粗利益から業務に必要な経費を控除した後の利益ですので、営業活動での収支と言えます。
営業利益がマイナスであれば、営業活動で赤字がでていることになります。必ず確認をして、赤字の場合には必ず原因を探しましょう。
業種や規模によって確認すべきポイントは異なりますが、上記を参考に自社に合った方法を見つけてください。
毎月チェックすると、「売上原価や経費は毎月このくらい」という目安がつかめ、経営状況の把握にも役立ちます。
2.月次決算とは?
そもそも月次決算とは、毎月「損益計算書」や「貸借対照表」を作成し、企業の財務状況を把握するための業務です。
年次決算は1年に1度しかおこなわれないため、経営状況の変化をタイムリーに把握することができません。
このため、より短期間で経営状況を把握するため、月次決算をおこないます。
月次決算に法的な義務はありませんが、会社の経営状況を正確に把握するために重要です。
3.月次決算と年次決算の違いとは?
月次決算と年次決算の1番の違いは、実施頻度です。以下に2つの違いをまとめました。
月次決算 | 年次決算 | |
実施頻度 | 毎月 | 年に1回 |
作成期限 | なし | 期末の翌日から2ヶ月以内 |
目的 | 経営状況の早期把握
法的な義務なし |
1年間の経営成果をまとめる
確定申告や納税額の算定 投資家や債権者への財務状況の開示 |
年次決算は、1年間の経営成果をまとめるもので、法的な義務として作成する必要があります。
一方、月次決算は、毎月の損益状況や事業動向を把握するために作成するもので、任意でおこないます。
年次決算は法的な義務があるため作成しないわけにはいきませんが、月次決算は作業コストを理由に作成しない企業もあります。
しかし、毎月の状況を把握しないまま事業を進めるのはリスクでしかありません。月次決算を作成し、先行きの不透明さを解消しましょう。
4.月次決算を行うメリット
月次決算を行うメリットは主に次の4つです。
▶タイムリーな会社の状況を把握できる
毎月の売上高や利益を具体的な数字で迅速に把握できるため、問題点を早期発見・早期対応できます。
自社製品の生産状況や債権債務の回収支払状況などに関する問題を早期に発見することで、業績悪化のリスクを減らし、資金繰りを改善できるなどの効果も期待できます。
▶本決算の負担が減る
毎月、月次決算することで、本決算の作業量を減らせます。
たとえば、毎月仕訳をおこなうため、本決算時にまとめて作業する必要はありません。
また、月次決算で誤りを発見・修正できるので、本決算時に慌てる必要がなくなります。
▶金融機関からの評価が高まる
月次決算をおこなうことで、経営状況を透明化できます。これにより、金融機関からの融資を受けやすくなったり、融資条件が有利になったりするなどのメリットがあります。
▶節税対策が実施できる
正確な利益予測ができるため、納税予測や適切な節税対策がおこなえます。
たとえば、決算賞与を支給したり、早めに設備を導入したりするなど、前もって対策が可能です。
5.月次決算を今後の経営に活かすポイント
メリットの多い月次決算を経営に活かすポイントを紹介します。
▶月次決算は、スピードが重要
月次決算を経営に活かすためには、スピードが重要です。
処理が遅れると、経営状況を把握するまでに時間がかかり、適切な経営判断が遅れるためです。
どれだけ正確な月次決算でも、数カ月前の数字では経営の判断材料として遅すぎます。
翌月の前半までにはできるように心がけましょう。
また、月次決算が早くできあがれば、たとえ間違っていても、後から修正が可能です。
▶月次決算を早くするための3つのポイント
月次決算を早くするためのポイントを3つ紹介します。
締め日の徹底:事前に請求書や領収書の締め切り日を設け、各部門が準備をスムーズに進められるようにしましょう。
可能であれば、締め日を1〜2日程度前倒しし、遅延が発生した場合にも余裕を持って対応できると理想的です。
マニュアル化する:月次決算には、毎月繰り返される定型的な作業が多く含まれます。定型的な作業はマニュアル化すると、漏れやミスを減らし、作業効率を上げられます。マニュアルには、具体的な手順だけでなく、担当者や必要なツールなども明記しておくと、よりスムーズに作業を進められるのでおすすめです。
早めに取りかかる:月次決算は、月末に作業が集中しがちです。月末まで待ってから作業を始めると、時間がかかり、提出期限に間に合わない可能性があります。このため、月中から少しずつ作業を進め、月末の作業負荷を軽減しましょう。
これらのポイントを意識することで、月次決算を迅速に行い、経営状況をタイムリーに把握できます。
6.まとめ
月次決算は、経営状況を把握し、迅速な意思決定を行うために欠かせないツールです。
タイムリーな会社の状況を把握でき、本決算の負担が減るというメリットがあります。また、金融機関からの評価が高まる可能性があり、節税対策も実施できます。
ぜひ、自社の経営に月次決算を取り入れてみてください。
月次決算など、税務や会計でお困りの際は、丸山会計事務所までお気軽にご相談ください。
この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。
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