その新規事業、片手間で任せていませんか──担当者が動き出す3つの視点
投稿日:2026年08月06日

朝4時起きの名古屋の税理士丸山です。
新規事業のテーマは決まった。
担当者も決めた。
それなのに、半年経っても何も進んでいない──そんなご相談をよくいただきます。
お話をうかがうと、原因はテーマの筋の悪さではなく、たいてい「体制」にあります。
手の空いていた社員に既存業務と掛け持ちで任せた。
責任者を任命したところで社長は安心してしまった。
失敗すれば評価が下がる空気のまま、挑戦しろと言っている。
思いつきの多角化で失敗する会社よりも、この“体制の設計ミス”で止まる会社のほうが、実ははるかに多いのです。
本稿では、経営者が今日から見直せる3つの視点を整理します。
目次
1. 「優秀な人」と「新規事業に向く人」は違う
2. 片手間では絶対に進まない ── 専任・少人数・社長直結
3. 社長がいつ関わるかで、結果は決まる
4. 挑戦のコストは税務で下げられる
1. 「優秀な人」と「新規事業に向く人」は違う
まず疑っていただきたいのが人選です。
既存事業で優秀な人材が、新規事業でも優秀とは限りません。
既存事業で評価されるのは「知識のある人」──製品を知り、手順を知り、正確に速くこなせる人です。
ところが新規事業で必要になるのは「知恵を出せる人」、つまり前例のない場所で柔軟に発想し、自分の頭で答えをつくれる人です。
この二つは、まったく別の資質です。
現場でよくある失敗は、「今いちばん手が空いている人」を回してしまうことです。
ある製造業では、閑散期で余裕のあったベテラン社員を新規事業の担当に指名しました。
ところが半年経って出てきたのは、他社カタログを引き写したような企画書だけ。
彼は既存製品には社内の誰よりも詳しかったのですが、答えのない問いを前にすると手が止まってしまったのです。
能力の問題ではありません。
求められる資質が違う場所に配置してしまっただけです。
判断軸はシンプルで構いません。
「不確実さを面白がれるか」「指示がなくても自分で動けるか」。
この二つを満たす人であれば、社歴も肩書きも問う必要はありません。
人を育てることが、そのまま事業が育つことなのだとお考えください。
2. 片手間では絶対に進まない ── 専任・少人数・社長直結
次に体制です。
ここははっきり申し上げます。
他の職務と掛け持ちのまま新規事業をやらせることは、避けるべきです。
既存業務には締切があり、顧客がいて、やらなければ即座に困る人がいます。
一方で新規事業は、今日やらなくても誰も困りません。
人間は必ず目の前の締切を優先しますから、掛け持ちにした瞬間、新規事業は「余った時間にやる仕事」へ静かに格下げされます。
片手間でできるほど、新規事業はやさしくありません。
とはいえ、中小企業に大人数を割く余裕はないはずです。
ここで誤解されやすいのですが、新規事業は工数や人手で進む仕事ではありません。
2〜3人でスタートし、段階に応じて必要な人を最小限だけ足していく。
この形で十分です。
むしろ人数を増やすほど固定費が重くなり、判断も遅くなります。
2〜3人の専任のほうが、10人の兼務に勝ちます。
そして置き場所です。
既存の営業部や製造部の下にぶら下げると、その部門の評価軸に飲み込まれます。
今期の予算、今月の数字──既存部門の物差しで測られた瞬間、新規事業は「コストのかかる厄介者」になります。
スタート段階では社長直結の独立した部門とし、身軽に動ける形にしてください。
人数は少なく、権限は近く。
これが中小企業の勝ち筋です。
3. 社長がいつ関わるかで、結果は決まる
三つ目は、社長ご自身の関わり方です。
よくあるのが、責任者を任命した時点で新規事業開発が終わったと思ってしまうケース。
これでは進まないばかりか、人と金と時間の無駄遣いになります。
特に効いてくるのが「いつ関わるか」です。
多くの社長は、試作品ができて、いざ売るという段階、つまり生産やマーケティングの局面になってから口を出し始めます。
しかし、これでは遅すぎます。
方向性が決まるのはその手前──何を狙うのかを構想し、設計している段階です。
売り方の議論に呼ばれた時には、勝負はほぼ決まっています。
もう一つが、失敗の扱いです。担当者は皆、失敗を恐れています。
ルーチン業務と同じ評価軸のままでは、「何もしないこと」が最適解になってしまう。
「失敗してもいいからやりなさい、責任は自分がとる」──この一言を社長が言えるかどうかで、担当者の動き方は変わります。
ただし、度量と放任は違います。
同じ失敗を何度も繰り返すなら適性の問題ですし、進捗は頻繁に、厳しく見てください。
丸投げでもなく、細かい口出しでもない距離感です。
併せて、ノウハウを出した人が報われる評価と処遇になっているかも点検してください。
知恵は会社の金庫にではなく、一人ひとりの人にくっついています。
出した人が損をする制度のままでは、知恵は組織に出てきません。
4. 挑戦のコストは税務で下げられる
最後に税務の話です。
専任者を置き、育て、試作を重ねる。
この体制づくりには先行投資が伴いますが、コストは制度を使って軽くできます。
新製品や新技術の研究開発にかかった費用は、試験研究費の税額控除の対象になり得ます。
外注費や材料費だけでなく、専門的知識をもって専ら試験研究の業務に従事する方の人件費も対象に含まれ得ます。
「専任者を置く」という判断は、税務上も理にかなっているわけです。
兼務の方でも、従事期間や従事状況の区分など一定の要件を満たせば対象になり得ますが、要件は細かく、立証の手間もかかります。
専任のほうが明快です。
また、立ち上げ期に生じた赤字は、青色申告であれば欠損金として繰り越し、将来の黒字と相殺できます。
今期の赤字は「捨て金」ではなく、事業が軌道に乗った先で効いてくる資産です。
教育訓練費についても、要件を満たせば優遇の対象となる制度があります。
ただし、これらの制度は年度ごとに要件や上限が変わります。
使えたはずの制度を決算後に知る──これがいちばん惜しいパターンです。
投資を決める前にご相談ください。
おわりに ── ともに未来を描く
当事務所では、月々の顧問業務を通じて数字を見るだけでなく、新規事業の事業計画づくりや、その一歩を踏み出すかどうかの経営判断の壁打ち役までお手伝いしています。
「専任を一人置くと、月次はどこまで耐えられるのか」──税務と資金繰りの両面から、社長と一緒に考えます。
私たちが大切にしているのは「ともに未来を描く」という理念です。
新しい挑戦に踏み出すその横で、数字の裏付けとともに背中を押せる存在でありたいと考えています。
どうぞお気軽にご相談ください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別具体的な経営判断を行うものではありません。実際のご判断に際しては、税理士・会計士等の専門家へご相談ください。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


