高額・繰り返しの無申告に対する無申告加算税の加重措置 | 令和5年度税制改正大綱の概要

投稿日:2023年03月15日

令和4年12月16日に令和5年度税制改正大綱が公表されました。さまざまな内容の改正案が盛り込まれていますが、その中に、納税環境整備の適正化として「無申告加算税の加重措置の見直し」の案があります。

 

所得が発生しているにも関わらず、申告・納税をしない行為は脱税です。

それを放置することは、正しく納税している方との不公平感を強くするとともに、申告納税制度の根幹を揺るがしてしまいます。

 

このブログでは、「無申告加算税の加重措置の見直し」に関する令和5年度税制改正大綱の概要と、そもそも無申告の場合にどのようなペナルティがあるかを合わせてご紹介します。

 

1税負担の公平感を大きく損なうことを防ぐ趣旨

今回の税制改正大綱では「高額な無申告」と「繰り返し行われる無申告」に対する無申告加算税の負担を加重する内容です。税の公平感を損なうケースにはさまざまな場合がありますが、特に無申告は「まったく税負担をしない」ことであり、また、所得があることを国税が把握しにくい状況にすることから、特に不公平感を強くしているといえます。

 

無申告となるケースには、以下のような場合が考えられます。

  • 所得が出ているが、申告が必要であることを知らなかった場合(単なる知識不足)
  • 申告しようとしたが、申告手続が煩雑で面倒になってしまった場合
  • 所得を隠したくて申告しない場合

 

どのような場合でも「高額な所得があるにも関わらず無申告」の場合は、税負担の金額自体が不公平となりますし「繰り返し行われる無申告」のような悪質の場合は申告納税制度の根幹を揺るがすため、ペナルティを強く課したいところです。

今回の改正案ではこうした趣旨により「高額な無申告に対する無申告加算税の加重措置」および「一定期間繰り返し行われる無申告に対する無申告加算税等の加重措置」の2点が盛り込まれました。それぞれご紹介します。

 

2.高額な無申告に対する無申告加算税の加重措置

 

税務調査後に期限後に申告書の提出、決定等があった場合には、そこで納付すべき税額に一定の割合を乗じて計算する無申告加算税がかかります。この割合が、今回の改正案では変更・加重されています。

 

【概要】

税務調査後に期限後申告書などを提出する場合の無申告加算税の割合

増差税額 50万円以下 50万円超300万円以下 300万円超
改正前 15% 20%
改正案 15% 20% 30%

 

調査通知後、更正予知前に期限後申告書に基づく無申告加算税の割合

増差税額 50万円以下 50万円超300万円以下 300万円超
改正前 10% 15%
改正案 10% 15% 25%

 

税務調査の連絡前に、無申告分を期限後申告していれば、5%の無申告加算税となりますので、忘れている方は早めに申告をすることをお勧めします。

 

 

【適用時期】

令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税から。

 

変更箇所は、増差税額が300万円超の部分に無申告加算税の割合を30%へ引き上げる点です。

増差税額が300万円超ということは、所得としてはさらに高額な金額を申告していないことであり、申告が必要であると知らなかったとは考えられず、悪質であるケースがほとんどであると想定されます。ペナルティを強化し、税の公平を図る趣旨があります。

 

3.一定期間繰り返し行われる無申告に対する無申告加算税等の加重措置

 

無申告の期間が続く場合、または繰り返す場合は、税額に関わらず悪質といえます。このような一定期間繰り返し行われる無申告に対しても、ペナルティを強化する案となっています。

 

【概要】

前年及び前々年に無申告の方が、さらに無申告を重ねて課されるペナルティが10%加重されます。対象は無申告加算税と重加算税です。

 

  • 無申告加算税

 

先ほどの表を再掲します。

増差税額 50万円以下 50万円超300万円以下 300万円超
改正前 15% 20%
改正案 15% 20% 30%

 

こちらが10%加重されて、以下になります。

増差税額 50万円以下 50万円超300万円以下 300万円超
改正案 25% 30% 40%(*)

*300万円超の部分まで10%が加重されるかどうかは、現在明確ではありません。

 

  • 重加算税

現行税額の40%から、50%となる予定です。

 

【適用時期】

令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税から。

 

【適用除外】

過少申告加算税、源泉徴収等による国税に係る不納付加算税および重加算税は、この見直しの対象から除外されます。

 

ただし現行でも、過去5年以内に無申告加算税等が課されたことがある場合には10%加重される措置があります。今回の改正案では連続した3年という点で異なり、こちらにすべて変更になるのではなく、いずれかが適用されることになります。

 

4.無申告が見つかるとかかる「ペナルティ」は?

 

そもそも無申告が見つかるとどのようなペナルティがかかるのか、簡単にまとめました。

 

・無申告加算税

無申告加算税は、当初の申告が無い状態で申告が期限後になった場合、そして無申告であることを国税庁に指摘された場合にかかります。今回の改正案の対象です。

調査で指摘された場合と、調査通知以後、更正予知前、そして自主的に申告した場合では比率が異なります。現行では増差税額が50万円以下であれば、指摘された場合は15%、調査通知以後、更正予知前は10%、自主的に申告した場合は5%です。ペナルティを軽減するためには、自主的に申告しましょう。

 

・過少申告加算税

当初の申告があり当初の申告に誤りがあることに気が付き、再度申告書を自主的に提出することにより、税額が発生する場合の加算税となります。

現行法では、税務調査で指摘があり、修正申告をする場合には10%(税額50万円超の場合には、50万円超の部分には15%)、調査通知日から、更正予知前までに修正申告書を提出した場合には5%(税額50万円超の場合には、50万円超の部分には10%)調査通知前に自主的に修正申告書を提出した場合には、過少申告加算税の対象にはなりません。

そのため間違いに気が付いた場合には、自主的に修正申告を行いましょう。

 

 

・重加算税

悪意をもって隠蔽した場合に課される加算税で、今回の改正案の対象です。悪質であるため、ペナルティの割合は高くなります。

例えば無申告に対しての重加算税は、通常の無申告加算税の割合ではなく、それに代えて税額の40%です。重加算税は、無申告加算税だけでなく過少申告加算税、不納付加算税に対してもかかりますが、無申告がもっとも悪質と判断されて課される比率が高いものとなっています。前述したように現行では、重加算税にさらに10%を加重されるケースがあります。

 

・延滞税

遅延利息にあたるもので、納付日までの日数に応じて計算されます。期限から納付日が遅くなればなるほど延滞税は多くなります。過失で申告・納税していない場合は、気付いたら一刻も早めに申告しましょう。

 

5.まとめ | 無申告に気付いたら早めに申告しましょう

 

以上、高額・繰り返しの無申告に対する無申告加算税の加重措置に関して、令和5年度税制改正大綱の概要をご紹介しました。

 

高額な所得を申告せずに後に指摘された場合、本税だけでなくペナルティも高額になり、大きな負担となります。自主的に申告・納税すればペナルティを軽減できるため、無申告に気付いている方は少しでも早く申告をしましょう。

無申告に関する申告・納税やペナルティなど、税務や会計でお困りの際は、丸山会計事務所までお気軽にご相談ください。



この記事の監修

丸山会計事務所 税理士 代表 丸山和秀

税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)

税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。

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