その赤字子会社、「救う」べきか「たたむ」べきか?
投稿日:2026年07月05日

朝4時起きの名古屋の税理士丸山です。
グループ経営をしていると、業績の振るわない子会社がどうしても出てきます。
気づけば債務超過、親会社からの貸付金は膨らむ一方……。
「もう一度立て直したい」という思いと、「いっそ整理してしまった方がいいのでは」という迷いが交錯します。
やっかいなのは、どちらを選んでも“税金の落とし穴”が待っていること。
良かれと思って債権放棄をしたら、子会社に多額の課税が発生してしまった——そんな笑えない話も珍しくありません。
今日は、債務超過の子会社を立て直す/整理するときの代表的な4つのスキームを、経営者が意思決定する順番に沿って整理します。
本稿でお伝えしたい視点は3つ。
①「救う」か「たたむ」かでスキームは分かれる、
②どの手を打っても“債務免除益課税”という共通の落とし穴がある、
③100%子会社かどうかで取扱いが大きく変わる、です。
【目次】
1. まず決めるべきは「再生」か「清算」か
2. 救うなら——債権放棄・増資・DESの使い分け
3. たたむなら——第2会社方式と「債務免除益」の壁
4. 100%子会社なら使える“切り札”
1. まず決めるべきは「再生」か「清算」か
赤字子会社への対応は、大きく「事業を残して立て直す(再生)」か、「事業を受け皿に移して旧会社をたたむ(清算)」かに分かれます。
判断の軸はシンプルで、その事業に将来のキャッシュを生む力が残っているかどうか。
残っているなら再生スキーム(債権放棄・増資・DES)で債務超過を穴埋めし、事業価値はあるが債務が重すぎて旧会社のままでは動けないなら、良い事業だけを切り出す第2会社方式、というのが大きな見取り図です。
ここを曖昧にしたまま「とりあえず増資」「とりあえず債権放棄」と動くと、税負担だけが膨らんでしまいます。
最初に“方針”を決めてから手を動かす。
これが鉄則です。
2. 救うなら——債権放棄・増資・DESの使い分け
最もシンプルなのは、親会社が貸付金を放棄する債権放棄です。
しかしここに最初の落とし穴があります。
親会社側の放棄損は、原則「寄附金」として損金算入が制限され(損金算入が認められる法人税基本通達9-4-2の要件は、実務上ハードルが高いのが実情です)、一方で子会社側には同額の「債務免除益」が立ちます。
繰越欠損金が足りなければ、その免除益に課税されてしまうのです。
増資(または払い込んだ資金で親会社への借入を返す擬似DES)なら、債務免除益は生じません。
ただし資本金等の額が増えるため、住民税の均等割や事業税の資本割が増加します。
資本金が1億円を超えると外形標準課税の対象になったり、中小企業向けの優遇税制が使えなくなったりするため、増資と同時に無償減資を組み合わせ、資本金を圧縮するのが定石です。
DES(貸付金を子会社へ現物出資する手法)は、完全支配関係がなければ非適格現物出資となり、親会社に現物出資損、子会社に債務消滅益(時価との差額)が発生します。
経済効果は債権放棄に近く、税務上の論点も共通するため、「どの手なら子会社に課税が出ないか」を必ずセットで検討してください。
3. たたむなら——第2会社方式と「債務免除益」の壁
事業に価値はあるが債務が重すぎる——そんなときに使われるのが第2会社方式です。
受け皿となる新会社へ、事業とそれに見合う負債だけを移し、残った負債を抱える旧会社を特別清算で消す手法で、新会社は債務超過が解消された状態でスタートできます。
ポイントは2つ。
1つは、親会社が負担する子会社整理損失を損金にできるかは法人税基本通達9-4-1で判断され、「旧会社と新会社に同一性がないこと」が決め手になること。
社名・役員構成・資産内容・従業員などを総合的に見て“同じ会社の看板の掛け替え”とみなされないよう、実態を変える必要があります。
もう1つは、清算時に生じる債務免除益への対処です。
清算中に終了する事業年度では、通常は使えない「期限切れ欠損金(特例欠損金)」を損金算入できる特例があり(法人税法59条4項)、これと相殺することで債務免除益への課税を避けられます。
なお、事業譲渡による譲渡益も期限切れ欠損金と相殺できますが、これは“解散の日の翌日以降”に事業譲渡した場合に限られます。
段取りの順番ひとつで結果が変わる、まさに専門家の腕の見せどころです。
4. 100%子会社なら使える“切り札”
子会社が100%(完全支配関係)であれば、グループ法人税制の効果でさらに有利になります。
債権放棄をしても、子会社側の債務免除益は「受贈益」として益金に算入されません(法人税法25条の2)。
また、完全支配関係のある子会社を清算して残余財産が確定すると、その子会社に残った繰越欠損金を親会社へ引き継ぐことができます(法人税法57条2項)。
ただし注意点として、支配関係が生じてから5年を経過していない場合は、繰越欠損金の引継ぎや使用に制限がかかります。
「救う」も「たたむ」も、100%かそうでないかで打ち手と税効果がまるで変わる——ここを取り違えると、せっかくの欠損金を無駄にしかねません。
おわりに
当事務所では、単に税額計算をお引き受けするだけでなく、グループ全体をどう再編し、どの会社を残し、どの順番で手を打つのかという“経営の意思決定”そのものに伴走しています。
赤字子会社の整理は、税務・会社法・会計が複雑に絡み合い、順番ひとつで結果が大きく変わる領域です。
私たちは経営理念「ともに未来を描く」を掲げ、組織再編・事業承継・M&A支援まで含めて、社長の隣で次の一手を一緒に考えます。
気になる子会社がある方は、傷が深くなる前に、ぜひ一度ご相談ください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別具体的な経営判断を行うものではありません。
実際のご判断に際しては、税理士・会計士等の専門家へご相談ください。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


