子会社に眠るその現金、いちばん損をしない戻し方をご存じですか?
投稿日:2026年07月20日

おはようございます。
朝4時起きの名古屋の税理士丸山です。
グループで事業を営んでいると、いつの間にか子会社の預金口座にまとまった現金が積み上がっている——そんな会社は少なくありません。
本体で新しい設備投資を計画している、別会社の赤字を埋めたい、あるいは後継者へ資産を集約していきたい。
理由はさまざまでも、「子会社に貯まった現金を、どうやって本体(親会社)へ戻すか」という問いは、多くの経営者に共通する悩みです。
やっかいなのは、同じ「現金を戻す」という結果でも、選ぶ手法によって税負担も、将来会社を売るときのコストも変わってくることです。
本稿では、①そもそも課税されるのはどんな場面か、②代表的な3つの戻し方の違い、③見落とされがちな落とし穴、という3つの視点で、資金還流の勘所を整理します。
目次
1. 100%グループなら「動かす瞬間」は非課税——まず全体像を押さえる
2. 3つの戻し方を比べる——配当か、自己株式の買取りか
3. 差が出るのは“あと”——将来の売却課税と外形標準課税
4. 見落とされがちな落とし穴——簿価減額特例と分配可能額
1. 100%グループなら「動かす瞬間」は非課税——まず全体像を押さえる
最初に安心していただきたいのは、親会社が子会社の株式を100%持っている(完全支配関係にある)場合、子会社から親会社へ現金を配当として戻しても、その配当は親会社の課税所得に原則として一切含まれない、という点です。
これは「受取配当等の益金不算入」という制度で、100%グループ内の子会社(完全子法人株式等)からの配当は全額が益金不算入、しかも負債利子の控除も不要です。
つまり、仮に1億円の現金を配当で本体に戻しても、その1億円に法人税がかかることはありません。
「配当には税金がかかる」という個人の感覚のまま考えると、ここを重く見すぎてしまいます。
まずは、100%グループ内の資金移動は“動かす瞬間”にはほとんど課税されない、という前提を押さえておきましょう。
問題は、その先にあります。
2. 3つの戻し方を比べる——配当か、自己株式の買取りか
現金を戻す代表的な手法は次の3つです。
手法A「利益剰余金からの配当」は、いわゆる普通の配当で、もっともシンプル、会社法上の手続きも分かりやすいものです。
手法B「資本剰余金からの配当(資本の払戻し)」は、会計上は資本の払戻しですが、税務上は一部が『みなし配当』、一部が『株式の譲渡対価』として扱われます。
手法C「自己株式の取得」は、子会社が親会社の持つ自社株を買い取り、対価として現金を渡す方法で、税務上はやはり、みなし配当と株式譲渡の組み合わせで捉えます。
ここで重要なのは、100%グループ内であれば、B・Cのみなし配当部分も完全子法人株式等からの配当として全額益金不算入となり、かつ譲渡損益もゼロになる(譲渡収入と譲渡原価が一致する扱い)ため、A・B・Cのいずれを選んでも「その時点の税負担」はほぼ生じない、という点です。
3つとも課税されないなら何でもいい——とはならないのが、次の視点です。
3. 差が出るのは“あと”——将来の売却課税と外形標準課税
3つの手法は、実行した“あと”に2つの差を残します。
1つ目は、親会社が持つ子会社株式の帳簿価額です。
利益剰余金の配当(手法A)では株式の帳簿価額は変わりませんが、資本剰余金の配当や自己株式の取得(手法B・C)では帳簿価額が引き下がります。
将来その子会社株式を第三者に売却する予定があるなら、帳簿価額が高いほど売却益は小さく、税負担も軽くなります。
つまり「いずれ売るかもしれない子会社」なら、帳簿価額を減らさない手法Aが有利に働くことが多いのです。
2つ目は、子会社の「資本金等の額」です。
資本剰余金の配当や自己株式の取得はこの資本金等の額を減らします。
資本金等の額は、外形標準課税(法人事業税の資本割)や住民税の均等割の計算基礎になるため、これを圧縮できると毎年の固定的な税負担が軽くなる可能性があります。
逆に言えば、「資本金等の額が大きすぎて均等割・資本割が重い」という会社では、あえて資本剰余金の配当や自己株式の取得を選ぶ意味が出てきます。
このように、「将来売る予定があるか」「毎年の外形・均等割が重いか」で最適な手法は変わります。
目的から逆算して選ぶことが肝心です。
4. 見落とされがちな落とし穴——簿価減額特例と分配可能額
最後に、実務で必ず確認したい2つの注意点です。
1つは「子会社株式簿価減額特例」です。
これは、親会社が子会社から一定額以上の配当を受け取った場合に、益金不算入とした配当額だけ子会社株式の帳簿価額を強制的に引き下げる、という制度で、多額の配当を予定しているときに効いてきます。
ただし、長期間にわたり100%保有してきた内国子会社のように一定の要件(内国株主割合要件など)を満たすケースでは、この特例の適用は除外されるのが一般的です。
とはいえ、100%未満の子会社や、買収して間もない子会社、海外がからむケースでは話が変わります。
多額の配当を出す前に、適用除外に当てはまるかを必ず確認してください。
もう1つは、そもそも会社法上「配当できる原資(分配可能額)があるか」「適切な決議を経ているか」です。
税務が非課税でも、分配可能額を超える配当は会社法違反になります。
手法の選択以前の土台として、ここを押さえておく必要があります。
結び
当事務所では、単に「配当の申告をする」にとどまらず、グループ全体の資金の流れ、将来の株式売却や事業承継の計画、毎年の外形標準課税・均等割の負担までを見渡したうえで、いちばん有利な資金還流の設計をご提案しています。
子会社に眠る現金は、戻し方ひとつで数百万円単位の差が生まれることも珍しくありません。
組織再編・グループ経営・事業承継のご相談は、ぜひ一度お聞かせください。
私たちは、お客様と「ともに未来を描く」パートナーでありたいと考えています。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別具体的な経営判断を行うものではありません。
実際のご判断に際しては、税理士・会計士等の専門家へご相談ください。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


