【第2回】利益と待遇を超えた「それ以上のもの」とは。「算盤」が先か、「論語」が先か?
投稿日:2026年05月28日

「朝4時起きの税理士、丸山です。」
まだ薄暗い早朝、静寂の中でコーヒーを飲みながら、日中のクライアントとのやり取りを反芻するのが私の日課です。名古屋から東海三県を回り、さまざまな企業の経営者や社員の方々とお会いする中で、ずっと胸の奥で考え続けていることがあります。
それは、「人が組織で輝く理由」についてです。
私自身、ありがたいことに本当に多くの企業の内側を見させていただいています。
その中で、大企業のように潤沢な給与水準や完璧な福利厚生、多くの休日が用意されている企業であっても、なぜか人が定着せず、心が離れてしまう組織があります。
一方で、経営資源が限られた中小企業であり、必ずしも他社と比べて最高の待遇や休日を完璧に用意できているわけではなくとも、社員の皆さんが生き生きと活躍されている企業が数多く存在します。そうした企業を訪問させていただくと、心からの気持ちの良い挨拶で迎えられ、とても丁寧にお話を伺うことができます。
なぜこのような違いが生まれるのでしょうか。
私はお客様の「経営指針発表会」や「経営計画発表会」にも頻繁に参加させていただくのですが、そこで生き生きと輝いている社員さんたちの姿を見るにつけ、一つの共通点に気づかされます。 それは、すべからく「何のためにこの会社が存在しているのか」という理念や存在意義を、経営陣だけでなく社員一人ひとりが深く理解し、日々の業務の中で体現しているということです。必ずしもその企業が100%常に高い利益を出し続けているわけではなくとも、そこには確かな活気と連帯感があります。
まさにそこに、「論語」があるのです。
この現場での実感は、渋沢栄一の著書『論語と算盤』を読み解く上で、極めて重要な示唆を与えてくれます。 渋沢は著書の冒頭で「論語と算盤は、甚だ遠くして甚だ近いものである」と述べ、両者は車の両輪のように不可分であると説きました。そして、行動の基準としては「先に『義(道理・理念)』を考え、その後に『利(利益)』を考える」順序でなければならないと主張しています。
利益を出し、給与を払い、休日を確保する。そうした「算盤(利)」の要素は、生活を支え会社を存続させるために絶対に欠かせないものです。
利益が出れば良い、という単純な話ではありません。 しかし、人が働き、人生の時間を費やす場所には、数字や条件を超えた「それ以上のもの」が確実にあるのではないか。私はそう強く思うのです。
「より高い給料」という算盤だけで人を繋ぎ止めようとすれば、もっと条件の良い会社が現れた時に人は離れていきます。
しかし、「この会社で働く意義は何か」「社会やお客様にどう貢献しているのか」という論語(義)が浸透している企業では、社員はその仕事に誇りとやりがいを見出し、自ら輝き始めます。
税理士として決算書と向き合っていると、いかに経費を抑え、利益を残し、税負担を適正化するかという「算盤」の技術に目を奪われがちになります。
もちろんそれは専門家としての必須の責務です。
しかし、数字を扱う税理士として、そして私自身も一人の経営者として、条件だけでなく人が心から輝ける「それ以上のもの」をどうやって組織に育んでいくのか。答えは簡単ではありませんが、お客様の背中から学びながら、私自身も日々その答えを探し続けている最中です。
次回は、企業や組織を率いる上で欠かせない「智・情・意」のバランスについて、お話ししたいと思います。
窓の外はすっかり明るくなりました。今日もまた、数字の奥にある想いと向き合う一日が始まります。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


