【第5回】堂々と稼ぎ、未来へ活かす。「論語」が教える本当のお金の集め方・散じ方
投稿日:2026年05月31日

おはようございます。朝4時起きの税理士、丸山です。
まだ家族も寝静まっている午前4時。
朝起きて、まず一杯の水を飲み干す。そして手帳に向かい、今日1日の予定に静かに思いを巡らせることから、私の1日はスタートします。
思考が整理されたところで、このブログの執筆に向かうのが毎朝の大切な日課です。
日中、東海三県を回り、実直にものづくりに向き合う製造業の経営者の方々とお会いしていると、皆様が直面している厳しい現実を肌で感じます。
原材料費の高騰や人手不足など急激な環境変化の中で、正直なところ「うちは十分に儲かっている」と胸を張って言える中小企業は決して多くありません。
日々の資金繰りに頭を悩ませながら、それでも従業員の雇用を守り、取引先との義理を果たし、必死に会社を存続させているのがリアルな姿だと思います。
そうした真面目で誠実な経営者の方ほど、どこかで「お金儲けを前面に出すのは卑しいことだ」「自社の利益ばかり主張してはいけない」という遠慮を持たれているように感じます。
本当は適正な価格転嫁(値上げ)をしなければ苦しいのに、相手を気遣って自社の利益を削ってしまう。
そんな姿を見るたびに、私は税理士として少し歯がゆい思いを抱くことがあります。
「利益を求めることは、本当に汚いことなのでしょうか?」
渋沢栄一の『論語と算盤』は、この問いに対して明確な答えを提示してくれます。
江戸時代から「道徳」と「お金儲け」は相反するものだと思われがちでしたが、渋沢は「それは孔子の本来の教えを誤解している」と反論しました。孔子は『論語』の中で「富と貴きはこれ人の欲する所なり」と語り、お金や地位を欲するのは自然な感情だと認めています。否定しているのは「正しい道理を踏まずに得た富(不義の富)」だけなのです。
渋沢栄一はこの教えに基づき、「よく集め、よく散ぜよ」と説きました。
正しい道理に則って社会やお客様の役に立っているのなら、堂々と適正な利益を上げる(よく集める)べきだ。
そして、得た利益を私利私欲のためではなく、社会や従業員、次代のために正しく使う(よく散ずる)こと。この循環こそが大切だというのです。
現代の中小企業にとって、潤沢な利益を「集める」ことは決して容易ではありません。
だからこそ、懸命な努力で生み出したなけなしの利益をどう「散ずる(使う)」かが、企業の未来を左右します。
例えば、限られた資金の中で、従業員の働きやすさを少しでも良くするために環境を整えたり、次なるステップのために小さな設備投資を行ったりする。これこそが、中小企業における尊い「よく散ぜよ」の実践だと思います。
そして、その「散ずる」ための負担を少しでも和らげる手段として、様々な税制が用意されています。
例えば、先端設備等導入計画に基づく投資促進税制や、研究開発税制、従業員の給与を引き上げることで適用される賃上げ促進税制などです。
これらは、企業が利益を未来への投資として「散ずる」ことを国が後押しする仕組みと言えます。
決して余裕があるわけではない中小企業だからこそ、集めた利益をいかに効率よく循環させるかが問われます。自社株の評価額を下げるためだけの場当たり的な節税ではなく、従業員や会社の未来のために活きたお金を使う。私たち税理士の役割は、そうした税制や補助金を最大限に活用し、皆様が未来に向けて正しい算盤を弾くためのサポートをすることだと思っています。
真面目に「論語」を実践している企業にこそ、適正な「算盤」を弾き、堂々と利益を集めていただきたい。そして、そのお金を会社の未来へと繋いでいく。そんなお手伝いをこれからも続けていきたいと、強く感じています。
次回はいよいよ最終回となります。これまでの「論語と算盤」の学びを踏まえ、中小企業経営にどう活かし、企業をどう次世代へ残していくのか、まとめとしてお話ししたいと思います。
外はすっかり明るくなりました。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


