その値上げ幅、“勘”で決めていませんか?―― 科学的に「ちょうどいい価格」を見つける3つの視点
投稿日:2026年08月03日

おはようございます。
朝4時起きの名古屋の税理士丸山です。
原材料費も人件費も上がり続け、「そろそろ値上げしないと利益が残らない」と感じておられる経営者は多いはずです。
ところが、いざ価格を動かそうとすると「いくら上げれば妥当なのか」「お客様が離れてしまわないか」と、つい手が止まってしまう。
値決めは長らく“社長の勘と経験”に委ねられてきましたが、いまはもう少し科学に近づけることができます。
本稿では、①値上げ幅を“価値”から逆算する考え方、②適切な価格帯を調べる物差し、③同じ商品でも収益を最大化する「一物多価」という発想、この3つの視点を整理します。
目次
1. 値上げ幅は「コスト」ではなく「価値」から考える
2. 「ちょうどいい価格帯」は勘ではなく調べられる
3. 同じ商品でも支払い意欲は一律ではない ―― 一物多価という発想
4. 値上げは“伝え方”で顧客離反を防げる
1. 値上げ幅は「コスト」ではなく「価値」から考える
価格を決める要素は、突き詰めると「コスト」「競合価格」「価値」の3つです。
多くの中小企業は原価に一定の利益を乗せる“コスト起点”で値付けをしがちですが、利益率の高い企業ほど「お客様がその商品にどれだけの価値を感じているか(知覚価値)」を起点に価格を組み立てています。
原価率が低くても、競合より高くても、お客様が感じる価値の範囲内であれば値上げは受け入れられる、という考え方です。
数字で見てみましょう。
粗利率30%の商品を5%値上げできたとします。
仮に数量が3%落ちたとしても、売上は約1.9%増、粗利はおよそ13%も増える計算です。
値上げ分がほぼそのまま利益に上乗せされるためです。
逆に5%値引きして数量を3%伸ばしても、粗利はむしろ約14%減ってしまいます。
値上げ幅を考えるときの出発点は、「原価にいくら乗せるか」ではなく「お客様が感じる価値の上限まで、あといくら詰められるか」から逆算することなのです。
2. 「ちょうどいい価格帯」は勘ではなく調べられる
とはいえ「価値の上限」は目には見えません。
そこで役立つのが、お客様に価格の感じ方を尋ねて適切な価格帯を探る手法です。
代表的なものにPSM分析があります。
「高すぎて買わない」「安すぎて品質が不安」「高いと感じ始める」「安いと感じ始める」という4つの価格を尋ね、その回答から“上限価格”“下限価格”“最も受け入れられやすい価格”といった受容価格帯を導き出す方法です。
大がかりな市場調査でなくても構いません。
既存のお客様十数名へのヒアリングや簡単なアンケートでも、感覚は驚くほど具体化します。
大切なのは「意思決定ができる分析こそ良い分析」という発想です。
複雑な統計に走る前に、まず“お客様は実際いくらまでなら納得してくれるのか”を数人に聞いてみる。
それだけで、値決めの精度は勘の段階から確実に一歩前へ進みます。
3. 同じ商品でも支払い意欲は一律ではない ―― 一物多価という発想
もう一つ大切なのが、「同じ商品でも、お客様によって払ってもよいと思う金額は違う」という事実です。
品質重視で多少高くても買う人もいれば、価格に敏感な人もいます。
これを一つの価格(一物一価)で売ると、高く払ってくれたはずの人には安売りし、価格に敏感な人は取り逃す、という“どっちつかず”が起きてしまいます。
そこで有効なのが「一物多価」――同じ商品・サービスに付加価値の差をつけ、複数の価格帯を用意する発想です。
動画配信が画質でプランを分けたり、テーマパークが時期や特典で料金を変えたりするのがその例です。
中小企業でも、「標準版」と「サポートを手厚くした上位版」を用意する、早期契約に割引を設けるなど、支払い意欲の差に合わせた設計をすれば、一律の値上げをせずとも全体の収益を底上げできます。
ここは、どの顧客層に、いくらで、いくらの利益を狙うのか――「顧客数の最大化」を狙うのか「利益額の最大化」を狙うのか――という管理会計的な視点と表裏一体です。
4. 値上げは“伝え方”で顧客離反を防げる
最後は伝え方です。
どれだけ理屈が正しくても、値上げの告知ひとつでお客様は離れます。
参考になるのが、あるロングセラー商品の値上げ告知です。
そこには3つの工夫がありました。
①「発売◯年」と歴史を伝え、単なる値上げではなく積み重ねを想起させる。
②これまでの感謝をまず伝える。
③値上げと同時に増量キャンペーンという“良い情報”を届ける。
ポイントは、値上げという“悪い情報”を、感謝や改善という“良い情報”とセットで届けることです。
「原価が上がったので」と一方的に通告するのではなく、「これまでありがとうございました。今後もより良い商品・サービスをお届けするために」という文脈を添える。
同じ値上げでも、受け取られ方はまるで変わってきます。
おわりに ―― 値決めは、勘に確信を与える
当事務所では、日々の税務・会計にとどまらず、「その値上げは利益にどう効くのか」「どの顧客層に、いくらで売るのが得策か」といった値決め・管理会計のご相談にも伴走しています。
数字は、社長の勘を否定するものではなく、勘に確信を与える道具です。
私たちは経営理念「ともに未来を描く」のもと、価格という最も利益に直結する意思決定を、数字の面から一緒に支えてまいります。
値上げに踏み切れずにいる、あるいは“なんとなくの価格”に不安があるという方は、ぜひ一度ご相談ください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別具体的な経営判断を行うものではありません。実際のご判断に際しては、税理士・会計士等の専門家へご相談ください。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


