その値上げ交渉、“数字”という武器を持っていますか?

投稿日:2026年07月19日

その値上げ交渉、“数字”という武器を持っていますか?

朝4時起きの名古屋の税理士丸山です。

原材料費に人件費、燃料費……あらゆるコストが上がり続けるいま、「値上げは悪ではない」という空気がようやく定着してきました。
とはいえ、「いくら値上げすればいいのかわからない」「お客様に根拠を求められて交渉が止まってしまう」という声も多く耳にします。
今日は、中小企業が“勘”ではなく“数字”を武器に、堂々と値上げを進めるための3つの視点――利益の方程式に潜む「1%の破壊力」、「全社利益」で損益を見る目、そして交渉を支える「切り札」のつくり方――を整理します。

目次 ―

1.会社の目的は利益――たった1%の破壊力

2.「粗利」ではなく「全社利益」で損益を見る

3.値上げ交渉の”切り札”を金額化する

4.数字は経営判断の「コンパス」になる

1.会社の目的は利益――たった1%の破壊力

利益は、難しい理屈ではありません。
「利益=(売価-原価)×数量」というシンプルな方程式で表せます。
ここで見落とされがちなのが、“たった1%”の重みです。
たとえば売価100円・原価99円、利益率1%の製品を年間1万個売ると、利益は(100-99)×10,000=1万円。
ここで売価を1%上げ、原価を1%下げると、(101-98)×10,000=3万円。
利益額はなんと約3倍に跳ね上がります。

 
一方、数量を1%増やしても(100-99)×10,100=1万100円で、ほとんど変わりません。
数量を追って利益を2倍にしようとすれば、工場をもう一つ建てるほどの労力が要ります。
経営資源の限られる中小企業こそ、「1%でも高く売り、1%でも安くつくる」――この一点に着眼することが、値上げの出発点になります。

2.「粗利」ではなく「全社利益」で損益を見る

では、どの製品・どのお客様から値上げをお願いすべきか。
ここで必要になるのが「利益一覧表」です。
最大のポイントは、「粗利」ではなく「全社利益」で損益を並べること。
販管費まで含めた“真の損益”で、顧客別・製品別に「良い子・悪い子・普通の子」を一覧化します。
実際にやってみると、長年の得意先が年間何百万円もの赤字顧客だった、というケースは決して珍しくありません。
あるモデルでは、A社は黒字でもC社は年間▲400万円の赤字、会社全体では▲310万円という姿が浮かび上がりました。

 
粗利だけを眺めていると、この赤字は表に出てきません。
真の損益が見える化されて初めて、「どこに、いくら値上げをお願いするか」という優先順位が定まるのです。

3.値上げ交渉の”切り札”を金額化する

値上げ交渉で最後にものを言うのは、“根拠”です。
お客様に「なぜ?」と問われて黙り込まないために、日頃の”泣き寝入り”を金額に換算しておきましょう。
無償で応えてきた超短納期、曖昧なまま引き受けてきた品質基準、預かり在庫の保管スペース――こうした「裏の売価」を一つずつ書き出し、金額化するのです。
ある製造業では、この作業で見えていなかった損失が年間1.2億円にのぼることが”見える化”され、現場が危機感を持つきっかけになりました。
交渉の場では「他社様には追加料金をいただいていますが、御社とは末永いお付き合いをしたいので今回は請求しません。

 
その代わり、今回の値上げは満額でご回答をお願いします」と切り出せます。
数字という裏づけが、交渉を一方的な”お願い”から対等な”協議”へと変えてくれます。

4.数字は経営判断の「コンパス」になる

こうして揃えた数字は、単なる交渉材料にとどまりません。
社長にとっては、経営判断の「コンパス」になります。
利益一覧表が手元にあれば、「この製品は赤字だから思い切って値上げしよう」「この赤字顧客は一度取引条件を見直そう」といった判断を、勘ではなく数字に基づいて下せます。
逆に手元に数字がなければ、「長年の付き合いだから」と赤字を放置したり、「いつも短納期だから」と本当は儲かる仕事を手放したりと、判断ミスを重ねてしまいます。

 
値上げは、値決めと管理会計をセットで整えて初めて、腰を据えて進められる――ここに、”数字で挑む”ことの本当の価値があります。

むすびに――ともに未来を描く

当事務所では、日々の税務や記帳のサポートにとどまらず、「どの製品・どのお客様が本当に儲かっているのか」を見える化し、値決めや価格交渉の土台となる管理会計の仕組みづくりまで、経営者の皆さまと伴走しています。
私たちが大切にしているのは「ともに未来を描く」という経営理念です。
数字は過去の成績表であると同時に、未来を選ぶための羅針盤でもあります。
値上げに一歩踏み出したい、そのための”武器”を整えたいという方は、ぜひ一度ご相談ください。
皆さまの決算書に、確かな利益が残る未来を、ともに描いてまいります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別具体的な経営判断を行うものではありません。
実際のご判断に際しては、税理士・会計士等の専門家へご相談ください。

 

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この記事の監修

丸山会計事務所 税理士 代表 丸山和秀

税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)

税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。

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