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工場移転時に活用できる税制優遇制度は?地方拠点強化税制を解説
投稿日:2024年01月31日
工場移転をする場合、大きな設備投資が必要になります。取引金額も多額になることが多く、補助金や税制優遇措置が受けられれば高い効果が得られるでしょう。
このブログでは、工場移転時に検討したい税制優遇措置と、その中でも「地方拠点強化税制」について解説します。地方拠点強化税制は、工場は対象外であり、本社や研究所を地方に新設・増強した場合に受けられる税制優遇措置です。工場移転だけでなく、同時に本社機能等も移転・増強する予定がある場合に、事前に検討してみましょう。
目次
1.工場移転時に活用できる税制優遇措置
工場移転時に活用できる税制優遇措置には、以下のようなものがあります*。
*丸山会計事務所では税制優遇を受けるためのサポートをおこなっています。
リンク先のページも参照ください。
(中小企業経営強化税制、先端設備導入計画に係る固定資産税の軽減措置)
それぞれ要件や、優遇される範囲、要件、金額が異なります。適用できると大きな節税になる可能性があるため、移転計画時から確認しておくことがおすすめです。
このブログでは、この中でも「地方拠点強化税制」について、概要と適用方法、および注意点を解説していきます。
2.地方拠点強化税制の概要
地方拠点強化税制は、地方に本社機能等を移転・増設する場合に、要件を満たせば税制を始めとした優遇措置を受けられる制度です。期限は令和6年3月31日までに移転先に都道府県知事認定を受けること、とされています。
以下、概要を紹介します。
地方拠点強化税制の対象
優遇措置の対象となる本社機能等とは、主に以下のとおりです。
・事務所
・研究所
・研修所
工場や店舗は対象外です。また、登記簿上の「本店」である必要はありません。
名称などに関わらず、上記の機能を有しているかどうかで実質的に判断されます。
税制優遇措置の種類
税制優遇措置には、以下の2種類があります。
・オフィス減税
・雇用促進税制
また、それぞれの優遇措置は「移転型事業」と「拡充型事業」により異なります。
「移転型事業」は東京23区に本社がある企業が地方に移転(一部移転も含む)する場合であり、「拡充型事業」は東京23区以外に本社がある企業が地方に本社を移転・増設する場合になります。
【オフィス減税】
建物・建物付属設備・構築物の取得価額に対して、特別償却または税額控除が受けられます。
概要は以下のとおりです。
・対象は取得原価2,500万円以上(中小企業者1,000万円以上)
・「移転型事業」の場合、取得原価に対して、特別償却25%または税額控除7%
・「拡充型事業」の場合、取得原価に対して、特別償却15%または税額控除4%
・税額控除の場合、法人税額等の20%が上限(雇用促進税制との合算)
・令和6年3月31日までに、都道府県知事の認定を受けたものが対象
対象となる建物等は、新設・増築・新築の購入に限ります。一部が工場などの優遇措置適用対象外の用途である場合には、床面積按分により、適用対象部分のみが優遇対象となります。
また、親会社が取得した物件に子会社が入居する場合などは適用対象外です。自社が投資し、自社が本社機能等として利用している場合に限ります。
【雇用促進税制】
本社機能等における雇用者増加数に応じて、税額控除が受けられます。
概要は以下のとおりです。
・「移転型事業」の場合、新規雇用者数1人あたり90万円(50万円+上乗せ分原則として40万円)と、転勤者数1人あたり 80万円(40万円+上乗せ分原則として40万円)の合計額を税額控除
・「拡充型事業」の場合、新規雇用者数1人あたり30万円と、転勤者数1人あたり20万円の合計額を税額控除
・上記の人数に有期雇用労働者、パートタイム労働者は除く
・適用年度および前事業年度中に事業主都合による離職者がいないことが要件
・法人税額等の20%が上限(オフィス減税との合算)
・適用期間として令和6年3月31日までに、都道府県知事の認定を受けたものが対象
原則として同一事業年度でオフィス減税と雇用促進税制の併用はできませんが、「移転型事業」の雇用促進税制の上乗せ部分は併用可能です。
地方税の優遇措置
地方自治体によっては、事業税(移転型事業のみ)、不動産取得税、固定資産税の免除や減免措置があります。要件や優遇措置の内容が異なるため、対象の地方自治体に確認してください。
その他の優遇措置
その他、以下の優遇措置があります。
・中小企業基盤整備機構による債務保証が受けられる
・政府系金融機関による融資が受けられる
3.地方拠点強化税制の適用方法と注意点
地方拠点強化税制を適用するための手続きは、主に以下のとおりです。
1. 本社機能等の移転、増設を計画。移転・立地先が地方拠点強化税制の対象であるかを確認。
2. 整備計画を作成し、都道府県知事に申請
3. 整備計画の認定を受ける
4. 認定後に着工を開始する
5. オフィス減税を受ける場合は、計画認定後3年以内に対象資産を供用開始し、確定申告をおこなう
6. 雇用促進税制を受ける場合は、計画認定後3か月以内または適用年度開始後2か月以内にハローワークに雇用促進計画を提出。適用年度終了後2か月以内に計画の達成状況の確認を受けて、確定申告をおこなう。
主な注意点は以下のとおりです。
・事前の計画認定が必要
地方拠点強化税制を適用するためには、前述したように整備計画の認定を受ける必要があります。さらに雇用促進税制を受ける場合はハローワークへの計画提出も必要です。余裕をもって手続きを進めましょう。
・法人税額等の20%が上限
地方拠点強化税制は法人税額等の20%が上限です。また、他の税制優遇措置との併用ができないことも多くあります。例えば地域未来投資促進税制(租税特別措置法第42条12の2)と地方拠点強化税制(租税特別措置法第42条12)は、同じ租税特別措置法での優遇措置であり、同一資産については併用できません。ただし資産ごとに適用可能な優遇措置を選択できると考えられます。
4.まとめ | 移転計画前に制度活用を検討しましょう
以上、地方拠点強化税制について解説しました。
近年コロナ禍を経てリモートワークが普及し、本社機能を地方に移転している企業も増えています。国や地方自治体が、優遇措置で地方活性化を支援している今、本社機能等の移転や増設を検討している企業は、地方拠点強化税制を活用してみてはいかがでしょうか。また、工場移転を含めて固定資産の取得を伴う場合は、補助金や税制優遇措置が適用できると資金効率が高くなります。地方拠点強化税制のように、事前の計画認定など、着手前に必要な手続きが必要なこともあるため、制度活用を検討する場合には、早めの対策が必要です。
地方拠点強化税制を始めとして、税務や会計でお困りの際は、丸山会計事務所までお気軽にご相談ください。
この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。
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