その新規事業、大手と同じ土俵で戦っていませんか──消耗戦を避けて「小さく一番」になる3つの視点
投稿日:2026年08月16日

おはようございます。
朝4時起きの名古屋の税理士丸山です。
「何か新しいことを始めなければ」という焦りから、勢いのある大きな市場に飛び込む。
ところがそこは、すでに体力のある大手や先行企業がひしめくレッドオーシャンで、気づけば価格を下げることでしか土俵に上がれない――。
中小企業の新規事業で最も多い失敗が、この「戦う場所の選び間違い」です。
どれほど良いアイデアでも、勝てない場所で戦えば消耗戦に飲み込まれます。
逆に言えば、小さくても競争のない市場を選び、そこで一番になれれば、値引きに頼らず高い利益を残せます。
本稿では、消耗戦を避けて「小さく一番」になるための3つの視点――勝てる場所を選ぶ、種を日常から拾う、手持ちの掛け算で商品にする――を整理します。
目次
1. なぜ中小企業は「戦う場所」で勝負が決まるのか
2. 視点①:勝てる場所を選ぶ──値引き合戦から降りる
3. 視点②:ニッチの種は日常の「なぜ?」と「不便」から拾う
4. 視点③:手持ちの掛け算でニッチ商品をつくる
1. なぜ中小企業は「戦う場所」で勝負が決まるのか
中小企業は、大手のように潤沢な資本や人員で押し切ることができません。
せっかく良い商品を出しても、市場が育って旨みが見えてくると、必ず体力のある大手が参入し、こちらが苦労して開拓した市場をそのまま奪っていきます。
だからこそ、最初から「大手が本気で取りに来ない小さな市場」を選ぶことが、中小企業の新規事業では決定的に重要になります。
たとえば家事代行や、退職の連絡を本人に代わって伝える退職代行といったサービスは、大企業が全社を挙げて参入するほどの規模ではないものの、確かなニーズを掴んで急成長しました。
市場が「小さい」ことは弱点ではなく、競争のない城を築ける強みなのです。
ここで陥りがちなのが、「売上◯億円」といった目標を先に立て、それに見合う大きな市場を後から探しにいくやり方です。
順番が逆です。
まず「自社の資源ありき」で考える。
自分たちの強み、既存の顧客、仕入れのルート、立地――この手札で勝てる小さな市場はどこか、から逆算してください。
2. 視点①:勝てる場所を選ぶ──値引き合戦から降りる
勝つための最強の戦略は、実は「戦わないこと」です。
とりわけ避けたいのが、価格競争と、縮小し続ける斜陽産業への参入です。
値引きは一見手っ取り早い集客策に見えて、利益をあっという間に溶かします。
具体的な数字で見てみましょう。
定価1万円・原価5千円の商品を100個売るとします。
定価のまま売れば粗利は50万円。
ここで3割引きにすると、粗利は20万円まで落ちます。
5割引きなら、手元に売上は50万円入っても、粗利はゼロです。
値引きは、売れた実感だけを残して利益を持ち去ります。
むしろ発想を逆にして、1割「値上げ」して8個売るほうが、1割「値引き」して11個売るよりも、粗利の総額は大きくなります。
実務では、値引きの相談が出たら、その前に「この値段を正当化する付加価値は何か」を必ず問う癖をつけてください。
そして「利益率が3割を切る事業には安易に踏み込まない」といった自分なりの線を、あらかじめ決めておくことです。
判断軸を先に決めておけば、目先の売上に引きずられて消耗戦に巻き込まれることを防げます。
3. 視点②:ニッチの種は日常の「なぜ?」と「不便」から拾う
「競争のない市場と言われても、そんな種はそう簡単に見つからない」と感じるかもしれません。
しかしニッチの種は、特別な場所ではなく、日常の違和感の中に必ず現れています。
着眼点を少し変えるだけで拾えるものです。
鍵になるのは、「なぜ?」を問う習慣です。
「なぜこれはこんなに安いのか」「なぜここにこの店があるのか」と考える。
あるいは「忙しくてできない」「難しくてできない」という不便の裏側には、たいていビジネスチャンスが隠れています。
共働き家庭の増加を捉えた家事代行、好きな店の料理を自宅で選べるフードデリバリーなどは、まさに日常の不便から生まれた事業です。
そして最も身近な種の宝庫が、お客様からのクレームと要望です。
「もっと大きくしてほしい」「この機能を付けてほしい」という一人の声は、たいてい他の顧客も同じように感じています。
ありがちな失敗は、こうした声をその場の対応で流してしまうこと。
クレームや「買わない理由」を社内で記録し、全員で共有する仕組みをつくるだけで、種は驚くほど集まります。
4. 視点③:手持ちの掛け算でニッチ商品をつくる
ニッチ商品というと、ゼロから技術を開発しなければと身構えがちですが、その必要はありません。
すでにあるものの「組み合わせ」や「使い方の変更」から、十分に生まれます。
一つは、ある業界では当たり前の商品を、別の業界に転用する発想です。
たとえば建築用として広く安く出回っている塗料を、工業用途にそのまま転用してコストを下げる、といった具合です。ただし業界ごとに要求される試験や基準が異なる点は、事前に必ず確認してください。
もう一つは、商品そのものは変えず、「ビジネスの仕組み・フロー」を変える方法です。
売り切りだったものを定額で貸すサブスクに変える、
これまで顧客が処分費用を払って捨てていた使用済み品を、逆にこちらが買い取る形に変える。
仕組みを一つ入れ替えるだけで、競争相手のいない事業に変わります。
実務では、「あるもの×あるもの」「異業界からの転用」「フローの逆転」という3つの問いを、商品会議の定番チェックリストにしておくと良いでしょう。
こうした挑戦のコストは、税務でいくらか和らげられます。
新商品の試作や技術開発にかかった費用は、要件を満たせば試験研究費の税額控除の対象になり得ます。
また、立ち上げ期に赤字が出ても、青色申告であれば欠損金を最長10年間繰り越し、将来の黒字と相殺できます。
制度を味方につければ、挑戦の一歩は思うより軽くなります。
おわりに
当事務所では、毎月の顧問業務で数字を整えるだけでなく、新規事業の事業計画づくりや、「どの市場で戦い、どこから撤退するか」という経営判断の壁打ち役をお引き受けしています。
数字の裏側にある意思決定まで一緒に考えるのが、私たちの役割だと考えています。
経営理念に掲げる「ともに未来を描く」の言葉のとおり、社長お一人で抱え込まず、勝てる場所選びの段階からぜひご一緒させてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別具体的な経営判断を行うものではありません。実際のご判断に際しては、税理士・会計士等の専門家へご相談ください。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


