「ゲームで、会社をつぶしました」──私がMGで社長の椅子に座った話
投稿日:2026年07月01日

朝4時起きの名古屋の税理士の丸山です。
先日、事務所の棚を整理していたら、古い一枚の紙が出てきました。
ずいぶん日に焼けて、角の折れた、手書きの決算用紙です。
初めて「MG」という研修に出たときの、自分の成績表でした。
最後の期の利益(G)の欄に、大きくマイナス▲の数字が書いてあります。
そう、私はそのゲームの中で、自分の会社を一度つぶしているのです。
税理士になって、何年も経ってからの話でした。
「MG」って、なんですか
MG──マネジメントゲーム。
このシリーズで何度か名前だけ出してきましたが、今日はその話を、少しだけさせてください。
MGは、戦略MQ会計を体系化された西順一郎先生が考案された、経営のシミュレーションゲームです。
参加者ひとりひとりが、製造業の社長になります。
盤の上で材料を仕入れ、機械で製品をつくり、お客さま役と値段の交渉をして売る。
そして期末には、自分の手で決算を組む。これを何期も、何期も繰り返します。
ただのすごろくではありません。
仕入れも、製造も、販売も、値づけも、ぜんぶ自分で決める。決めた分だけ、結果がそのままはね返ってくるのです。
私は「数字には強い」つもりでした
正直に申し上げると、最初に席についたとき、私は少し高をくくっていました。
こちらは税理士です。決算書なら、毎日のように見ている──と。
ところが、ゲームが始まってみると、これがまるで思うようにいきません。
材料は思ったより高く、機械を動かすにもお金がかかる。気がつくと、手元の現金がどんどん減っていきます。
そうこうするうちに、つくった製品が売れ残ってきました。
盤の上に、在庫の駒が積み上がっていく。あれが、妙に心臓に悪いのです。
私は焦りました。
「とにかく、これを現金に換えなきゃ」。そう思って、値段を大きく下げて、投げ売りのように売りさばいたのです。
私が、泣きそうになった「決算」
駒はさばけました。
売れた瞬間は、正直ほっとしました。「よし、これで現金が戻る」と。
ところが期末に自分で決算を組んでみて、私は固まってしまいました。
まず決算が合わない。
税理士なのに、決算が合わずに、みんながどんどん終わってい行く中で一人だけ居残りをして決算をしたのを覚えています。
そして、あれだけ売ったのに、利益(G)の欄が、真っ赤なのです。
理由は、いま思えば当たり前のことでした。
値段を下げても、家賃や人件費にあたる固定費(F)は、1円も下がってくれません。
売っても売っても、安く売った分だけ、1個あたりの粗利(M)が薄くなっている。
薄いMをいくらかき集めても、先に出ていくFには、まるで追いつかなかったのです。
PQ = VQ + F + G
顧問先の社長さんたちに、私が何百回と説明してきた式です。
その式が、自分の手で組んだ決算用紙の上で、はじめて重さを持って迫ってきました。
MQ = F + G
「Fを埋めるだけのMQを稼いでからでないと、Gは1円も生まれない」。
頭でわかっていたはずのことに、私はそのとき、ようやく体で気づいたのです。
お恥ずかしい話ですが、成績表を前にして、少し泣きそうになりました。
盤の上の、おもちゃのお金のはずなのに、まるで本当に会社をつぶしてしまったような気がして。
式は、頭ではなく体に入ってくる
それからのゲームで、私は人が変わったように慎重になりました。
売れ残りに焦って投げ売りをするのをやめ、「この1個を売ると、Mがいくら残るのか」を、一手ごとに考えるようになったのです。
不思議なもので、そうやって何期も回しているうちに、PQ=VQ+F+Gが、ただの記号の列ではなくなってきました。
「いま自分は、Fという坂を登っている」「ここを越えれば、ようやくGが顔を出す」。そんな感覚が、手のひらに残るのです。
MGは理入ではなく行入といわれるのは、「机の上で覚えるより、体で覚えるほうが早い」と書いたのは、このときの経験があったからでした。
だから私は、そっとおすすめしています
顧問先で数字の話をしていて、社長さんがどこか他人事のような表情、分かっていないなというときがあります。
そんなとき私は、決算書をもう一枚広げる代わりに、MGの話を少しだけします。
一日、社長の椅子にうんと深く座って、会社を一度つぶしてみる。
痛い目にあうのはゲームの中だけですが、そこで腹に落ちたものは、翌朝からの本物の経営に、不思議とついてきてくれます。
押し売りをするつもりは、まったくありません。
ただ、私自身があの初MGで景色が変わった人間なので、同じ景色を見てもらえたら、と思うだけなのです。
あの古い決算書は、捨てずに、またそっと棚へ戻しました。
少し調子に乗りそうになったとき、ときどき引っぱり出して眺める、私の「お守り」のような一枚です。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


