【第4回】表面的な言葉に騙されない。本質を見抜く人間観察法「視・観・察」
投稿日:2026年05月30日

朝4時起きの税理士、丸山です。
いつものように朝4時に起き、静かな部屋で隅で一人、思考を巡らせています。
最近、顧問先である東海地域の中小企業経営者の方々から、共通してあるご相談を受けることが増えました。
それは「人の見極め方」についてです。
「面接ではとても立派な経歴を語り、やる気にあふれていたのに、いざ採用してみると周囲と衝突ばかり起こす」
「新規の取引先で、初めは耳触りの良い理念を並べていたのに、蓋を開けてみれば自分たちの利益しか考えていなかった」
人材の採用であれ、新規取引先の開拓であれ、相手が本当に信頼に足る人物なのかを見極めることは、経営において最も難しく、かつ重要な課題の一つです。
履歴書という「過去の数字(算盤)」や、面接での「立派な言葉(論語)」だけでは、人の本質はなかなか見えてきません。
ここで、渋沢栄一が『論語と算盤』の中で説いた、人を見抜くための3つのステップが非常に鋭い示唆を与えてくれます。それが「視・観・察(しかんさつ)」という人間観察法です。
渋沢は、相手を深く理解するためには、以下の順序で観察すべきだと語っています。
- 「視(みる)」:まずは、その人の外側に現れている行動を見ます。どんな実績があるのか、今何をしているのか。いわば、履歴書や職務経歴書に書かれている事実の確認です。
- 「観(みる)」:次に、なぜその行動をしているのか、その「動機」を見ます。
例えば、一生懸命に街の掃除をしている人がいたとします。しかし、それが「みんなのために街をきれいにしたい」からなのか、それとも「偉い人が視察に来るから気に入られたいだけ」なのかによって、その人の評価は全く変わってきます。
- 「察(さっする)」:そして最も重要なのが、ここからです。渋沢はさらに深く、その人が「何に満足し、喜びを得ているか」を見なさいと説きます。
私がこの「察」の重要性を痛感し、また相手の本質が最もわかりやすく表れると感じているのが、前回もお話ししたMG(マネジメントゲーム)の場です。
経営のシミュレーションであるMGでは、参加者のプレイスタイルにその人の「何に喜びを感じるか」という本性が如実に表れます。
ある人は、他者を出し抜いてでも自分が一番利益を出し、トップに立つことだけに強い喜びを感じます。一方で別の人は、自分の利益を追求しつつも、初めて参加した人にルールを教えたり、場全体のレベルが上がって活気づくことそのものに喜びを感じます。
いくら面接の場で「御社の理念に共感し、チームワークを大切にします」と素晴らしい動機(観)を語っていても、ゲームの場や普段のプライベートな時間で、他者を蹴落として自分がチヤホヤされることばかりに喜びを感じている(察)のであれば、公言している動機と本心は違うと見抜くことができます。
私たちは採用や取引の場面で、つい「視(実績)」や「観(動機)」の段階で相手を評価してしまいがちです。しかし、本当にその人が自社と長く付き合える人物かどうかは、最後の「察」——その人が何に幸せを感じ、何に価値を置いているかという、価値観の根底まで見なければわからないのです。
いくら面接の場で「御社の理念に共感し、社会に貢献したい」と素晴らしい動機(観)を語っていても、普段のプライベートな時間で自分がチヤホヤされることや、お金を浪費することばかりに喜びを感じている(察)のであれば、公言している動機と本心は違うと見抜くことができます。
私たちは採用や取引の場面で、つい「視(実績)」や「観(志望動機)」の段階で相手を評価してしまいがちです。しかし、本当にその人が自社と長く付き合える人物かどうかは、最後の「察」——その人が何に幸せを感じ、何に価値を置いているかという、価値観の根底まで見なければわからないのです。
東海三県で真摯にものづくりや事業に向き合う中小企業の皆様にとって、限られた経営資源の中で「人」は最大の資産です。たった一人の採用ミスや、一つの取引先とのトラブルが、組織全体を揺るがすことすらあります。
税務実務の世界でも同じことが言えます。例えば、目先の節税対策(視)や、合法だからという理由(観)だけでスキームを組んでも、経営者ご自身が「自社をどう社会に役立てていきたいか」という根本的な喜びや理念(察)と結びついていなければ、結局は後継者や従業員の心は離れ、会社は長続きしません。
相手の言葉の奥にある「察」の部分にまで目を向けること。それは、前回の第3回でお話しした「情(他者への思いやりや理解)」にも通じる、リーダーに不可欠な視点だと私は考えています。
次回、第5回は、「お金儲けは汚いことなのか?」という、経営者が必ず一度は直面する葛藤と、正しい「稼ぎ方」と「使い方」についてお話ししたいと思います。
子どもたちも起きて、朝、私も空腹となり、妻がご飯を作ってくれていますので、本日はそろそろ終わりにいます。
お客様の言葉の奥にある真意に「察」の心をもって寄り添えるよう、現場へと向かいます。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


