「7つのムダ」を粗利のメガネで見る──工場の時間は、利益を生んでいますか、という話
投稿日:2026年06月17日

朝4時起きの名古屋の税理士の丸山です。
先日、市内のある町工場にお邪魔して、現場を一緒に歩かせていただきました。
機械が並び、人が動き、フォークリフトが行き交う。
活気のある、いい現場でした。
社長さんは少し誇らしげに、それでいて、ふと困った顔で、こう言われました。
「丸山さん、うちもカイゼンってやつを始めたんですよ。整理整頓もして、人の動線も見直して。……でもね、それが利益にどうつながっているのか、正直、よくわからんのです」
私は、その言葉にハッとしました。
カイゼンと利益のあいだに、橋が架かっていない。
これは、本当に多くの工場で起きていることだと、私は感じています。
トヨタの「7つのムダ」
ものづくりの世界には、有名な「7つのムダ」という考え方があります。
トヨタ生産方式から生まれた、現場のムダを見つけるためのものさしです。
「つくりすぎのムダ」「手待ちのムダ」「運搬のムダ」「加工のムダ」「在庫のムダ」「動作のムダ」「不良をつくるムダ」。
書き出すと、この7つです。
名前を知っている方は多いのですが、いざ現場で「どれが、どのムダか」を見分けて、減らせる人となると、ぐっと少なくなります。
そこで今日は、この7つを、私たちのいつものメガネ──「粗利のメガネ」をかけて、もう一度眺めてみたいのです。
粗利のメガネをかけて、見直してみる
ここで、いつもの式を思い出します。
PQ = VQ + F + G
会社が稼ぐ1個あたりの粗利がM、それを全部足した粗利の総額がMQ。組み替えると、こうでした。
MQ = F + G
工場の役割は、このMQ(粗利)を生み出すことです。
ところが、現場の時間とモノを「粗利のメガネ」でじっくり眺めると、不思議なことに気づきます。
7つのムダは、ぜんぶ「Mを生まないのに、Fを食っている状態」なのです。
たとえば、手待ち。
人が手持ちぶさたで立っている時間にも、その人の給料(F)は、1秒ずつ出ていきます。
でも、その時間からは、Mが1円も生まれていません。
運搬や、探しもの、振り向き、しゃがむ動き。
体は動いています。汗もかいています。
けれど、モノをつかんで道具を動かす指先以外の動きからは、Mは生まれてこない。
在庫は、もっと厄介です。
つくりすぎてできた在庫には、材料費として「すでに払ったお金(VQ)」が眠っています。
売れて初めてMに変わるはずだったお金が、棚やパレットの上で、じっと出番を待っている。
そして、不良。
これがいちばん痛い。
一度Mを生みかけたものを、Mごと捨ててしまう。材料費(V)も、かけた手間も、まとめてゼロに戻ってしまうのです。
ムダとは「Mを生まない時間とモノ」
こうして並べてみると、バラバラに見えた7つのムダが、すっと一本の線でつながります。
ムダとは──「Fを食っているのに、Mを生んでいない、時間とモノ」のこと。
私は、この見方に変えてから、現場の景色が変わりました。
散らかっている、きれいだ、という話ではなくて、「いま、この時間は、Mを生んでいるか」という一点で、現場を見られるようになったのです。
カイゼンは、PもVも変えずにMQを増やす
ここで、冒頭の社長さんの疑問に戻ります。
「カイゼンが、利益にどうつながるのか」。
私の答えは、こうです。
カイゼンは、価格Pを上げるわけでも、材料費Vを下げるわけでもありません。
同じFのまま、Mを生む時間の割合を増やす行為なのです。
つまり、同じ人数・同じ給料(F)で、より多くのMQを生み出せるようになる。
これが、カイゼンの利益への効き方だと、私は思っています。
数字で見てみます。
さきほどの町工場、社員さんの人件費を中心とした固定費Fが、年に1,800万円だったとします。
いまは、年間のMQ(粗利)が2,200万円。だから利益Gは、
MQ 2,200万円 - F 1,800万円 = G 400万円
ここで、手待ちや停滞のムダを減らして、同じ人数のまま、つくれる量が2割増えたとします。
増えた手すきの時間で、これまで断っていた仕事を受けられるようになった。
すると、MQは2,200万円から、2,640万円へ。
MQ 2,640万円 - F 1,800万円 = G 840万円
利益が、400万円から840万円へ。倍以上になりました。
PもVも、1円も動かしていません。
動いたのは、「同じFから生まれる、MQの量」だけなのです。
社長さんは、しばらく数字を見つめて、こうつぶやかれました。
「……うちは、人を増やさんでも、まだ利益を増やせるんですね」
私は、深くうなずいていました。
カイゼンを「やった気」で終わらせない
カイゼンを「やった気」で終わらせないために、私がおすすめしているのは、減らせたムダを、いちど金額(MQ)に翻訳してみることです。
「動線を3メートル短くした」で止めずに、「その分、1日に何個多くつくれて、Mがいくら増えたのか」まで、紙の上で追いかけてみる。
数字に翻訳されたカイゼンは、現場の達成感に変わります。
そして社長にとっては、次にどこから手をつけるか、という地図になります。
次回は、この「停滞のムダ」をもう一歩だけ掘り下げて、リードタイムを短くすることが、なぜそのまま利益に効くのか、という話を書いてみたいと思っています。
最後に、ひとつだけ。
工場のいちばんの仕事は、出荷することだと、私は思っています。
出荷して初めて、売上PQが立ち、粗利MQが生まれ、みんなの給料Fを払うことができる。
だからこそ、現場の時間が、ちゃんと「Mを生む時間」で満たされているか。
それを社長さんと一緒に眺めていくのも、私の仕事のひとつだと感じています。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


