その値引き、利益をいくら減らすかご存じですか?——黒字を守る「単価の方程式」
投稿日:2026年06月21日

朝4時起きの名古屋の税理士丸山です。
原材料も人件費も上がる一方なのに、価格への転嫁は思うように進まない――。
そんな板挟みのなかで、「とりあえず1割引きで数量を守ろう」という判断が現場任せになっていないでしょうか。
実は、値引きが利益に与えるダメージは、私たちの感覚よりはるかに大きいものです。
本稿では、
①値引きが利益を直撃する仕組み、
②利益の構造をつかむ方程式、
③打ち手の優先順位を決める利益感度分析、
という3つの視点から「値決めを支える管理会計」を整理します。
目次
1. 「客が1割減る」と「1割引き」はまったく違う
2. 利益の方程式──PQ=VQ+F+Gで構造をつかむ
3. 利益感度分析──値上げ1%の威力を測る
4. 明日からできる値引きルールと値上げ交渉
1. 「客が1割減る」と「1割引き」はまったく違う
ある小売店の例で考えます。
客単価P3,000円、仕入原価V2,000円、粗利単価M(=P−V)1,000円、月の客数Q900人、固定費F80万円。
粗利総額MQは90万円ですから、利益Gは月10万円の黒字です。
ここに競合店が出現し、店主は「全品1割引き」で対抗しました。
すると売価Pは2,700円に下がりますが、原価Vの2,000円は1円も下がりません。
つまり粗利単価Mは1,000円から700円へ、3割も減るのです。
値引き効果で客数が1,000人に増えても、粗利総額MQは70万円。
固定費80万円を差し引くと、月10万円の赤字に転落します。
仮に値引きをせず客数が1割減っただけなら、MQは1,000円×810人=81万円で、わずかながら黒字を維持できました。
「客が1割減るのも、商品を1割引くのも同じ」という直感は、明確に誤りなのです。
2. 利益の方程式──PQ=VQ+F+Gで構造をつかむ
MQ会計では、会社の損益構造を「PQ=VQ+F+G」というシンプルな式で捉えます。
売上高(単価P×数量Q)は、変動費VQ・固定費F・利益Gの3つに分解できる、という意味です。
ポイントは、利益Gが「G=MQ−F」、すなわち粗利総額MQと固定費Fのバランスだけで決まること。
売上高の大きさと利益は、直接には連動しません。
この式を変形すると、意思決定に直結する公式が得られます。
たとえば客数を求める「Q=(F+G)÷(P−V)」。
先ほどの店がトントン(G=0)に戻るために必要な客数は、80万円÷700円≒1,143人。
値引き前の900人より27%も多くのお客様を集め続けて、ようやく利益ゼロです。
値引きを決める前にこの一行の計算をするかどうかで、経営判断の質は大きく変わります。
3. 利益感度分析──値上げ1%の威力を測る
では、利益を改善したいとき、P(売価)・V(仕入単価)・Q(数量)・F(固定費)のどれから手をつけるべきでしょうか。
それぞれを「あと何%動かせば赤字がトントンになるか」という形で計算したものが利益感度です。
ある会社の試算では、売価P↑0.8%、仕入V↓1.0%、固定費F↓3.8%、数量Q↑40%という結果になりました。
数字が小さいほど効き目が鋭い、つまり最優先は売価Pです。
平均売価が1万円なら、0.8%はたった80円。数量を4割増やす営業努力と、80円の値上げ(あるいは値引きの圧縮)が、同じ利益効果を持つわけです。
値上げの余地を「気合い」ではなく感度の数字で測る
——これこそが管理会計の役割です。
4. 明日からできる値引きルールと値上げ交渉
実務への落とし込みとして、次の3つをおすすめします。
第一に、値引きの権限ルールを明文化すること。
たとえば「3%までは担当者の判断、3〜5%は上司の承認、それを超える値引きは社長決裁」と決めるだけで、現場の安易な値引きは大きく減ります。
第二に、値上げ交渉は着地点より高めの提示から入ること。
80円の値上げが必要なら、150〜300円から交渉を始めます。
実際にこの方法と値引き管理の徹底を組み合わせ、平均180円(1.8%)の値上げを実現して、単年度で黒字転換した会社もあります。
第三に、価格を動かす前に必ずP・V・M・Q・F・Gの表で試算すること。
1枚の表が、感覚的な値決めを「科学」に変えてくれます。
おわりに——「ともに未来を描く」ために
当事務所では、税務顧問にとどまらず、MQ会計の考え方を取り入れた値決め・値引きルールづくり、利益計画の策定まで、経営の意思決定を数字の面から支援しています。
経営理念である「ともに未来を描く」のとおり、御社の価格戦略をご一緒に考え、未来の利益をご一緒に設計するパートナーでありたいと考えています。
値上げや値引きの判断に迷ったときは、どうぞお気軽にご相談ください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別具体的な経営判断を行うものではありません。実際のご判断に際しては、税理士・会計士等の専門家へご相談ください。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


