その値引き、”担当者まかせ”になっていませんか?―― 安売りを止める3つの仕組み
投稿日:2026年08月11日

おはようございます。
朝4時起きの名古屋の税理士丸山です。
原材料費も人件費も上がり続けるなか、思い切って値上げに動く会社が増えてきました。
ところが、せっかく決めた価格が現場では守られていない――営業担当者の判断で、いつのまにか値引きが通ってしまう。
そんなケースは少なくありません。
値上げとは「価格を上げる」ことだけでなく、「決めた価格を安売りで崩さない仕組みをつくる」ことでもあります。
本稿では、①値決めを“意思決定”に変える、②売価ゾーンと赤字の見える化、③価格交渉カードの準備、という3つの視点を整理します。
目次
1. 「原価は1つ、売価は無限大」――値決めは計算ではなく意思決定
2. たった1%の値上げが利益を倍にする――数字で見る利益感度
3. 売価ゾーンを決め、外れる時は“赤字を見える化”する
4. 値引き以外の武器――「価格交渉カード」を揃える
1. 「原価は1つ、売価は無限大」――値決めは計算ではなく意思決定
原価と売価は、似ているようで役割がまったく違います。
原価は、材料費・加工費・人件費などを積み上げて「計算するもの」。
答えは1つに決まります。
一方の売価は「設定するもの」で、理屈のうえでは無限大の選択肢があります。
ここを混同すると、「原価に決まった率を足しただけ」の値付けになり、値決めが単なる電卓仕事になってしまいます。
本来、同じ原価の製品をいくらで売るかは、社長にしか決められない立派な意思決定です。
だからこそ「値決めは経営そのもの」と言われます。
まず押さえたいのは、売価は一部門の粗利ではなく「全社の原価」に「適正な利益」を乗せて決める、という基本姿勢です。
会社全体が回るのに必要な利益から逆算する。
この土台があってはじめて、「この価格は譲れない」という交渉の芯が生まれます。
2. たった1%の値上げが利益を倍にする――数字で見る利益感度
値上げをためらう社長ほど、1%の重みを過小評価しています。
簡単な例で確かめてみましょう。
売上1,000万円、変動費700万円の会社を考えます。
粗利は300万円、ここから固定費290万円を引くと、残る利益は10万円。
利益率はわずか1%です(MQ会計では、売上PQ=変動費VQ+固定費F+利益G、と表します)。
この会社が売価を1%だけ上げると、増えた約10万円はコストが変わらないためほぼそのまま利益に乗り、利益は20万円へ――なんと2倍になります。
逆に「お客様のために」と1%値引きすれば、利益は10万円まるごと消えてゼロ。
値引きが利益に与える破壊力は、多くの経営者の想像をはるかに超えています。
だからこそ「1%でも高く売る、1%でも安くつくる」の積み重ねが効いてきます。
値上げは大幅である必要はありません。
まずは自社の利益率を把握し、1%が利益をいくら動かすかを数字でつかむことが出発点です。
3. 売価ゾーンを決め、外れる時は“赤字を見える化”する
とはいえ、現場ではどうしても値引き交渉が発生します。
そこで有効なのが「売価ゾーン」という考え方です。
「この価格までは通常どおり売ってよい」という下限をあらかじめ決めておくのです。
ゾーンの中であっても、できる限り安売りはしない。
これが原則です。
問題は、ゾーンを下回る価格で受けざるを得ないときです。
ここを担当者の裁量に任せてしまうと、赤字受注が見えないまま積み上がります。
おすすめは「特別価格ルール」を回すこと。
具体的には、①特別価格の申請書を書かせ、②その案件をまとめて一か所に記録し、③定例の会議でフォローアップする、という流れです。
ポイントは、赤字を「見える化」することです。
誰が・どの客に・いくら値引きしたのかが一覧になれば、安売りは自然と減っていきます。
値引きを頭ごなしに禁止するのではなく、“見える状態で管理する”仕組みが、じわじわと利益を守ります。
4. 値引き以外の武器――「価格交渉カード」を揃える
最後に、交渉の「準備」です。
値上げ交渉が値引き合戦になってしまうのは、多くの場合、値段以外に差し出せるカードを持っていないからです。
交渉前に棚卸ししておきたいのが、価格以外の条件――仕様(スペック)、納期、数量(ロット)、支払条件などです。
「価格は据え置く代わりに納期を少し延ばしていただく」「まとめ発注なら単価を工夫する」というように、値段を下げずに折り合う道は意外と多くあります。
あわせて大切なのが、特定の顧客への依存度を下げておくこと。
1社への売上依存率が高いほど、その相手の値下げ要求を断りにくくなります。
取引先も市場も意識して分散しておくことが、結果として「安売りしないための準備」になります。
カードを何枚も持っている会社は、交渉のテーブルで慌てません。
おわりに ―― 値決めは、会社の未来を決める
当事務所では、日々の税務・会計にとどまらず、「その値上げは利益にどう効くのか」「どこまでの値引きなら許容できるのか」といった値決め・管理会計のご相談にも伴走しています。
数字は、社長の決断を縛るものではなく、決断を後押しする味方です。
私たちは「ともに未来を描く」という理念のもと、目先の一件の値決めから会社全体の利益体質づくりまで、経営者のパートナーとして支えてまいります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別具体的な経営判断を行うものではありません。実際のご判断に際しては、税理士・会計士等の専門家へご相談ください。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


