【第1回】算盤の専門家が、あえて「論語」を語る理由

投稿日:2026年05月27日

【第1回】算盤の専門家が、あえて「論語」を語る理由

朝4時起きの税理士、丸山です。

まだ外が暗く、街の喧騒が始まる前のこの時間は、私にとって頭の中を整理するための貴重なひとときです。毎朝、水を飲みながら静かにこのブログを執筆するのが日課です。

日中の私は、名古屋を拠点に東海三県を駆け回り、クライアントである製造業の経営者や不動産オーナーの方々と、決算書や税務申告書という「数字」を挟んで向かい合っています。

税理士という職業柄、私の役割は間違いなく「算盤」の専門家です。

しかし、さまざまな企業の内側を見させていただく中で、私の中で年々強くなっている実感があります。 それは、「数字(算盤)の利益が出れば良いというだけの話ではない」ということです。

私はありがたいことに、お客様の「経営指針発表会」や「経営計画発表会」などに頻繁に参加させていただいています。そこでいつもハッとさせられるのは、限られた経営資源の中で奮闘している中小企業であっても、社員の皆さんが本当に生き生きと輝いている姿です。

ご挨拶をさせていただくと、とても丁寧にお話を伺うことができます。

彼らはすべからく、「何のためにこの会社が存在しているのか」という理念を深く理解し、日々の業務で体現しています。

一方で、いかに完璧な事業計画を立てて数字上の利益を最大化し、一般的な待遇を整えたとしても、そこに「何のため」という理念がなければ、どこかで人の心が離れ、会社は足元から崩れていく。

私は現場でそうした光景も何度か目にしてきました。

たとえば事業承継の場面。自社株の評価額を引き下げ、税負担を適正化するスキームを構築することは、私たちの重要な使命です。

ですが、無傷で承継を乗り切ったとしても、後継者に会社を率いる確固たる志や、従業員・取引先への思いやりが欠けていれば、いずれその組織は傾いてしまいます。

 

ここで思い出すのが、日本資本主義の父と呼ばれる渋沢栄一の著書『論語と算盤』です。生涯で約500もの企業の設立に関わった彼は、単なる利益追求ではなく、公益を重んじる「道徳経済合一説」を生涯にわたって説き続けました。

彼は著書の中で、「正しい道理の富でなければ、その富は完全に永続することができぬ」と語っています。どんなに緻密な算盤を弾いて利益を出したとしても、そこに論語が示すような道徳や理念が伴っていなければ、その富は一過性の「浮雲」に過ぎないというのです。

愛知、岐阜、三重という東海地域は、世界に誇る製造業の集積地です。現場で汗を流し、真摯にものづくりに向き合う経営者の方々とお会いするたび、私はその愚直な姿勢に深い敬意を抱きます。地域社会や雇用を支えてきたその営み自体が、すでに一つの立派な「論語」の実践であると感じています。

しかし、日々の資金繰りや急激な環境変化に直面すると、どうしても目先の「算盤」に意識が集中してしまうのも、経営者として避けられない現実です。

だからこそ、数字の専門家として企業の奥深くまで入り込む立場の私が、あえて「論語」について語りたいと思いました。

算盤の裏付けとなる理念や、人としてのあり方が確固たるものでなければ、算盤の数字は本当の意味で生きてこないのではないか。

私自身も一人の経営者として、その答えを探し続けています。

 

今回から全6回にわたり、渋沢栄一の思想を通じて、経営と人として大事なことについて考えていきたいと思います。

次回は、今回少し触れた「人が輝く組織」についてさらに深掘りし、皆さんが直面するであろう「では、実際の経営において『算盤』が先なのか、それとも『論語』が先なのか?」というテーマに切り込んでいきます。

窓の外が少しずつ白んできました。今日もまた、誇り高きものづくりの現場へと向かう時間が近づいています。

 

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この記事の監修

丸山会計事務所 税理士 代表 丸山和秀

税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)

税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。

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