組替えで差がつく不動産の相続・贈与総合戦略

投稿日:2026年07月18日

組替えで差がつく不動産の相続・贈与総合戦略

朝4時起きの税理士、丸山です。
本日は「不動産と相続・贈与の総合戦略」についてお話しします。

 

「相続対策といえば、生前贈与でコツコツ財産を減らすこと」。
そう思い込んでいる不動産オーナーの方は少なくありません。
ですが実は、渡す“量”を調整するよりも、どの不動産を・いつ・誰に・どんな形で渡すかという「組替え(くみかえ)」の設計こそが、納税額に最も大きな差を生みます。

 
今日は、贈与・相続・売却をバラバラに考えるのをやめ、ひとつの流れとして設計する視点をお伝えします。

① 一次相続だけを見ると、必ず二次相続で損をする

よくある失敗が、目の前の一次相続(父から母・子へ)の税額だけを最小化してしまうケースです。
配偶者の税額軽減を使えば、母が全財産を相続しても相続税はほぼゼロにできます。
しかしその財産は、数年後の二次相続(母から子へ)で、配偶者軽減も使えず、法定相続人も1人減った状態で課税されます。

 

たとえば財産2億円で一次相続を母に寄せ切ると一次はゼロでも、二次で約3,340万円かかる計算です。
ところが一次で子にも一定額を相続させ、二段階に分けて設計すれば、合計の税負担を数百万円単位で圧縮できることは珍しくありません。
ポイントは、母がすでに持っている固有財産や、母の年齢・今後の生活費まで含めて“二回分”を一枚の図に描くこと

 

相続は単発のイベントではなく、二回セットで設計するのが鉄則です。

+αの視点:二次相続を無税に近づける「配偶者居住権」 

二次相続対策として近年注目されているのが、2020年に創設された「配偶者居住権」です。
これは自宅の権利を「住む権利(配偶者居住権)」と「所有する権利(負担付所有権)」に分け、母に住む権利を、子に所有する権利を相続させる手法です。

 

母は今まで通り自宅に一生住み続けられるうえ、母が亡くなった二次相続時にはこの「住む権利」の価値は消滅するため、二次相続の財産にカウントされず課税されません
単に母へ全財産を寄せるのではなく、権利を切り分けて渡す高度な組替えが効果を発揮します。

② 節税の主戦場は「資産の組替え」にある

不動産オーナーの強みは、財産の“形”を変えられることです。
現金1億円は評価も1億円ですが、賃貸物件に組み替えれば、建物は固定資産税評価(おおむね建築費の6割前後)、土地は貸家建付地として2割前後の評価減が働き、さらに小規模宅地等の特例が使えれば評価をもう一段圧縮できます。

 

組替えの発想はそれだけではありません。
稼働の悪い駐車場や更地を収益物件へ変える、共有状態でもめやすい物件を生前に分割・整理しておく、建物だけを資産管理法人へ移して家賃収入を子世代へ分散する——こうした“組替え”は、相続税・所得税・譲渡税の三方向に同時に効いてきます
ただし評価だけを狙った極端な取引は近年の裁判例で否認された例もあり、事業目的と合理性を備えた設計が欠かせません。
守りの節税ではなく、資産全体を組み直す攻めの発想が要です。

③ 贈与は“これから値上がりする資産”から動かす

生前贈与を使うなら、順番が重要です。
値下がりする資産や現金を先に贈与しても効果は限定的。
逆に、再開発予定地や収益が伸びる賃貸物件など、将来の評価上昇が見込まれる資産を早めに次世代へ移せば、値上がり分まるごとを相続財産から外せます
家賃という“果実”を生む資産なら、贈与後は子の側に収入が積み上がり、納税資金づくりにもつながります

+αの視点:借入金ごと物件を贈与する「負担付贈与」の時価課税の罠 

収益物件を子へ贈与する際、「まだローンが残っているから借入金ごと引き継がせよう」と考える方が多くいらっしゃいます。

しかし、負債と一緒に不動産を贈与する「負担付贈与」を行うと、税務上は強烈なペナルティが発動します。
通常の低い相続税評価額(路線価や固定資産税評価額)ではなく、高い「通常の取引価格(時価)」で不動産が評価されてしまうのです。
節税のつもりが想定外の莫大な贈与税を招くため、安易なローンの引き継ぎは厳禁です。

 

加えて2024年以降、暦年贈与の生前加算は3年から7年へ延長され、相続時精算課税にも年110万円の基礎控除が新設されました。
相続が近い高齢世代は精算課税で値上がり資産を早めに、時間に余裕がある世代は暦年贈与でコツコツと——といった使い分けが現実的です。
どちらを使うか、誰に何年かけて移すかは、相続の設計図とセットで逆算して決めるべきテーマです。

番外編:精算課税で「土地」を贈与すると小規模宅地等の特例が消える

使い勝手が良くなった相続時精算課税制度ですが、不動産を贈与する際には絶対に間違えてはいけないセオリーがあります。

 

それは「賃貸アパートの『土地』を精算課税で贈与してはいけない」ということです。
精算課税で生前贈与された土地は、将来の相続・精算時に、最大50%も評価を下げられる「小規模宅地等の特例」の適用が一切受けられなくなります。
生前に動かすのは「建物だけ(家賃収入だけ)」にし、特例を使いたい土地は相続まで持っておくのが資産防衛の鉄則です。

④ ともに未来を描く——攻める税理士の総合設計

贈与・相続・売却・法人化は、本来ひとつのゴールに向かう一本の戦略です。
ところが実務では、贈与は生前に、相続は相続発生後に、売却はそのつど——と担当も時期もバラバラに進み、後から「あのとき組替えておけば」という後悔が生まれがちです。

 

丸山会計事務所は、確定申告や記帳代行にとどまらず、お金が大きく動くタイミングを逃さず、資産全体を俯瞰した“組替えの設計図”を先回りでご提案する提案型の事務所です。

これまで節税を実現してきましたが、節税効果を上回る報酬がかかる提案は決してしません

 

「知らなかったことで損をした」をなくす——それが私たちの原点です。
経営理念『ともに未来を描く』のもと、目先の一手ではなく次の世代まで見据えた総合戦略を、攻める税理士として、オーナーの皆さまと一緒に組み立てていきます。

まとめ

不動産の相続・贈与は、一次と二次をセットで設計し、現金を賃貸へ、更地を収益へと“組み替える”ことで大きな差が生まれます。
贈与は値上がり資産から先に動かすのが定石です。
単発の対策ではなく、資産全体を一本の戦略として描くことが、次世代への確かな承継につながります。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務相談については専門家にご確認ください。

 

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この記事の監修

丸山会計事務所 税理士 代表 丸山和秀

税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)

税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。

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