マンションの相続税評価、令和6年から何が変わった—評価水準0.6で結論が分かれる3つの判断軸

投稿日:2026年05月18日

マンションの相続税評価、令和6年から何が変わった—評価水準0.6で結論が分かれる3つの判断軸

朝4時起きの名古屋の税理士丸山です。

「タワーマンションを買えば相続税が大きく下げられる」

――そんな話を耳にしたことはないでしょうか。

確かに従来、市場価格と相続税評価額のあいだに大きな“乖離”があり、節税策として広く活用されてきました。

ところが令和6年1月1日以後の相続・贈与から、居住用分譲マンションの評価方法が個別通達で見直されています。

「うちのマンションは関係するのか」

「結局、評価額は上がるのか下がるのか」

――読者の皆さまから多く寄せられるご質問でもあります。

本稿では、適用対象の切り分け、評価水準というカギになる数値、そして賃貸併用や小規模宅地等の特例への波及という3つの視点から整理してみます。

目次

1. なぜ令和6年から評価が変わったのか—背景と適用対象

2. 評価水準“0.6”で結論が分かれる—補正率の正体

3. 評価額が“上がる人” “下がる人”—典型ケースで読み解く

4. 賃貸併用・小規模宅地等への波及—併せて確認したい3つの実務論点

1. なぜ令和6年から評価が変わったのか—背景と適用対象

居住用分譲マンション、とくに高層階や築浅物件は、市場では高値で取引される一方、相続税評価額(路線価+固定資産税評価額ベース)は実勢価格の3〜4割にとどまる例が少なくありませんでした。

この乖離を是正するため、国税庁は個別通達を発し、価格差の主要因を「築年数」「総階数指数」「所在階」「敷地持分狭小度」の4つの指数に落とし込み、評価額に補正率を乗じる方式を採用しました。

 

適用は令和6年1月1日以後の相続・贈与から。

対象は登記簿上の種類が「居宅」となっている区分所有マンションです。

一方、事業用テナント、区分登記されていない一棟所有の賃貸マンション、地階を除く総階数が2以下の低層集合住宅、専有部分3以下を区分所有者と親族のみで使用する二世帯住宅、棚卸資産(販売用不動産)などは適用対象外とされています。

「自分のマンションは新通達の対象なのか」を最初に切り分けるだけでも、見通しは大きく変わります。

2. 評価水準“0.6”で結論が分かれる—補正率の正体

新通達のキモは、評価乖離率を「A築年数×△0.033+B総階数指数×0.239+C所在階×0.018+D敷地持分狭小度×△1.195+3.220」で求め、その逆数を「評価水準」と呼ぶ点にあります。

評価水準が0.6未満であれば、評価乖離率に0.6を掛けた値を補正率として相続税評価額に乗じることで、評価額を引き上げます。

逆に評価水準が1を超える(市場価格より相続税評価額のほうが高い)場合は、評価乖離率そのものを補正率として評価額を引き下げます。

0.6以上1以下の中間ゾーンであれば、従来どおりの評価額のまま、補正は不要です。

 

つまり、新通達は一律の増税ではなく、市場価格との乖離が大きすぎる物件だけ評価が動くしくみといえます。

試算してみると、築浅・高層・敷地持分が小さいタワー物件ほど評価水準が下振れし、評価額が上方補正される一方、築古・低層・敷地持分が大きい物件は影響が限定的、あるいは下方補正となるケースもあります。

3. 評価額が“上がる人” “下がる人”—典型ケースで読み解く

実務上ご相談が多いのは、次の3つのパターンです。

一つ目は、築10年以内・30階以上のタワーマンション高層階を保有しているケース。

評価水準が0.4を下回る試算になることも珍しくなく、補正後の相続税評価額が補正前の1.5倍以上に跳ね上がる例も出ています。暦年贈与・相続時精算課税の選択や、生前贈与の時期を再点検する余地があります。

 

二つ目は、築20年超・10階建て程度・敷地持分が比較的大きいファミリーマンション。

評価水準が0.6〜1の範囲に収まり、補正なし(従来評価のまま)となる可能性が高い類型です。

三つ目は、地方圏で評価額が市場価格を上回るような物件。

需給が緩んでいる築古マンションでは、補正で評価が下がる方向に働くケースもあり得ます。「タワマン規制で全員増税」と一括りにせず、物件ごとに評価水準を試算することが第一歩です。

4. 賃貸併用・小規模宅地等への波及—併せて確認したい3つの実務論点

新通達の影響は、自用マンションの評価額にとどまりません。

第一に、貸家・貸家建付地評価への波及です。居住用区分所有財産が貸家として供されている場合、補正後の価額を出発点に「自用地評価×(1−借地権割合×借家権割合×賃貸割合)」で貸家建付地評価を計算します。

借家権割合(一律30%)や賃貸割合の取り方は従来どおりですが、計算の母数が動く点に注意が必要です。

 

第二に、小規模宅地等の特例の適用基礎となる土地評価額も、補正後の価額がベースになります。

特定居住用宅地等(330㎡まで80%減額)や貸付事業用宅地等(200㎡まで50%減額)の限度面積は変わりませんが、減額計算の母数が変わるため、最終的な減額金額が増減します。

 

第三に、借地権付分譲マンションの「貸宅地(底地)」評価には新通達の補正は適用されない点。

底地保有のオーナー様については、従来どおりの評価方法で判断する必要があります。

おわりに

新通達は、いわゆる“タワマン節税封じ”の側面が強調されがちですが、本質は「相続税評価が市場価格と大きく乖離した物件の見直し」にあります。

すべての方が増税となるわけではなく、物件特性によっては影響が限定的、あるいは評価が下がるケースもあります。

重要なのは、保有マンションごとに評価水準を試算し、生前対策の手順を組み直すことです。

当事務所では、お持ちのマンションの所在階・築年数・敷地持分から評価水準のシミュレーションを行い、生前贈与・組替え・賃貸化までを含めた相続対策をご提案しています。

経営理念「ともに未来を描く」のもと、お一人おひとりの資産状況に寄り添ったご支援を続けてまいります。気になる点があれば、どうぞお気軽にご相談ください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別具体的な税務判断を行うものではありません。実際のご判断に際しては、税理士等の専門家へご相談ください。また、税制は改正される場合があります。本記事は令和7年度時点の税制を参考にしています。

 

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この記事の監修

丸山会計事務所 税理士 代表 丸山和秀

税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)

税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。

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