そのM&A仲介、本当にあなたの味方ですか?― 仲介・FA・手数料で損をしないための3つの視点 ―
投稿日:2026年08月07日

朝4時起きの名古屋の税理士丸山です。
後継者が見つからず、思い切ってM&A仲介会社に相談してみた。
担当者は感じがよく、「いいお相手がいますよ」と一社を紹介してくれた——。
ここで、ふと不安がよぎった経営者は少なくありません。
「この一社に決めてしまっていいのか」「手数料は妥当なのか」「そもそも、この人は本当に“私の味方”なのか」。
会社を一代で築き上げた経営者にとって、M&Aは人生で一度きりの大勝負です。
相手の言うままに進めて、後から「もっと高く売れたはずだ」「こんな手数料は聞いていない」と悔やむわけにはいきません。
今日は、仲介会社と付き合ううえで損をしないための三つの視点——①仲介とFAの違い、②手数料の仕組み、③契約書の落とし穴——を整理します。
目次
1. 「仲介」と「FA」は似て非なるもの
2. レーマン方式 ― 同じ「5%」でも請求額は倍違う
3. 業務委託契約に潜む三つの落とし穴
4. 損をしないための進め方
1. 「仲介」と「FA」は似て非なるもの
まず押さえたいのは、M&Aの支援機関には「仲介」と「FA(フィナンシャル・アドバイザー)」という、立場のまったく異なる二種類がある、という事実です。
仲介は、売り手と買い手の間に一人で立ち、双方をまとめる形(相対取引)です。
一対一のマッチングで交渉がシンプルにまとまりやすく、機密情報が漏れるリスクも低い反面、買い手に競争相手がいないため譲渡価額が上がりにくい、という弱点があります。
しかも仲介会社は売り手・買い手の双方から報酬を受け取るため、構造的に「どちらの味方でもない」立場になりがちです。
両者の妥協点を探る交渉は、結果として売り手の利益を削る方向に働くことがあります。
一方FAは、売り手なら売り手だけの側に立って助言する「片側助言」です。
複数の買い手候補と同時に交渉を進めたり、競争入札にかけたりできるため、価額を最大化しやすいのが強みです。
ただし業界内に情報が広がりやすく、進行の負担も重くなります。
どちらが正解かは状況によります。
相続の発生などで急いで経営権を移す必要があるなら仲介が現実的ですし、時間をかけて価額を最大化したいならFAや競争入札が有利です。
大切なのは、「今、目の前の担当者は誰の利益のために動いているのか」を意識すること。
それだけで、交渉の見え方は大きく変わります。
2. レーマン方式 ― 同じ「5%」でも請求額は倍違う
次に、避けて通れないのが手数料です。
M&A仲介の成功報酬は「レーマン方式」で計算されるのが一般的で、譲渡金額の規模に応じて段階的に料率が下がっていきます。
目安は、5億円以下の部分が5%、5億円超〜10億円が4%、10億円超〜50億円が3%、といった具合です。
たとえば譲渡金額が3億円なら、成功報酬はおおよそ1,500万円(3億円×5%)となります。
ここで最大の落とし穴が、「何に料率を掛けるか」という基準の違いです。
同じ「5%」でも、株式の価値(オーナーの受取額)を基準にする会社と、負債まで含めた総資産を基準にする会社とでは、請求額が二倍以上変わることも珍しくありません。
さらに、着手金・月額報酬・中間金の有無、そして「最低手数料」の設定によっても総額は大きく動きます。
中小案件では、料率上は少額でも最低手数料として数百万円以上が定められているケースが多いのです。
なお、2024年には国のルールも動きました。
中小企業庁は「中小M&Aガイドライン」を改訂し、仲介会社に手数料の算定基準や最低額を明示するよう求めています。
業界団体でも、売り手・買い手の双方から受け取る手数料の総額を両者に説明することが義務づけられました。
見積りを取るときは、料率だけでなく「算定の基準」と「総額」を、必ず文書で確認してください。
3. 業務委託契約に潜む三つの落とし穴
三つ目は、業務委託契約書の中身です。
実務では、次のような条項に注意が必要です。
一つ目は「専任条項」。
一定期間、他社に相談してはならないという縛りで、それ自体は珍しくありませんが、期間が長すぎたり、解約しづらかったりする内容は要注意です。
二つ目は「テール条項」。
契約が終了した後も、一定期間内に成約すると手数料を支払う義務が残る取り決めで、期間の長さを必ず確認しましょう。
そして最も警戒すべきなのが、セカンドオピニオンを封じる条項です。
「当社以外の専門家の助言を受けてはならない。
受けてM&Aが成立した場合であっても、成功報酬の全額を支払う」——こうした一文が入っていれば、あなたは顧問税理士にすら相談できなくなります。
会社の一生を左右する取引で、外部の目を遮断させる契約は、原則として結ぶべきではありません。
改訂後のガイドラインでも、こうしたセカンドオピニオンを確保できる環境が重視されています。
署名の前に、必ず一条ずつ読み込みましょう。
4. 損をしないための進め方
最後に、損をしないための進め方です。
ポイントは、「早い段階で一社に絞らない」こと。
担当者から「最適なお相手が見つかりました」と言われても、そこで即決してはいけません。
可能な限り複数の候補から意向表明書を受け取り、譲渡価額だけでなく、従業員の処遇や譲渡後の運営方針まで含めて比較検討するのが鉄則です。
そして、その比較を一人で抱え込まないこと。
仲介会社が提示した株価が本当に妥当か、契約条項に不利な点はないか——こうした判断は、利害関係のない顧問税理士や金融機関の目を通すことで、初めて客観性が生まれます。
実際、仲介会社が「時価純資産+営業権」でざっくり弾いた株価と、買い手がDCF法で精緻に計算した価額とが、大きく食い違うことは日常茶飯事です。
数字の根拠を一緒に読み解ける専門家がそばにいるかどうかで、最終的な手取りは大きく変わってきます。
おわりに ― ともに未来を描く
当事務所では、単に税務申告を代行するだけでなく、M&A・事業承継の入口から出口まで、経営者と同じ側に立って伴走することを大切にしています。
仲介会社の見積りや契約書のセカンドオピニオン、提示された株価の妥当性の検証、譲渡後の税負担のシミュレーションまで——「本当にこの条件でいいのか」と迷ったとき、いつでもご相談ください。
私たちの経営理念は「ともに未来を描く」。
会社と、そこで働く仲間と、ご家族の未来を守る選択を、これからも一緒に考えていきます。
組織再編・事業承継・M&A支援まで、名古屋の丸山会計事務所にお任せください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別具体的な経営判断を行うものではありません。
実際のご判断に際しては、税理士・会計士等の専門家へご相談ください。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


