会社の数、増えすぎていませんか?──グループ合併で経営を「ひとつ」にする
投稿日:2026年07月14日

おはようございます。
朝4時起きの名古屋の税理士丸山です。
「気づけばグループ会社が三社、四社……」。
後継者への承継を機に、あるいは事業拡大の過程で、いつの間にか会社の数が増えていた──そんな中小企業のオーナーは少なくありません。
会社が分かれていれば決算や申告の手間は会社の数だけかさみ、片方が黒字でもう片方が赤字なら、グループ全体では利益が出ていなくても税金だけが重くのしかかります。
「そろそろ一つにまとめられないか」。
今日はその有力な選択肢である『合併』について、
①合併で本当に身軽になるのか、②税の優遇が受けられる『適格合併』の条件、③見落としがちな繰越欠損金の落とし穴という三つの視点から整理します。
目次
1.なぜ今、グループ会社の「合併」なのか
2.税負担を左右する「適格合併」三つの類型
3.繰越欠損金は引き継げるか――5年の壁と「みなし共同事業要件」
4.合併を成功させる進め方とPMIの勘所
1.なぜ今、グループ会社の「合併」なのか
複数の会社を一つに統合する合併には、はっきりとした経営上の実利があります。
第一に、決算・申告・社会保険といった事務負担が会社ごとに発生していたものを一本化でき、管理コストが下がります。
第二に、黒字会社と赤字会社が別法人のままでは互いの損益を通算できませんが、合併すれば一つの法人のなかで利益と損失が相殺され、結果として法人税の負担が軽くなる可能性があります。
第三に、意思決定の窓口が一つになり、取引先や金融機関から見た信用力やわかりやすさも高まります。
一方でデメリットもあります。
許認可の承継手続、会計システムや就業規則の統合、消滅する会社の屋号やブランドが失われる点などです。
とりわけ注意したいのは、『分けておくべき事業』まで一緒にしてしまうことです。
リスクの高い新規事業や、将来の売却を見据えた事業は、あえて別法人に残しておいたほうが身動きが取りやすい場合もあります。
合併ありきで進めるのではなく、『何のために一つにするのか』を先に決めることが出発点です。
2.税負担を左右する「適格合併」三つの類型
合併には、税務上『適格合併』と『非適格合併』があります。
適格に該当すれば、消滅会社の資産・負債は帳簿価額のまま引き継がれ、その時点で含み益に課税は生じません。
非適格なら資産を時価で移転したものとされ、含み益に課税が及びます。
ここが税負担の大きな分かれ目です。
適格合併の類型は大きく三つに分かれます。
①完全支配関係(株式を100%保有する関係)にある会社どうしの合併、
②支配関係(50%超を保有する関係)にある会社どうしの合併、
③共同で事業を営むための合併です。
①では『金銭等不交付要件』を満たせば適格となり、要件は最もシンプルです。
②ではこれに加えて、従業者のおおむね80%以上を引き継ぎ、主要な事業を続けるといった継続要件が求められます。
③ではさらに、事業の関連性、事業規模がおおむね5倍以内であること(または役員が経営に参画すること)、株式を継続して保有することなどの要件が加わります。
グループ内の親子会社・兄弟会社の合併は①または②に当たることが多く、要件を満たしやすいのが実務上のポイントです。
3.繰越欠損金は引き継げるか――5年の壁と「みなし共同事業要件」
赤字会社を合併する最大の狙いが『繰越欠損金(過去の赤字)の引継ぎ』であることは少なくありません。
適格合併なら原則として消滅会社の繰越欠損金を引き継げますが、ここに落とし穴があります。
支配関係が生じてから5年以内に行う合併で、かつ『みなし共同事業要件』を満たさない場合には、引き継げる欠損金や、合併後に実現する含み損(特定資産譲渡等損失)の損金算入に制限がかかるのです。
これは、赤字会社を持ってきて節税に使うといった租税回避を防ぐための仕組みで、当事者に回避の意図があるかどうかにかかわらず、要件に当てはまれば自動的に制限が及びます。
回避策としては、
(イ)5年を超える支配関係を築いてから合併する、
(ロ)あえて非適格を選ぶ、
といった選択肢があります。
意外に思われるかもしれませんが、会社の置かれた状況によっては、非適格合併のほうが税務上有利になる場合もあります。
『とにかく適格に』という思い込みは禁物で、自社にとってどちらが得かを数字で確かめることが欠かせません。
なお、5年を超える支配関係があっても、合併に事業上の合理的な理由がなければ、包括的な租税回避防止規定が適用される可能性がある点にも注意が必要です。
4.合併を成功させる進め方とPMIの勘所
合併を実行に移す際は、(1)合併比率・対価の決定、(2)債権者保護手続や株主総会の特別決議といった会社法上の手続、(3)合併後の統合(PMI)という三つの段取りを踏みます。
とりわけ見落とされがちなのが(3)です。
人事制度や給与体系、会計システムをどう一本化するか、消滅会社の従業員の処遇をどう設計するかによって、合併の成否は大きく変わります。
形のうえで一つの会社になっても、中身がそろわなければ現場は混乱します。
税務面では、非適格合併で生じる『資産調整勘定(いわゆる営業権・のれん)』は、合併後60か月(5年)にわたって規則的に取り崩され、損金に算入されていきます。
のれんが将来の節税につながるケースもあり、適格と非適格のどちらが有利かは、繰越欠損金・含み損・のれんを合わせて総合的に判断する必要があります。
数字の比較をしないまま『とりあえず合併』と進めてしまうのが、最も危険な進め方です。
ともに、これからの「かたち」を
当事務所では、『会社の数を減らしたいが、税金や手続が不安だ』という経営者の声に数多く向き合ってきました。
合併・会社分割・株式交換といった組織再編は、単なる節税の道具ではなく、次の世代へ事業をつなぐための経営戦略そのものです。
私たちは税務にとどまらず、再編スキームの設計から事業承継して統合後の伴走までを一貫してお手伝いします。
経営理念『ともに未来を描く』のとおり、御社にとって最適なこれからのかたちを、一緒に考えてまいります。
組織のかたちに迷われたら、ぜひ一度ご相談ください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別具体的な経営判断を行うものではありません。
実際のご判断に際しては、税理士・会計士等の専門家へご相談ください。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


