住宅・教育・配偶者控除 目的別贈与の非課税4枠

投稿日:2026年08月19日

住宅・教育・配偶者控除 目的別贈与の非課税4枠

朝4時起きの税理士、丸山です。

本日は「贈与税の各種非課税特例を、目的別に使い分ける方法」についてお話しします。

「贈与といえば、年間110万円までの暦年贈与でコツコツ財産を減らすもの」――そう思い込んでいる方が、実はとても多いのです。
しかし、この110万円だけに頼っていると、相続対策としてはまったく間に合わないケースが少なくありません。
贈与税には、110万円の基礎控除とは別枠で使える目的別の非課税特例がいくつも用意されています。
これらを重ねて設計すれば、一年のうちに数千万円規模の財産を、無税またはごく低い税負担で次の世代へ渡すことも可能です。


今日は、その4つの非課税枠を整理します。

1. 暦年110万円だけでは、相続対策は「間に合わない」

毎年110万円をお子さん一人に贈与しても、10年でようやく1,100万円です。
相続財産が2億円、3億円という規模のオーナーにとって、この速度では焼け石に水になりかねません。
しかも近年の改正で、相続開始前の暦年贈与を相続財産に持ち戻す「加算期間」が段階的に3年から7年へと延長されました。


つまり、亡くなる直前に慌てて暦年贈与を始めても、その多くが相続財産に足し戻され、節税効果が消えてしまうのです。
相続対策は「時間を味方につける」ことが鉄則ですが、それと同時に、110万円の器以外の非課税枠をどれだけ活用できるかが、税額を大きく左右します。

2. 目的別の非課税枠を「重ねて」使う

贈与税には、使い道を限定する代わりに大きな非課税枠が認められた特例があります。
代表的なものが3つです。
まず、直系尊属(親・祖父母)から住宅の取得資金を受け取る「住宅取得等資金贈与」。
省エネ等の良質な住宅なら最大1,000万円、一般住宅でも500万円までが非課税になります。
次に「教育資金の一括贈与」で、受贈者一人につき最大1,500万円(学校等以外は500万円)まで(※令和8年3月31日までの期限付きでした)。
そして、婚姻期間20年以上の夫婦間で居住用不動産(またはその取得資金)を贈与する「おしどり贈与(配偶者控除)」では、110万円とは別に2,000万円が控除されます。

なお、かつて併用できた「結婚・子育て資金の一括贈与(最大1,000万円)」は、令和7年3月末の適用期限をもって、惜しまれつつ廃止(終了)となりました。
現在は新規に利用できませんのでご注意ください。

たとえば、住宅取得資金1,000万円をお子さんへ、教育資金1,500万円をお孫さんへ、同じ年に贈与すれば、それだけで2,500万円を無税で移転できる計算です。
ここに配偶者への2,000万円のおしどり贈与を加えれば、一年で4,500万円規模の資産圧縮も十分に射程に入ります。
ただし、これらの特例は「いつまで使えるか(適用期限)」や「所得要件」「使い残しへの課税」など細かな条件があり、期限付きの措置も含まれます。
使う前に必ず最新の適用要件を確認することが欠かせません。

+αの視点①:教育資金の「使い残し」は、相続税の2割加算で直撃する(令和5年改正)

お孫様へ最大1,500万円を無税で一括贈与できる「教育資金の一括贈与」。
使い勝手のよい制度ですが、令和5年度税制改正によって「使い残し(管理残額)」への課税が大きく厳格化されました。
贈与者(おじいちゃん)が亡くなった時点で、お孫様がまだ在学中などで信託口座にお金が残っていた場合、その残額は「おじいちゃんの相続財産」に足し戻され、相続税の対象になります。

さらに令和5年4月1日以後の贈与からは、「相続税の課税価格が5億円を超える場合」または「受贈者が孫(相続人以外)である場合」、その使い残し分に相続税の「2割加算」が適用されます。
お孫様の年齢や就学状況、ご本人の財産規模を見ないまま満額を信託へ入れてしまうと、相続の瞬間に思わぬ納税資金難を招きかねません。

+αの視点②:おしどり贈与は、相続時の「小規模宅地等の特例(80%減額)」とバッティングする

2,000万円まで無税で自宅の名義を配偶者へ移せるおしどり贈与は非常に人気ですが、実務では「安易に使うと、将来の相続税で損をする」という落とし穴があります。
将来お父様が亡くなった際、同居のお母様がそのまま自宅を相続すれば、土地の評価額を最大80%引き下げる「小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)」が使えるからです。

相続時に8割引きで引き継げるものを、生前にわざわざ「不動産取得税」や「登録免許税(贈与は相続の5倍の税率)」といった移転コストを払って移してしまうと、特例のメリットと相殺され、コストだけが残るケースが少なくありません。
おしどり贈与は、ご夫婦のどちらが先に亡くなるかという二次相続シミュレーションまで回して、初めて損得が判定できます。

3. 「相続時精算課税」の年110万円枠が対策を変えた

近年の改正で、相続対策の設計図が大きく書き換わったのが、相続時精算課税制度です。
従来この制度は、累計2,500万円まで贈与税を先送りできる反面、贈与した財産はすべて相続時に足し戻されるため「節税にはならない」と敬遠されがちでした。
ところが改正により、精算課税を選んだ後も毎年110万円までの基礎控除が新設され、しかもこの110万円分は相続財産に加算されません。


暦年贈与の110万円が7年の持ち戻し対象になったのとは対照的に、精算課税の110万円は持ち戻し不要です。
高齢の親から確実に財産を減らしたい局面では、精算課税を選択して毎年110万円を無税で移すほうが有利になるケースが増えています。
どちらの制度を選ぶかは一度決めると原則変更できないため、入り口の判断が極めて重要です。

+αの視点③:110万円枠だけじゃない。
将来値上がりする資産の評価額を「今」で固定する

「年110万円の持ち戻し不要枠」という武器を得た相続時精算課税制度ですが、相続実務でこの制度を使う最大の目的は、実は別のところにあります。
それは「将来値上がりが見込まれる資産を、評価が一番低い“今”のうちに子へ移し、将来の相続税の課税価格を最安値で固定(ロック)する」という発想です。

精算課税で贈与した財産は、相続発生時にすべて相続財産へ足し戻されますが、その評価額は「相続時の時価」ではなく「贈与をした時の時価」です。
つまり、株価の上昇が見込まれる自社株(非上場株式)や、開発により地価の高騰が予想される土地を今のうちに移しておけば、将来どれだけ値上がりしても、相続税は贈与当時の安い価格でしか計算されません。
これが、攻める税理士が資産家向けに設計する精算課税の本当の威力です。

4. 丸山会計は「攻めの贈与設計」でともに未来を描きます

贈与の特例は、一つひとつ見れば国税庁のパンフレットにも載っている公知の制度です。
しかし、どの枠を、誰に、いつ、いくら、どの順番で使うか――この組み合わせ次第で、最終的な相続税額は数百万円から数千万円単位で変わります。


私たち丸山会計事務所は、確定申告や記帳代行にとどまらず、お金が大きく動くこのタイミングでこそ差がつく「提案型の節税」を強みとしています。
守りではなく、家族構成・資産構成・将来の相続まで見据えて非課税枠を組み立てる攻める税理士として、数々の納税者の事例に対応してきました。
経営理念である「ともに未来を描く」の通り、目先の税額だけでなく、ご家族が円満に資産を受け継ぐ道筋までご一緒に描いていきます。

まとめ

相続・贈与対策は、年110万円の暦年贈与だけでは間に合いません。
住宅取得等資金、教育資金、配偶者控除(おしどり贈与)、そして相続時精算課税の110万円枠――目的別の非課税枠を重ねて使うことで、一年で数千万円規模の資産圧縮も可能になります。
ただし各特例には期限や要件があり、選択の順番が結果を左右します。
「知らずに損をした」を避けるため、早めの設計をおすすめします。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務相談については専門家にご確認ください。

 

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この記事の監修

丸山会計事務所 税理士 代表 丸山和秀

税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)

税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。

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