10年贈与が全否認 名義預金にしない5つの証拠
投稿日:2026年08月01日

朝4時起きの税理士、丸山です。
本日は生前贈与・暦年贈与の活用法、なかでも「贈与したつもりが贈与になっていなかった」という失敗パターンについてお話しします。
「毎年110万円ずつ、子どもの通帳に振り込んでいるから相続税対策はできている」。
相談の場で本当によく耳にする言葉です。
しかし実務では、その10年分1,100万円がまるごと相続財産に戻され、追徴課税を受けるケースが後を絶ちません。
贈与は「渡したつもり」では成立しないからです。
今日は、税務調査で崩れない贈与にするための5つの証拠づくりを、実例ベースで整理します。
1.10年間の贈与が「名義預金」で全否認された理由
名古屋市内で賃貸物件を3棟お持ちだったAさんは、10年にわたり長男・長女それぞれに毎年100万円を贈与していました。
ところが相続税の税務調査で、2人分あわせて2,000万円が「名義預金」と認定されます。
理由は3つ。
通帳と印鑑を父が金庫で保管していたこと、子ども自身が口座の存在を知らなかったこと、そして印鑑が父の実印と同じものだったことです。
贈与は民法上の契約であり、「あげます」「もらいます」という双方の意思表示があって初めて成立します。
受贈者が知らない口座は、名義が子でも実質は父の財産。
相続税率が30%なら約600万円もの追徴です。
逆にいえば、通帳・印鑑・キャッシュカードを子が管理し、子が自由に使える状態にしておくだけで、この否認は防げたということです。
2.「定期贈与」と言われないための契約書と運用
もう一つの落とし穴が定期贈与です。
「毎年100万円を10年間贈与する」と最初に約束していたと見なされると、初年度に1,000万円を一括贈与したものとして課税されます。
特例税率でも約177万円の贈与税です。
防御策はシンプルで、贈与のつど「贈与契約書」を作ること。
日付・金額・当事者の署名押印を毎年新たに残し、贈与の時期や金額もあえて変える。
現金手渡しは証拠が残らないので、必ず銀行振込で足跡を残します。
契約書に確定日付を付ければ、日付の後付けを疑われることもありません。
年間110万円を超える贈与をあえて行い、少額の贈与税を申告・納付して申告実績を残す方法も有効です。
3.7年加算の時代に効く「贈与先」の選び方
令和5年度改正により、生前贈与加算の期間は3年から7年へ段階的に延長されています。
令和13年1月1日以降の相続からは、亡くなる前7年以内の贈与が相続財産に加算されます(延長された4年分は合計100万円まで控除)。
「そろそろ贈与を始めよう」では間に合わない時代になりました。
ここで効いてくるのが贈与先の選択です。
加算の対象は「相続または遺贈により財産を取得した者」に限られます。
つまり相続で財産を取得しない孫や子の配偶者への贈与は、原則として加算されません。
一世代とばして財産を移せる点でも効果的です。
ただし孫を生命保険金の受取人にしていたり、遺言で財産を残したりすると加算対象になってしまうため、保険と遺言の設計まで含めた確認が必須です。
また、もう一つの対抗策として、新しくなった「相続時精算課税制度」の活用も挙げられます。
令和6年以降、同制度を選択して行う年110万円以下の贈与については、申告不要となるだけでなく、相続時の持ち戻しも一切不要となりました。
将来相続人となる子に対する確実な財産移転の手段として、暦年贈与との比較検討が欠かせません。
4.不動産オーナーは「建物だけ」を贈与する
現金を毎年110万円ずつ動かすより、不動産オーナーに効くのが賃貸建物そのものの贈与です。
築古アパートは建物の相続税評価額が固定資産税評価額ベースとなり、貸家なら借家権割合30%を控除して評価額はさらに7割。
時価5,000万円で建てた物件でも、評価額が800万円程度まで下がっている例は珍しくありません。
この状態で建物だけを子に贈与すれば、以後の家賃収入がまるごと子に移ります。
年間家賃500万円なら、10年で5,000万円の資産移転が贈与税ゼロで進む計算です。
土地は父が持ったまま、子から地代を取らない使用貸借にしておけば借地権の認定課税もありません。
注意点は敷金です。
預り敷金を引き継がせると「負担付贈与」となり、評価額ではなく時価で課税されてしまいます。
敷金相当額の現金を建物と一緒に贈与しておく——この一手間の有無で税額が数百万円変わります。
5.丸山会計は「渡し方」まで一緒に設計します
贈与は、金額を決めることより「どう渡すか」で結果が変わります。
私たちは確定申告や記帳代行にとどまらず、誰に・何を・どの順番で渡すのかを、10年20年の時間軸で一緒に描いていきます。
「知らなかったことで損をした」をなくしたい。
それが提案型の“攻める税理士”としての私たちの原点です。
贈与契約書のひな形づくりから、建物贈与のシミュレーション、遺言・保険との整合まで、経営理念である「ともに未来を描く」を実務に落とし込んでご支援します。
まとめ
贈与は「あげた」だけでは成立しません。
受贈者が口座を管理していること、毎年契約書を作ること、振込で足跡を残すこと。
この3点で名義預金・定期贈与の否認は防げます。
そのうえで、7年加算の対象外となる孫への贈与や、評価が下がった賃貸建物の贈与といった攻めの一手を重ねれば、効果は桁違いになります。
贈与は始めるのが早いほど有利です。
まずは現状の棚卸しから始めましょう。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務相談については専門家にご確認ください。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


