後継者がいない会社は、畳むしかない?――親族内・従業員・M&A、3つの承継の選び方
投稿日:2026年07月24日

朝4時起きの名古屋の税理士丸山です。
「うちには継ぐ子どもがいない」「番頭に任せたいが、株の買取り資金が…」「M&Aと言われても、いくらで売れるのか、そもそも何から手をつければ…」。
後継者不在は、いまや多くの中小企業が抱える切実な悩みです。
しかし、会社を残す道は決してひとつではありません。
本稿では、承継先を
①親族内②従業員③第三者(M&A)
の3つに整理し、それぞれの壁と、経営者が損をしないための判断の順序を、3つの視点からお伝えします。
目次
1. 承継先は3つある――全体像と向き・不向き
2. 「継がせたいのに継げない」壁――株式買取り資金と個人保証
3. M&A(第三者承継)で損しない交渉の順序
4. 自社株の評価は二つある――相続税評価とM&A時価のギャップ
1. 承継先は3つある――全体像と向き・不向き
事業承継の相手は、大きく分けて「親族内」「従業員(役員)」「第三者(M&A)」の3通りです。
かつては親族内が当たり前でしたが、子が別の道を選ぶ時代となり、いまや3つを並べて比較する発想が欠かせません。
親族内承継は、経営理念や取引関係を引き継ぎやすい反面、自社株の贈与・相続に伴う税負担が重くのしかかります。
従業員承継は、事業を知り尽くした人材に託せる安心感がある一方、後述する「資金」と「保証」の壁が立ちはだかります。
第三者承継(M&A)は、後継者不在でも会社と雇用を残せるうえ、経営者は売却対価という引退後の資金を手にできます。
どれが正解ということはなく、「誰に・何を・いくらで」引き継ぐかで最適解は変わります。
まずは3つを机の上に並べ、消去法ではなく比較で選ぶことが出発点です。
2.「継がせたいのに継げない」壁――株式買取り資金と個人保証
「番頭の彼に継がせたい」――そう考える経営者は多いのですが、従業員承継には二つの現実的な壁があります。
一つ目は株式の買取り資金です。
後継者となる従業員が、あなたの持つ自社株を買い取るには多額の現金が要ります。
個人でそれだけの資金を用意できる人は稀でしょう。
ここで活用できるのが日本政策金融公庫の事業承継向け融資で、国民生活事業では限度額7,200万円、返済期間は設備資金で20年以内、運転資金で7〜8年以内といった条件で、後継者個人の株式取得資金を支えてくれます。
二つ目は個人保証です。
会社の借入金にあなたが連帯保証を入れている場合、そのまま後継者に引き継がせれば、彼は「会社が傾けば自分も破産」というリスクを背負います。
ここは「経営者保証に関するガイドライン」に基づき、承継のタイミングで金融機関と保証の見直しを交渉できます。
過去の投資による重い借入まで背負わせると承継そのものが頓挫しますから、身軽な事業だけを引き継がせるという設計も検討に値します。
3. M&A(第三者承継)で損しない交渉の順序
第三者承継(M&A)で最も多い後悔が「安く売ってしまった」です。
譲渡側が交渉で不利になりやすい構造があるからです。
最大の落とし穴は、希望譲渡額を自分から先に口にしてしまうこと。
買い手は必ずそれを上限(天井)と受け取ります。
相場より低い額を告げれば、その低い数字が交渉のスタートラインになってしまう。
ですから意向表明の前に、こちらから金額を提示するのは基本的に避け、まず相手に評価させるのが鉄則です。
また、スキームによって手取りは大きく変わります。
株式譲渡なら、売却益に対する税率は約20.315%と比較的軽く、手続きも比較的シンプルです。
一方、事業譲渡は会社に法人税が課され、そこから個人が受け取るには配当や退職金という段階を経るため、税負担が重くなりがちです。
「いくらで売れるか」だけでなく「手元にいくら残るか」で判断することが肝心です。
4. 自社株の評価は二つある――相続税評価とM&A時価のギャップ
最後に、経営者を最も混乱させるのが「自社株の値段が二つある」という事実です。
一つは相続税評価額。
これは財産評価基本通達に基づき、類似業種比準や純資産などで機械的に算定される、税金計算のための金額です。
もう一つはM&A時価。
これは買い手が「将来いくら稼ぐ会社か」で評価する金額で、中小企業では時価純資産に営業利益の数年分(いわゆる年買法)を上乗せして概算することが多く、両者は大きく食い違います。
たとえば相続税評価では数千万円でも、収益力の高い会社ならM&A時価はその何倍にもなり得ます。
逆に、含み損や過大な役員退職金負担があれば時価は下がります。
この二つの評価を早めに把握しておくことが、贈与で継がせるか売却するかという入口の判断を、正しく導いてくれます。
むすびに
後継者不在は、決して「廃業」の同義語ではありません。
親族内・従業員・M&A――どの道にも税務・法務・資金の論点が絡み合い、選び方ひとつで手元に残るものが大きく変わります。
当事務所では、税務申告にとどまらず、自社株評価、承継スキームの設計、組織再編やM&Aの支援まで、経営者お一人おひとりの事情に寄り添って伴走いたします。
私たちの理念は「ともに未来を描く」。
会社と、ご家族と、従業員の未来をどう残していくか。
その選択を、ぜひ早い段階から一緒に考えさせてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別具体的な経営判断を行うものではありません。実際のご判断に際しては、税理士・会計士等の専門家へご相談ください。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


