5億円以上の大型設備投資を後押しする「大胆な投資促進税制(特定生産性向上設備等投資促進税制)」の詳細解説
投稿日:2026年03月09日
おはようございます。
朝4時起きの税理士の丸山です。
日本企業の「稼ぐ力」を向上させるため、令和8年度税制改正において新たに
「大胆な投資促進税制(特定生産性向上設備等投資促進税制)」が創設される予定です。
本制度は、一定規模以上の高付加価値な国内設備投資に対して、
「即時償却」または「最大7%の税額控除」という非常に強力なインセンティブを付与するものです。
特に、5億円以上の設備投資を予定されている中堅・中小企業の皆様にとっては、
キャッシュフローの大幅な改善が見込める重要な制度となります。
本記事では、制度の詳細な要件やシミュレーション事例、
実務上極めて重要となる「他の税制(経営力向上計画等)との有利不利判定」のポイントについて解説します。

1. 制度の概要と対象法人
青色申告書を提出する法人が対象となります。
全業種が対象であり、幅広い企業が利用可能です。
※なお、大企業(中小企業者等以外の法人)が適用を受ける場合には、所得が前期を上回る事業年度において、
「継続雇用者給与等支給額が対前年度比で1%(または2%)以上増加していること」かつ
「国内設備投資額が当期償却費総額の30%(または40%)を超えること」という要件を満たす必要があります
(いわゆるムチ税制)。
中堅・中小企業(中小企業者等)であればこの制限は受けません。
2. 対象となる資産と規模要件
法人の事業の用に直接供される以下の設備等(新品に限る)で、一定の取得価額以上のものが対象となります。
建物や構築物が対象に含まれている点が大きな特徴です。
- 機械装置:1台又は1基につき 160万円以上
- 工具及び器具備品:1台又は1基につき 120万円以上(40万円以上かつ事業年度の合計が120万円以上を含む)
- ソフトウェア:一の取得価額が 70万円以上
- 建物:一の取得価額が 1,000万円以上
- 建物附属設備及び構築物:一の取得価額が 120万円以上(建物附属設備は60万円以上かつ事業年度の合計が120万円以上を含む)
3. 適用要件(投資計画の経済産業大臣確認)
本税制の適用を受けるためには、設備投資について以下の基準を満たす「投資計画」を策定し、
経済産業大臣の確認を受ける必要があります。
- 投資下限額要件:生産性向上設備等の取得価額の合計額が5億円以上(大企業の場合は35億円以上)であること。
- 投資利益率(ROI)要件:投資計画における年平均の投資利益率が15%以上となることが見込まれること。
- 計算式:(営業利益+減価償却費)÷ 設備投資額
- プロセス要件:投資計画に資金調達手段が記載されており、取締役会等の適切な機関の意思決定に基づくものであること。
- 投資増加要件:当該設備の導入が、法人の設備投資を増加させるものであること等。
4. 税制インセンティブの内容
対象資産ごとに、以下のいずれかの措置を選択適用できます。
- 即時償却:取得価額の100%を全額損金算入
- 税額控除:
- 機械装置、工具及び器具備品、ソフトウェア:取得価額の7%
- 建物、建物附属設備、構築物:取得価額の4%
- ※税額控除の上限は、当期の法人税額の20%となります。
適用期限
2029年(令和11年)3月31日までに投資計画の確認を受け、その確認を受けた日から5年以内に設備等を取得し、事業の用に供する必要があります。大型設備投資特有の建設工事の長期化にも対応した期間設定となっています。
5. 【具体例】シミュレーション事例
自社製品の生産能力拡大のため、
総額100億円の工場新設(建物50億円、機械装置30億円、ソフトウェア20億円)を行う
中堅企業のモデルケースでシミュレーションします。
【パターンA:即時償却を選択した場合】
取得価額の全額(100億円)を投資初年度に一括して損金算入できます。
仮に実効税率を約30%とした場合、初年度に約30億円の税負担軽減効果(キャッシュフローの改善効果)が見込め、
早期の投資回収と手元資金の確保が可能となります。
【パターンB:税額控除を選択した場合】
- 建物(50億円)× 4% = 2億円
- 機械装置(30億円)× 7% = 2.1億円
- ソフトウェア(20億円)× 7% = 1.4億円 合計:5.5億円の減税効果(法人税の免除)が得られます(※ただし当期法人税額の20%が上限)。
※さらに、改正産業競争力強化法に基づく「国際経済事情激変事業適応」の認定を受けた場合には、
控除限度額を超過した分について最大3年間の繰越控除が認められます。
6. 【重要】実務上の注意点:他税制(経営力向上計画等)との選択適用
本税制の適用にあたって実務上最も注意すべき点は、
他の設備投資促進税制との重複適用が制限されるという点です。
本税制の投資計画の期間中は、以下の税制による特別償却・税額控除の適用を受けることができません。
- 中小企業経営強化税制(経営力向上計画)
- 地域未来投資促進税制
- カーボンニュートラルに向けた投資促進税制
特に5億円規模の投資を行う中堅企業(中小企業者等)においては、
「中小企業経営強化税制(経営力向上計画)」と「大胆な投資促進税制」の
どちらの計画認定を取得し、適用する方が自社にとってトータルで有利になるかを、
投資実行前に慎重に比較検討(シミュレーション)する必要があります。
例えば、中小企業経営強化税制では税額控除が最大10%(本税制は最大7%)となるケースがある一方で、
本税制では中小企業経営強化税制では対象外となりやすい
「建物(1,000万円以上)の即時償却・税額控除」が認められるなど、対象資産や控除率に差異があります。
また、事業全体の投資計画の期間や規模によっても有利不利が変動します。
7. おわりに
「大胆な投資促進税制」は、建物を伴うような大型設備投資において、
数億円規模のキャッシュフロー改善効果をもたらす強力な制度です。
しかし、要件を満たすための投資計画の策定や、
経営力向上計画等の他税制との緻密なシミュレーションによる有利不利判定など、
専門的な知見が不可欠となります。
設備投資を計画されている経営者・財務担当者の皆様は、建物の設計や設備の契約を行う前に、
お早めに当会計事務所までご相談ください。
貴社の投資計画に合わせた最適な税制選択と、計画策定のサポートを全面的にバックアップいたします。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


