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持株会社(ホールデイングス)で事業承継税制を活用

投稿日:2023年01月25日

事業承継税制は、後継者が事業を継いだときに贈与税、相続税の負担を猶予し、円滑な事業承継をおこなうための制度です。創設以来何度も改正され、だんだんと使い勝手が良くなってきました。

ただしさまざまな要件があります。逆に、要件を満たせば事業承継税制を活用できるともいえます。

このブログでは、持株会社を設立し、この持株会社の株式に事業承継税制を適用して次世代に株式を移転することで、事業承継税制の恩恵を受けながら、実際に事業を行なっている事業会社の代表は変えずにいられる方法をご説明します。

事業会社の代表権はまだ譲れないが、実質的に事業会社の株式を事業承継税制の恩恵を受けて早く譲渡したいケースなど、さまざまな活用方法がありますので、参考にしてみしてください。

1.事業承継税制とは

法人版事業承継税制の特例措置の概要は、以下のとおりです。

・後継者が事業を承継する際に、自社株を贈与または相続等で後継者が取得した場合に、贈与税、
相続税が発生してしまうと、事業承継時の負担が大きくなります。
このため贈与税、相続税を全額納税猶予してくれる制度です。

・事業承継税制を使って贈与している場合で、贈与をした先代が死亡した場合には、
贈与した株式及び猶予されていた贈与税は、相続税の計算に組み込まれ、
相続税も同じように納税猶予を受けることが可能とされます。

・後継者の死亡等により、納税が猶予されている贈与税、相続税の納付は免除されます。

・適用にあたっては、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」に基づく認定等が必要です。

この他にも、一般措置の事業承継税制がありますが、緩和されている分、受けられる恩恵も減ってしまいます。

中小企業が事業承継をおこない事業を継続できれば、事業の技術を残せるだけでなく雇用も守れ、経済の活性化につながります。事業承継税制は、円滑な事業承継を後押しするための制度です。

2.持株会社(ホールディングス)とは

事業承継の際に、持株会社(ホールディングス)を活用する方法があります。持株会社とは、他の事業会社の株式を多数保有して、実質的に事業会社の経営権を握り支配するための会社です。

持株会社にも種類があり、株式を所有して他社を支配する目的の会社だけでなく、持株会社自体も事業活動をおこないつつ他社の株式を保有する会社もあります。

3.持株会社で事業承継税制を活用するメリットと要件

事業承継税制は、中小企業の技術と雇用を守るために、事業を円滑に承継させる趣旨の制度です。

しかし持株会社では、承継したい技術や雇用がほとんどないケースが多く、事業承継税制の趣旨から外れます。このため多くの持株会社では事業承継税制が適用できません。

しかし、要件をみたせば適用の可能性があるのです。持株会社で事業承継税制を活用すると、通常の事業会社とは異なるメリットがあります。ここでは持株会社で事業承継税制を活用するメリット、および事業承継税制を適用できる要件をご紹介します。

活用するメリット

まずは銀行さんが提案する持株会社を活用した事業承継の例示を記載します。

・事業会社A社は持株会社化をするため、C氏は持株会社B社を設立・出資。
・B社はA社の株式を購入し、子会社化。
・A社の代表権はC氏にあり、C氏がD氏へ事業承継を考えている。
・事業承継は本来A社の株式を譲渡するものだが、持株会社化したことで、A社株式はB社が保有している。
このためC氏は持株会社B社の株式をD氏へ譲渡する。
・B社はA社株式を保有してA社を支配しているため、B社株を保有すれば実質的にA社の事業も承継したことになる。

持株会社で事業承継税制を活用するメリットは以下のとおりです。

・事業承継税制を活用にするには現経営者が代表と後継者に譲らなければなりません。
しかし、実際の後継者の年齢も若く、経験も少ないためA社の代表をまだ辞任できない場合、会社が複数あるなどさまざまな事情で、
すべてをすぐに譲れないケースもあります。
持株会社の株式を譲渡すればD氏はB社のオーナーとなり、かつA社の経営権も握れる一方で、C氏はA社の代表権を保有したままでいられます。
・後継者の事業会社での経験不足、事業会社事業会社が複数ある場合等には、
それぞれ事業承継税制を適用するのは手続き上も煩雑です。持株会社だと、持株会社の株式のみで済みます。

活用できる要件

事業承継税制を適用して、生前に後継者に株式の贈与をおこないたい場合には、主に以下の6つの要件が必要です。

1.上場会社でないこと
2.中小企業者であること
3.資産管理会社でないこと
4.後継者が株の贈与時に、会社の代表権を有していること
5.役員の就任から3年以上を経過していること
6.贈与者は、会社の代表権を有していたこと。贈与時には代表権を有していないこと。

前述したように持株会社は事業承継税制の趣旨と外れることが往々にしてあり、上記の要件を満たさずに適用できないケースが多くあります。

特に持株会社が特に問題になるのは、3の「資産管理会社でないこと」です。「資産管理会社」には、「資産保有型会社」と「資産運用型会社」があります。資産保有型とは、現金・預金、有価証券、投資用不動産などの事業に直接関係しない資産(特定の資産)が総資産の総額の70%以上の会社をいいます。一方で資産運用型とは、これらの特定の資産からの運用収入が総収入金額の75%以上の会社です。

このような状況の会社は、本業の事業をおこなっていないとみなされます。この要件に当てはまらず、適用除外になることが持株会社では多くあります。

事業会社自体が事業承継税制の適用を受けることができる会社であれば、その事業会社の株式を特定資産に該当しないため問題はありませんが、そうでない場合には注意が必要です。

ただし、「資産管理会社」であっても「事業実態」があれば適用が可能です。

事業実態の要件は、以下のとおり3つです。

1.常時使用する従業員数が5 名以上いること。ただし後継者と生計を一にする親族は除きます。
2.事務所、店舗等を所有または賃貸していること
2.株式贈与の日までに、3 年以上事業をおこなっていること

このように、従業員を雇用して一定規模の事業を実際におこなっていれば資産管理会社でも事業承継税制の適用が可能です。

「4.会社の代表権を有していること」「5.役員の就任から3年以上を経過していること」という要件も必要です。まずは現経営者が持株会社の代表となった上で、後継者が役員に就任し3年以上経過しないといけません。持株会社を設立した後に事業承継税制を活用したい場合は、計画的におこなう必要があります。

4.まとめ

以上、持株会社で事業承継税制を活用する方法をご説明しました。これにより事業会社の代表権を後継者に譲る前でも、持株会社の株式を譲渡することで実質的に事業会社の経営権を譲渡ができます。

ただし本来の制度趣旨とは外れることもあるため、要件をしっかりと確認しましょう。特に持株会社について、事業実態があるかどうかという点が重要です。また、役員の就任から3年以上を経過しないと事業承継税制が適用できないため、事業承継対策として持株会社化する際には事前によく検討しましょう。

持株会社化の方法はこのブログ記事に記載した以外にもさまざまな方法があり、手続きも煩雑です。もし要件を外れたり、手続きを失念したりすると即納税になるため、注意が必要です。まずは専門家への相談をおすすめします。

持株会社化、事業承継税制を始め、税務や会計でお困りの際は、丸山会計事務所までお気軽にご相談ください。

この記事の監修

丸山会計事務所 税理士 代表 丸山和秀

税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀

税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。

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