「うちの決算書、本当はもっと使えませんか?」──損益計算書でできる利益感度分析の話
投稿日:2026年05月16日

朝4時起きの名古屋の税理士の丸山です。
先日、訪問先の会議室で、社長が決算書をテーブルの上に広げながら、こうおっしゃいました。
「丸山さん、この紙、毎年もらってるんだけどね。──正直、税務署に出すための紙、くらいにしか思ってなかったんですよ」
そう言って、少し申し訳なさそうに笑われました。
「これ、本当はもっと使えるんでしょ?」
私はちょっと前のめりになって、こうお答えしました。
「思いっきり使えます。──たった5つの数字に並べ替えれば、社長の打ち手の優先順位まで見えてきます」
その日、ホワイトボードに書きながらお話ししたことを、今日はあらためて整理してお伝えします。
損益計算書から見える、「利益感度分析」という景色の話です。
損益計算書を、5つの数字に並べ替えてみる
普通の損益計算書(P/L)は、上から「売上高、売上原価、販管費、営業利益……」と縦に並んでいます。
これを、MQ会計の発想で並べ替えてみます。
やることはたったひとつ。売上原価と販管費の中身を、「売上に連動して動く部分」と「動かない部分」に分けるだけです。
材料費、外注費、仕入。──このあたりは「売れた分だけ出ていく」費用なので、変動費VQに入れます。
人件費、家賃、減価償却費、リース料。──このあたりは「売上が増減しても、毎月そこにある」費用なので、固定費Fに入れます。
並べ替えると、こうなります。
PQ(売上)− VQ(変動費)= MQ(粗利)
MQ − F(固定費)= G(利益)
たった5つの数字。
これだけで、会社全体の構造が一望できる景色になるのです。
「1%動かすと、どれが一番効くか」を出してみる
ここからが面白いところです。
P・V・Q・F、この4つの要素のうち、それぞれを「1%だけ」動かしたとき、利益Gがどれだけ変わるか。
──それを並べてみます。
仮に、こんな会社があったとします。
年間売上 PQ = 1億円
変動費 VQ = 6,000万円
粗利 MQ = 4,000万円
固定費 F = 3,500万円
利益 G = 500万円
ごくふつうの中小企業の規模感です。
さて、ここで4つの「1%」を、ひとつずつ動かしてみます。
価格Pを1%上げる
→ 売上が100万円増える。原価は変わらないので、まるごと利益に乗る。
G +100万円(+20%)
変動費Vを1%下げる
→ 変動費が60万円減る。これも利益に残る。
G +60万円(+12%)
数量Qを1%増やす
→ 粗利MQが1%増えて40万円。
G +40万円(+8%)
固定費Fを1%減らす
→ 35万円が利益に残る。
G +35万円(+7%)
驚くのは、同じ「1%」なのに、利益への効き方がここまで違うことです。
この会社では P > V > Q > F の順に、利益感度が高い。
値上げ1%は、数量を2.5%伸ばすことや、固定費を3%カットすることに、ほぼ相当するのです。
これが、よく言われる「価格の力」というやつなのだと、私は思っています。
次の一手の「優先順位」が、決算書から読める
もちろん、現実には「Pが一番効く」と知っても、市場で簡単に値上げできない業種もあります。
そこは社長の判断のしどころで、Pが厳しければVへ、それも難しければQへ、と打ち手は変わっていきます。
それでも、私は強くお伝えしたいのです。
自分の会社の「感度ランキング」を知っているか、知らないか。
これだけで、社長の意思決定の精度がまるで違ってくるのです。
「とりあえず売上を上げよう」と動くのと、
「うちはPが一番効くから、まずは付加価値を高めて値段を見直す道を探そう」と動くのとでは、
半年後、1年後の景色が、まるで別物になっています。
決算書を、「報告書」から「打ち手の地図」に
その日、社長は決算書をしばらく眺めて、ぽつりとこう言われました。
「丸山さん、この紙、私はこれまで……ずっと寝かせていたんですね」
私はその言葉に、深くうなずいていました。
損益計算書は、税務署のためにある紙ではありません。
社長が次の一手を選ぶための「地図」になり得る紙なのだと、私は感じています。
次回は、この感度分析を「実際のご自分の数字でやってみる手順」を、もう少し具体的にお伝えしたいと思っています。
お手元の決算書を1枚、すぐ取り出せるところに置いておいていただけると、楽しめると思います。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


