外注の営業マン(外交員等)への報酬、税務処理どうする?源泉徴収のポイントを徹底解説!
投稿日:2025年05月26日
「うちの会社のあの人、税金どう処理すればいいの?」そんな疑問にお答えします

「ウチには正社員の営業担当者だけじゃなくて、業務委託で外回りの営業をしてくれている人もいるんだよね…」
「歩合で報酬を払っているんだけど、これって普通の給料と同じ扱い?それとも違う税金がかかるの?」
「毎月支払うたびに、何か税金を差し引かないといけないの?」
もしあなたが中小企業の経営者さんや経理担当者さんなら、こういった疑問や不安を感じたことがあるかもしれません。
特に、自社の製品やサービスを外回りで販売・勧誘してもらうために、特定の個人と業務委託契約を結び、その成果に応じて報酬を支払っている場合、「これって税務上はどう処理すればいいんだろう?」と頭を悩ませることも少なくないはずです。
給与であれば年末調整という仕組みがありますが、業務委託で働く方への報酬の場合、源泉徴収のルールが少し違ってくるケースがあります。
その代表的なものが、「外交員等」と呼ばれる方々への報酬です。
この記事では、国税庁の情報をはじめとする信頼できる情報を基に、「外交員等」への報酬にかかる源泉所得税の基本的な考え方から、具体的な計算方法、納め方、そして報酬を受け取る側の確定申告まで、中小企業の経営者さんや経理担当者さんが「これだけは知っておきたい!」というポイントを、専門用語を使わずに分かりやすく解説します。
この記事を読めば、あなたの会社の外交員等への報酬支払いの税務処理がクリアになり、安心して業務を進めることができるようになるでしょう。ぜひ最後までお読みください。
「外交員等」ってどんな人?あなたの会社のあの人は該当する?

まず最初に、「外交員等」とは税務上、どのような人を指すのでしょうか?文字だけ見ると、本当に「外交」の仕事をする人?
と思ってしまうかもしれませんが、税法で言う「外交員等」は、もう少し広い意味で使われます。
国税庁のタックスアンサー(税に関するQ&A)によると、源泉徴収が必要となる「外交員等」とは、 具体的には「外交員、集金人または電力量計の検針人」を指します。
でも、これだけだとちょっと分かりにくいですよね。
特に「外交員」という言葉。
税法上、この「外交員」には明確な定義があるわけではないのですが、過去の裁判や税務に関する様々な資料を見ると、一般的には、次のような働き方をしている人がこれに当てはまると考えられています。
・事業主(あなたの会社など)からお仕事の依頼を受けている
・継続的に(一時的ではなく、繰り返し)事業主の商品やサービスを買ってもらうための勧誘をしている
・お客さんが商品やサービスを買うときの契約が、お客さんと事業主の間でスムーズに進むよう、間に入って助ける役割を、自分の責任と計算で担っている
・報酬が、売れた商品やサービスの金額(販売高)に応じて決まっている
これらの要件を満たす人、と考えると、イメージが湧いてきませんか?
例えば、
・不動産会社のセールスマンで、契約を取るたびに給与とは別に歩合給をもらっている人
・保険会社のセールスマンで、保険契約の件数に応じて歩合給が支払われる人
・特定のメーカーから商品を仕入れて、自分で外回りをしながら個人のお客さんに販売している個人事業主(いわゆる代理店のような働き方)
・会社の商品を個人事業主として委託され、顧客を訪問して販売契約を結んでいる人
といったケースが代表的です。
つまり、特定の企業から継続的に委託を受けて、外回りで営業活動を行い、その成果(販売実績など)に応じて変動する報酬(歩合や成果報酬)を受け取っているような、個人事業主的な働き方をしている人が、「外交員等」に該当する可能性が高いと言えます。
あなたの会社で業務委託契約を結び、外回りで成果報酬を支払っている人がいる場合、「この人は外交員等にあたるのかな?」と考えてみる必要があるでしょう。
判断に迷う場合は、税理士さんなどの専門家に相談することをおすすめします。
報酬を「給与」と「外交員報酬」に分けるってホント?その違いは何?

外交員等に報酬を支払う際に、もう一つ重要なポイントがあります。
それは、支払う金額を「給与部分」と「外交員報酬」に分けて考える必要がある、ということです。
「え、同じ人への支払いなのに、なんで分けるの?」と思うかもしれませんね。
これは、税法で定められたルールなんです。
そして、この「給与部分」と「外交員報酬」とでは、税金(源泉所得税)の計算方法が異なってきます。
どのように区分するのでしょうか?これも税法上のルールがあります。
- お仕事に必要な旅費とそれ以外の部分が、ハッキリと分けられている場合:
・お仕事に必要な旅費(通常、必要だと認められる金額)は、税金がかからない(非課税)部分です。
・旅費以外の部分は、「給与」として扱います。
- 上記のケースに当てはまらないけれど、固定給とそれ以外の変動する部分(歩合など)がハッキリと分けられている場合:
・毎月決まって支払われる「固定給」は、「給与」として扱います。
・売上や成果に応じて変動する「それ以外の部分(歩合や成果報酬)」は、「外交員報酬」として扱います。
- 上記1、2のどちらにもハッキリと当てはまらない場合:
・お仕事にかかる旅費などの費用を会社がどれくらい負担しているか、他にもどんな事情があるかなどを総合的に考えて、「これは給与だね」と認められるものは給与として、それ以外の部分は「外交員報酬」として区分します。
実務上は、2番目のケース、つまり毎月決まった額の「固定給」と、売上に応じて変動する「歩合給」や「成果報酬」が明確に分けられている場合が多いかと思います。
この場合、「固定給」は「給与」として、そして「変動給部分(歩合・成果報酬)」は「外交員報酬」として取り扱うことになります。
なぜこのように分ける必要があるのかというと、それぞれの金額に対して、後述する源泉徴収の計算方法が違うからです。適切に区分することが、正しい税務処理の第一歩となります。
「外交員報酬」にかかる税金の種類を知っておこう!

外交員等に支払う「外交員報酬」は、「給与」とは税務上の扱いがいくつか異なります。
特に知っておくべき税金の種類と取扱いについて見ていきましょう。
源泉所得税(と復興特別所得税):
これは、外交員報酬を支払うあなたが、支払う金額からあらかじめ差し引いて国に納める税金です。
後ほど詳しく計算方法をご説明しますが、外交員報酬を支払う際には、この源泉徴収を行う義務が発生します。
事業所得:
外交員報酬は、所得税法上、「事業所得」という種類の所得になります。「給与所得」や「雑所得」とは区別されます。報酬を受け取った個人は、この「事業所得」として所得税を計算することになります。
事業所得は、売上からお仕事にかかった費用(必要経費)を差し引いて計算できるのが特徴です。
消費税:
ここが給与と大きく違う点です!外交員報酬は、消費税の「課税対象」となります。つまり、消費税がかかる取引として扱われます。もし外交員等が発行する請求書に消費税額がハッキリと分けられて記載されている場合、その消費税額を除いた報酬・料金の金額だけを源泉徴収の対象とすることも認められています。
ただし、消費税を含んだ金額全体を源泉徴収の対象としても間違いではありません。
社会保険料:
外交員報酬は、社会保険(健康保険や厚生年金など)の計算には含まれません。社会保険は、一般的に「給与」に対して計算されるためです。
このように、一口に「報酬」といっても、「給与」として支払うのか、「外交員報酬」として支払うのかによって、かかる税金の種類や計算方法、社会保険の扱いなどが変わってきます。
この違いを理解しておくことが大切です。
これが重要!外交員報酬の源泉徴収税額の計算方法

それでは、具体的に外交員報酬から差し引くべき源泉所得税(と復興特別所得税)の金額は、どのように計算するのでしょうか?
計算式は以下の通りです。
源泉徴収税額 = (報酬・料金の額 - 1ヶ月あたり12万円) × 10.21%
ここで出てくる「1ヶ月あたり12万円」というのは、外交員等がお仕事を進める上でかかるであろう必要経費の概算額として、あらかじめ報酬から差し引くことが認められている金額です。
ただし、もし同じ月に、その外交員等に「給与」も支払っている場合は、この「1ヶ月あたり12万円」の控除額から、その月に支払う給与の金額を差し引いた残りの金額を控除します。
つまり、
・同じ月に給与の支払いがない場合: (報酬・料金の額 - 12万円) × 10.21%
・同じ月に給与の支払いもある場合:
・給与の額が12万円より少ない場合: {報酬・料金の額 - (12万円 - その月の給与額)} × 10.21%
・給与の額が12万円以上の場合: {報酬・料金の額 - (12万円 - 12万円)} × 10.21% = 報酬・料金の額 × 10.21% (控除額はゼロになります)
となります。
計算して出た税額に1円未満の端数が出た場合は、その端数は切り捨てて計算します。
具体的な例を見てみましょう。
・例1:報酬・料金を20万円支払う場合(同月中に給与の支払いなし)
(200,000円 - 120,000円) × 10.21%
= 80,000円 × 10.21%
= 8,168円
・例2:報酬・料金20万円と給与5万円を支払う場合(同月中に給与の支払いあり)
{200,000円 - (120,000円 - 50,000円)} × 10.21%
= {200,000円 - 70,000円} × 10.21%
= 130,000円 × 10.21%
= 13,273円
・例3:報酬・料金20万円と給与15万円を支払う場合(同月中に給与の支払いあり)
この場合、給与額が12万円を超えているため、12万円の控除はゼロになります。
{200,000円 - (120,000円 - 120,000円)} × 10.21%
= {200,000円 - 0円} × 10.21%
= 200,000円 × 10.21%
= 20,420円
報酬・料金の額が100万円を超える場合でも、税率は10.21%で変わりません。
この計算方法を使って、毎月の外交員報酬から正確な源泉徴収税額を算出し、差し引くようにしましょう。
源泉徴収した税金はいつ、どうやって納めるの?

外交員報酬から源泉徴収した所得税(と復興特別所得税)は、いつまでに、そしてどのように国に納めれば良いのでしょうか?
ここにも、給与に関する源泉徴収とは違う、重要なポイントがあります。
納付時期:
源泉徴収した所得税および復興特別所得税は、報酬を支払った月の翌月の10日までに納めなければなりません。
ここでの注意点は、「源泉所得税の納期の特例」という制度が適用されないということです。
給与を支払っている会社で、給与を受け取っている人が10人未満の場合、「納期の特例」の適用を受ければ、源泉徴収した税金を半年分まとめて納めることができます。
しかし、外交員報酬にかかる源泉所得税は、会社の従業員数が10人未満であっても、毎月、支払った月の翌月10日までに納付する必要があるのです。
うっかり納付を忘れてしまわないように注意が必要です。
納付方法:
税金を納める際には、「源泉所得税徴収高計算書(納付書)」を使用します。
ここで使う納付書は、給与の源泉所得税を納めるときに使う「給与所得等の所得税徴収高計算書」とは種類が異なりますので注意してください。「報酬・料金等」という種類の納付書を使用します。
税務署に行けばもらえますし、国税庁のウェブサイトからダウンロードすることもできます。
納付方法は、以下のいずれかを選べます。
・e-Taxを利用する: インターネット経由で納付できます。自宅や会社のパソコンから手軽に手続きができます。
・金融機関や税務署の窓口で納める: 用意した納付書と現金を持って、お近くの金融機関(銀行や信用金庫など)の窓口、または所轄の税務署の窓口で納付します。
毎月忘れずに、正しい納付書を使って納めるようにしましょう。
外交員報酬を受け取る側(個人)は確定申告が必要?経費についても解説

ここまで、報酬を支払う会社側の源泉徴収について見てきました。では、外交員報酬を受け取った個人(外交員等)は、税務上どうなるのでしょうか?
もし、あなたが個人として企業から給与と外交員報酬の両方を受け取っている場合、会社で行われる年末調整だけでは税金の計算が完了しません。
なぜなら、年末調整は「給与所得」に対する税金を精算するためのものだからです。
受け取った報酬のうち、固定給として受け取った金額は「給与所得」に、そして外交員報酬として受け取った金額は「事業所得」になります。
給与所得と事業所得の両方がある方は、ご自身で確定申告をする必要があります。
確定申告は、1月1日から12月31日までの1年間の所得と税金を計算し、翌年の2月16日から3月15日までの間に税務署に行う手続きです。
確定申告の際には、「確定申告書B」という用紙を使います。この書類で、1年間の収入金額、そこから計算される所得金額、所得から差し引かれる金額(社会保険料控除や生命保険料控除などの所得控除)、そして最終的な税金の計算などを記入します。
特に重要なのが、「事業所得」の計算です。事業所得は、1年間の外交員報酬の総収入金額から、お仕事にかかった必要経費を差し引いて計算します。
事業所得 = 総収入金額(外交員報酬の年間合計額) - 必要経費
つまり、お仕事を進める上で使った費用をしっかりと記録しておき、確定申告の際に「必要経費」として計上することが、税金を計算する上でとても大切になります。
どんな費用が必要経費として認められる可能性があるのでしょうか?以下に代表的な例を挙げます。
・飲食代: 顧客との打ち合わせや商談のために使った飲食代(ただし、プライベートな飲食と区別が必要です)。
・交通費: 顧客を訪問するための電車賃、バス代、ガソリン代、有料道路代など。
・通信費: 業務で使用するスマートフォンやインターネットの通信料(業務で使用した割合に応じて按分が必要な場合もあります)。
・接待交際費: 顧客への贈答品代など、お仕事に関係する接待や贈答にかかった費用。
・地代家賃・光熱費: 自宅の一部を事務所として使っている場合、その使用割合に応じた家賃や電気代、ガス代、水道代など。
・消耗品費: 文房具、プリンターのインク、用紙など、業務で使う少額の物品。
・減価償却費: 10万円以上のパソコンやプリンター、社用車など、業務で使う高額な固定資産は、購入した年に全額経費にするのではなく、決められた年数に分けて少しずつ経費にしていきます。
・研修費・図書費: 業務に必要な知識やスキルを学ぶためのセミナー参加費、書籍代、新聞図書費など。
・被服費: 業務上必要不可欠と認められる特定のスーツや靴など。(ただし、プライベートでも着用できるものは必要経費として認められにくい傾向があります)
・保険料: 事業に関わる損害保険料など。
これらの費用を日頃から領収書やレシートなどと一緒に記録しておき、確定申告の際に漏れなく計上することが、所得税の負担を適切に計算する上で非常に重要になります。
確定申告をすることで、源泉徴収された税金が多すぎた場合は還付を受けられる可能性がありますし、逆に足りなかった場合は追加で納める必要があります。
面倒に感じるかもしれませんが、これも大切な税務上の義務ですので、忘れずに行いましょう。
まとめ:外交員等への報酬、正しい知識で対応しよう!

いかがでしたでしょうか?外交員等に支払われる報酬・料金の税務処理は、給与とは異なる点がいくつかあります。
一番のポイントは、報酬を「給与」と「外交員報酬」に適切に区分し、特に「外交員報酬」に対しては、毎月の支払いの際に、特定の計算式に基づいて源泉所得税を源泉徴収する必要があるという点です。
また、源泉徴収した税金は、従業員数に関わらず、支払った月の翌月10日までに必ず納付しなければなりません。
「納期の特例」が使えない点には特に注意が必要です。
納付の際は、「報酬・料金等」用の納付書を使うことも忘れてはなりません。
そして、報酬を受け取る個人側は、給与と外交員報酬の両方がある場合、年末調整だけでなく、ご自身で確定申告を行う義務があります。
確定申告では、事業所得として報酬を計上し、お仕事にかかった様々な費用を「必要経費」として差し引くことができますので、日頃からしっかりと記録を残しておくことが大切です。
適切な税務処理を行うことは、会社の信頼性を保つためにも、税務調査などで指摘を受けないためにも非常に重要です。
もし、この記事を読んでもまだ判断に迷う場合や、具体的な計算や経費の判断に不安がある場合は、税理士さんなどの税務の専門家に相談することをおすすめします。
この情報が、あなたの会社の外交員等への報酬支払いの税務処理の理解を深め、適切な対応の一助となれば幸いです。

この記事の監修

税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。