フルローンでキャッシュフローを出すには何%の利回りが必要?
投稿日:2026年02月25日
― ローン定数(K%)と実質利回り(FCR)で考える損益分岐 ―

4時起き税理士の丸山です。今回は、不動産投資でよくあるご相談です。
「フルローンで買っても、ちゃんとキャッシュフローは出ますか?」
「表面利回りは何%あれば安心ですか?」
結論から言うと、一概に「〇%あればOK」とは言えません。
ポイントは、実質利回り(FCR)がローン定数(K%)を上回っているかどうかです。
この記事では、
・損益分岐の考え方
・具体的な数値目安
・成功例と失敗例の違い
分かりやすい言葉で整理していきます。
1. 損益分岐の基準は「FCR > ローン定数(K%)」
まず用語を整理しましょう
■ FCR(実質利回り・総収益率)
FCRとは、
満室想定家賃から空室損や運営費を引いた「純営業収益(NOI)」を、総投資額で割ったものです。
つまり、
物件そのものの本当の収益力を表します。
■ ローン定数(K%)
ローン定数とは、
年間の元利返済額 ÷ 借入総額です。
つまり、
借入に対して毎年どれだけ返済する必要があるかの割合です。
■ キャッシュフローが出る条件
計算式はとてもシンプルです。
キャッシュフローが出る条件
= FCR(実質利回り)- ローン定数(K%) > 0
これがプラスであれば、
理論上、年間キャッシュフローは出ます。
2. ローン定数(K%)の目安はいくら?
ローン定数は、金利と返済期間で決まります。
(元利均等返済の場合)
代表的な例を見てみましょう。
| 金利 | 期間 | ローン定数(K%) |
| 2.0% | 35年 | 約3.98% |
| 2.3% | 35年 | 約4.16% |
| 1.2% | 20年 | 約5.63% |
■ 35年ローン(2%前後)の場合
ローン定数は約4%。
つまり、
FCRが4%を超えないと理論上キャッシュフローは出ません。
運営費率などを考えると、
表面利回りではおおよそ6〜7%以上は必要になります。
■ 20年ローンの場合
ローン定数は約5.6%。
つまり、
FCRが5.7%以上必要
となります。
短期融資は毎年の返済負担が重くなるため、
より高い利回りが必要になります。
3. 「ギリギリ」では危険?安全圏の考え方
「FCRがK%を0.1%上回っているからOK」
これは非常に危険です。
不動産は、
・空室
・家賃下落
・修繕費
・原状回復費
・突発トラブル
が必ず起こります。
そこで重要なのが、イールドギャップです。
■ イールドギャップとは?
FCR − ローン定数(K%)
の差です。
■ 安全圏の目安
フルローンでキャッシュフローを目的とする場合、
1.2%〜1.5%の差は確保したい
とされています(特に中古物件)。
■ 具体例
ローン定数が4.2%の場合:
4.2% + 1.2〜1.5% = 5.4〜5.7%
つまり、
FCRは5.5%前後は欲しい
ということになります。
4. 表面利回りの目安は?
実務的な目安としてよく言われるのが、
■ 30年ローンなら表面利回り8%以上
1棟目購入の場合、
「30年返済・表面利回り8%」
がひとつの分岐点です。
なぜ8%かというと、
・運営費を引くとFCRは5%台前半
・ローン定数は約4%
・イールドギャップが1%程度確保できる
からです。
5. 返済比率で見る安全性
もう一つの重要指標が返済比率です。
■ 返済比率とは?
年間返済額 ÷ 家賃収入
■ 健全な目安
50%以下が理想
返済比率が60%を超えると、
・少し空室が出る
・修繕が発生する
だけで赤字転落します。
■ シンプルな計算ロジック
返済比率50%を目指すなら、
表面利回り ≒ ローン定数の2倍
が目安になります。
例:
ローン定数4%
→ 表面利回り8%
→ 返済比率約50%
非常にわかりやすい基準です。
6. 実例で見る成功と危険ライン
【成功例】
・表面利回り:12.5%
・金利:1.5%
・期間:25年
・地方RC造
・フルローン
結果:
・年間キャッシュフロー 約330万円
・返済比率 約40%
余裕のある経営状態です。
【ギリギリ例】
・表面利回り:7.0%
・実質:5.79%
・FCR:4.2%
・金利:2.3%
・期間:35年
・ローン定数:4.16%
イールドギャップは、
4.20 − 4.16 = 0.04%
ほぼゼロです。
確かにキャッシュフローは出ていますが、
・家賃が少し下がる
・修繕が出る
これだけで赤字転落です。
理論上プラスと、経営として安全は全く別物です。
7. 結論:必要利回りの目安
■ 30〜35年融資の場合
・表面利回り:8%以上
■ 20年融資の場合
・ローン定数が約5.6%
・表面利回り:10〜12%以上必要なケースも
■ 本当に見るべきポイント
大事なのは表面利回りではありません。
FCRがローン定数を1.5%程度上回っているか
これが安全経営の分岐点です。
まとめ
フルローン投資で年間収支をプラスにする条件は、
FCR − ローン定数(K%) > 0
しかし実務では、
・イールドギャップ1.2〜1.5%確保
・返済比率50%以下
・表面利回り8%以上(30年融資目安)
このあたりが現実的な判断基準になります。
「借りられるから買う」ではなく、
「返しても残るか」で判断すること。
ここが、投資と経営の分かれ道です。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


