ブログ

暗号資産(仮想通貨)の会計処理と確定申告 | その他雑所得に該当

投稿日:2022年12月07日

暗号資産(仮想通貨)は近年取引量も多くなり、大きく利益を出す方も増えてきました。所得が出れば所得税がかかり、原則として確定申告が必要です。暗号資産の所得区分は原則として雑所得になり、他の所得と損益通算ができず、他の所得と合計した金額に課税される「総合課税」の対象となります。

このブログでは暗号資産について確定申告をする際の注意点と、会計処理方法を紹介します。

1暗号資産(仮想通貨)の確定申告

暗号資産を売却した結果、所得が出たら、原則として確定申告が必要です。
確定申告をどのようにおこなうのか、確定申告は必ず必要なのかについて説明します。

暗号資産に係る所得区分

暗号資産の売却に係る所得区分は「雑所得」です。所得には10種類の区分があり、所得税の計算方法は所得区分ごとに異なります。その中でも暗号資産に係る所得区分は雑所得に区分されます。

雑所得には、公的年金に係る雑所得、業務による雑所得、その他雑所得、があります。
令和4年10月に所得税基本通達が一部改正され、35-1にその他雑所得の例示として「(12)譲渡所得の基因とならない資産の譲渡から生ずる所得」が追加されました。そして「譲渡所得の基因とならない資産」には、例えば暗号資産などが該当する、とされ、暗号資産の譲渡による所得が雑所得であることが所得税基本通達上でも明示されることになりました。

雑所得は、他の所得区分にはあるような税務上メリットがありません。具体的には以下のような点が特徴です。

・他の所得と損益通算ができない

もし損失が出たとしても、他の所得から差し引くことができません。

・総合課税の対象となる

他の所得と合計した金額に課税されます。累進課税が適用され、所得が高いほど税率も高くなります。

・損失が生じても繰越できない

損失が出ても、翌年以降の他の所得と相殺できません。(雑所得内では相殺が可能です)

確定申告が必要ではない場合

暗号資産の売却で所得が出たら原則として確定申告が必要です。年末調整では対応できません。
ただし、確定申告が必要ではない場合があります。具体的には以下のようなケースが考えられます。

・一カ所のみで給与所得のある方で、その会社で年末調整が完了しており、暗号資産に係る所得を含め、給与以外の所得が20万円以下の場合

暗号資産に係る所得が20万円以下、ではなく、それも含めて給与所得以外の所得の合計が20万円以下であれば、所得税の確定申告は不要です。
ただし、給与所得の方でも確定申告が必要な場合や、医療費控除などで還付を受けるために確定申告をした場合は、金額に関係なく暗号資産に係る所得についても合わせて申告が必要です。

・所得が基礎控除以下の方
暗号資産に係る所得を含めて、所得が基礎控除の金額以下であれば税額は発生しませんので申告は不要です。
所得は収入から経費を差し引いた金額です。暗号資産の売却の場合は、売却金額から取得価額と、その他経費があればそれを差し引いた金額になります。

2暗号資産(仮想通貨)の会計処理

暗号資産の所得はどのように計算するのでしょうか。売却金額から取得価額を差し引いた金額が所得になりますが、取得価額の計算方法にはいくつか種類があります。
取得価額の計算方法と、利益が確定するタイミングについて説明します。

取得価額の計算方法

暗号資産の取得価額は、取得の方法により異なります。主なものは以下のとおりです。

・対価を支払って購入した場合…対価の額
・贈与又は遺贈により取得した場合…贈与また遺贈時の価額の価額(時価)(不動産などとは全く違い逆となります。)
・その他暗号資産同士を交換した場合、マイニングなどにより取得した場合など…取得時点の時価

購入のために要した費用があれば、その金額も含みます。
売却した場合、売却部分の取得原価は「総平均法」または「移動平均法」のいずれかで計算します。
例えば一年間のビットコインの取引が以下であったとします。

・3月に1BTC、500万円で購入
・4月に1BTC、400万円で購入
・5月に1BTC、520万円で売却
・6月に1BTC、510万円で購入

総平均法は年間の取得価額の総額を、年間の購入数量で除した金額を売却時の単価とする方法です。この例だと(500万円+400万円+510万円)÷3BTC=470万円が取得原価になります。520万円-470万円=50万円が利益です。
一方で移動平均法は、暗号資産を所得する都度、平均をして単価を出す方法です。この例だと(500万円+400万円) ÷2BTC=450万円が売却時の取得原価になり、520万円-450万円=70万円が利益です。

どの評価方法を採用するかについて、税務署に届出書を提出する必要がありますが、提出がなければ個人の場合の法定評価方法は「総平均法」になります。
総平均法は計算がしやすいため、こちらを採用するケースが多いでしょう。しかし、一年間の最後の取引が終わるまで所得の予測がつかないというデメリットがあります。

実務上は、取引所から送られてくる年間取引報告書に所得を計算するための情報が記載されているため、参照しながら計算をすることになるでしょう。
もし過去の取引であって年間取引報告書が交付されておらず、取得価額や売却価額がわからなくなってしまった場合には、銀行口座の入出金記録を確認したり、取引日の取引相場を確認したりして計算しましょう。
売却した暗号資産の取得価額は、売却価額の5%相当額とすることも認められています。

所得の確定タイミング

原則として売却等で引渡の契約をした日(約定日)となります。
単に暗号資産を売却した場合だけでなく、暗号資産で商品を購入した場合や、暗号資産同士を交換した場合にも、暗号資産を譲渡したことになり、所得が確定しますので注意が必要です。

所得が確定していなければ申告は不要

個人であれば売却等がなければ、もし含み益が出ていても所得は確定せず、申告は必要ありません。
ただし、もし法人で暗号資産を保有している場合は、決算期末に時価評価が必要です。決算期末に時価との差額を益金または損金として計上する必要があります。

3まとめ

以上、暗号資産について確定申告をする際の注意点と、会計処理方法を紹介しました。
暗号資産に係る所得は雑所得であり、税務上の優遇措置が他の所得に比べてありません。

所得が高い方は税率も高くなります。もし申告をしないと、後日多額の税負担が生じる可能性もありますので、正確に所得を計算して申告しましょう。
過去に申告が漏れている場合は、延滞税がかかります。期限後であっても申告が可能ですので、早めに申告することをおすすめします。

暗号資産(仮想通貨)の確定申告の方法など、税務や会計でお困りの際は、丸山会計事務所までお気軽にご相談ください。

この記事の監修

丸山会計事務所 税理士 代表 丸山和秀

税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀

税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。

お気軽にお問い合わせください
0120-025-388
お問い合わせ
TOP